2020 Fiscal Year Research-status Report
テーブルの浮上支持と精密位置決めをスクイーズ効果で可能にする微動機構の開発
Project/Area Number |
19K04106
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
田丸 雄摩 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (30284590)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スクイーズ効果 / 位置決め / 微動 / 非接触支持 / ピエゾ素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
スクイーズ効果を良好に生成するためには加振面と被加振面の平行度が重要だが,前年度は試験装置の改善と工夫によって両面間の角度調整を可能にした.それにより位置決めテーブルの浮上変位が大きくなり平行度がテーブルの支持性能に関わることを確認できた.本研究の目標の一つである十分な支持性能が得られたので今年度はテーブルが非接触支持された状態での揺動を調べることを中心に行った.揺動は高精度を要求される位置決めにとって不利であり支持された状態でのテーブル挙動を観察,評価することは重要である. テーブル中央に振幅を計測するためのターゲットを設置し,静電容量型変位計で鉛直方向と計測位置高さの異なる水平方向2か所を計測した.逆ハの字形をしたテーブル側部の傾斜角は8度,10度,12度の3タイプを用意して各々の特性を観察,評価した.試験条件は加振周波数を2kHzに設定し,加振振幅を4~20μmで2μmずつ変化させた.その結果,鉛直揺動については予測通り加振に同調した2kHz成分が卓越することを確認でき,その大きさは加振振幅に関わらずほぼ一定であった.水平揺動については加振周波数の倍4kHzで卓越していることが確認され,加振振幅の増加に応じて大きくなることが分かった.水平方向の計測位置高さによる振幅の違いや鉛直方向にも4kHz成分が表れることから揺動の方向や触れ回りを定性的に推定できた.また,テーブル側部の角度が大きくなるほど水平揺動が小さくなる傾向がみられることから角度の大小と揺動が関わると推察できる.つまり,角度が支持剛性に影響することが示唆される.今年度の研究成果によりテーブルの揺動特性を評価するに至った.これにより高精度位置決めにアプローチするための課題が見いだされた.今後揺動を抑制するための試験装置の改良や試験条件設定工夫のために活用できる成果が得られたと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は本課題の重要な役割である空気静圧力の良好な生成を可能にするため高周波振動を与える加振面とそれにより発生する静圧力を受ける被加振面の平行度を高める機構を構築し,スクイーズ効果による非接触支持で位置決めテーブルの微動が有効に機能することを確認できた.微動の基本性能が整ったことで今年度は主としてテーブルの位置決めとしての特性を試験,評価した.当初の実施計画通り側部の傾斜角度が異なるタイプのテーブルを製作した.スクイーズ効果による支持では高周波振動が空気膜を介してテーブルを励振させる.この励振による揺動は高精度位置決めの妨げになるためその特性を評価することは重要である.当初計画では傾斜角度と微動変位,支持剛性の関わりを調べることを目的としていたが揺動の評価で剛性の見積も可能である.揺動はテーブルの鉛直,水平方向の振幅と周波数解析で評価するが水平方向は高さ位置を変えて測定することで振り子状,シーソー状の揺動形態を定性的に推定した.本試験を通してこれら2つの形態に加えて上下,左右の揺動を推定できた.鉛直方向は予測通り加振周波数と同期したが,水平方向は加振周波数の2倍成分が卓越することが分かった.この周波数成分を見分けることで各形態の揺動特性を評価できたことは新しい成果である.またテーブル側部の傾斜角度と揺動の大小には相関が表れた.すなわち傾斜角度と支持剛性の関わりが示唆されたことになり当初計画で予測した特性が見いだされたといえる.今回の評価で得られた知見は今後計画している揺動抑制のための装置改良や試験手法に活用できる.今回の評価によって傾斜角度を変化させてもテーブルの浮上支持能力を得られることが確かめられたため角度変化に対するテーブル位置決め特性試験を実施する見通しを立てることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究によって側部の傾斜角度が異なるタイプのテーブルを製作し,揺動特性の試験,評価を実施した.また本試験からテーブルの支持剛性を評価する手がかりが得られた.今年度はテーブルのタイプごとに負荷容量や微動特性を主に調べる予定である.負荷容量はスクイーズ効果の性能評価の指標となる.初年度の研究でスクイーズ効果の性能向上には加振面と被加振面の平行度が重要であることを示したが,テーブルのタイプや平行度の調整精度がどのように負荷容量と関わるかについて調べたい.負荷容量は加振振幅やスクイーズ数にも影響すると予測されるのでこれらとの関係も評価する予定である.微動特性についても同様にテーブルのタイプや平行度調整によって微動変位がどのように大小するかを調べたい.試験方法は加振振幅を階段状に変化させるステップ応答を観察する予定である.微動変位は振動子である圧電素子に許容最大電圧を印加する大ステップ微動と変位分解能相当の電圧を印加する小ステップ微動を実施する.2つの加振機構は左右対称に設置されているがそれぞれの平行度調整の差で微動変位が異なる可能性がありその点も調べたい.負荷容量,微動特性とも理論計算による見積が可能である.それぞれ試験で得られた計測値との比較評価を実施したい.さらに昨年度実施したテーブル揺動の評価をもとにこれを抑制できる適切な手法が発想できれば実施を検討したい.なお,当初計画では2次元位置決めへの展開を検討していたが現有装置でのスクイーズ効果の特性評価に相当の期間を要すると推察されることから本補助事業期間での実施は見送る予定である.
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Causes of Carryover |
例年参加している学会がCovid-19の影響で中止およびリモートでの出席となり旅費の支払いがなかった.解析用のデスクトップPCの導入を計画していたが使用するソフトウェアとの動作環境を見極める必要があるため見送った.高速応答に対応可能な静電容量型変位計を購入したが主に前者2件の剰余によって次年度使用が生じた. 今年度はデスクトップPCに加えて実験データの入出力モジュールの導入を計画する.その他ピエゾアクチュエータや平面基板などの消耗品,センサや試験装置を位置合わせするためのメカニカルステージ,試験材料費用を計上する.
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Research Products
(1 results)