2020 Fiscal Year Research-status Report
固有知識と汎用的解法の融合による高性能スケジューリング法の開発
Project/Area Number |
19K04105
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
江口 透 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (80253566)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生産スケジューリング / ニューラルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多品種少量生産を行う生産システムを対象とし,固有知識と汎用的解法を融合した高性能なスケジューリング法の開発を行うことを目的としている.生産スケジューリング問題の多くはNP困難なクラスに属し,高性能なスケジュールを短時間で作成することは難しい.そこで,生産現場での様々な意思決定場面を想定し,ニューラルネットワークを用いてスケジューリングのための有効な知識の自動学習を行う.さらに,これと汎用的な探索法を組み合わせることによって高性能なスケジューリング法を開発し,生産性の向上を目指す. 本年度も引き続き,多品種少量生産の典型的な生産形態であるジョブショップ型の生産システムにおいて,高性能な優先規則を作成する方法を検討した.昨年度は,スケジューリング問題に対して有効な優先規則をニューラルネットワークによって学習できることを確認したが,その学習法はシミュレーティッドアニーリング法を用いた教師なし学習法であり,学習の効率は良くなかった.本年度は,学習用の問題の準最適解を求め,その解におけるスケジュール事例からニューラルネットワークを学習するための教師事例を収集して学習する方法を検討した.学習用問題の準最適解は遺伝的アルゴリズムを用いて求めた.その結果,学習事例数を十分に増やすことで教師あり学習が有効であることが分かった.また,ニューラルネットワークの規模はある程度大きい必要があるが,それ以上増やしても性能向上の効果は小さいことも確認した.これによって,ある程度の規模のニューラルネットワークを用いることで,従来よりもより高性能な優先規則を確実に学習することが出来ると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,生産スケジューリングのための優先規則をニューラルネットワークによって構成する方法を検討し,それを汎用的な探索法である遺伝的アルゴリズムに組み込んで高性能なスケジューリングを行うことを目的としている.本年度までに,優先規則をニューラルネットワークによって学習する方法について検討し,準最適解から得られる教師事例を利用して学習する方法が有効であることを確認した.優先規則を用いたスケジューリング法は多項式時間アルゴリズムであり,NP困難であるスケジューリング問題に対する最適解を生成する優先規則は存在しないと予想されるが,準最適解から得られた教師事例に基づく学習法も条件によっては有効であることを実験的に確認できたことは重要な成果であり,研究はおおむね順調に進展していると評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,高性能なスケジュール探索法の開発を続け,また現実の生産スケジューリング環境を想定した問題にも取り組んで行く.本年度研究を進める中で,ニューラルネットワークの規模が大きくなると,遺伝的アルゴリズムに組み込んで探索する際に計算負荷が大きくなり,有効性が落ちる場合があることが分かった.そのため,計算負荷を下げる方法を検討する必要がある.また,実用上の計算時間の観点からは,優先規則を少ない回数だけ適用して高速に高性能なスケジュールを得る方法も有効であることから,そのようなスケジューリング法をニューラルネットワークで実現する方法も検討する.さらに,作業者を考慮したより現実的な問題への適用についても研究を進める.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で学会講演会等がオンライン開催となったため,次年度使用額が生じた.令和3年度使用額として請求した助成金と合わせ,主に旅費,学会参加費,印刷費として使用する予定である.
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