2021 Fiscal Year Annual Research Report
精密加工へ用いる時空間波形歪が補償された超短パルスビームアレイの生成法の研究
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19K04112
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
尼子 淳 東洋大学, 理工学部, 教授 (20644628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 秀俊 東洋大学, 理工学部, 教授 (90393793)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超短パルスレーザー / ビームアレイ / 回折光学 / 波形整形 / 色収差補正 / 分散補償 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題の目標は時空間における波形歪がない超短パルスビームアレイ生成光学系の完成にある。この目標は前年度までに達成しており、当初想定した20fsのパルスビームから実用十分な長さを有するパルスビームアレイを供給できる光学系を開発した。当該年度は、開発技術のポテンシャルを見極めるために、20fsより短いパルスビームでも使える光学系の構成を検討した。短いパルスのほうが光学的非線形吸収が顕著に生じるため、精密加工には有利である。 市販されているレーザー装置の仕様も考慮して、パルス幅の条件を10fsとした。光学系を構成する屈折レンズの材料および構成を見直す必要があり、①超低分散ガラスと②組み合わせレンズの可能性を検討した。得られた知見を以下にまとめる。 (1)公開されているガラスデータを用いた数値解析から、超低分散ガラスを用いると、色収差を補正しつつ、パルスビーム径に依存するパルスの伸び(パルスフロント歪)を現状の7割程度まで小さくできることがわかった。アッベ数100前後のガラスを数種入手し、フリンジ分解自己相関法で個々のガラスの位相遅延分散を計測した。分散の測定値は理論値と概ね一致した。 (2)構成を単レンズから組み合わせレンズに換えると、色収差を補正しながら、パルスフロント歪を現状の2割以下に減らせることも数値解析からわかった。組み合わせレンズの実効的アッベ数を調整して、波形歪を除くために必要な分散特性を得る。所要のアッベ数は200以上であり、色収差の補正とパルスフロント歪の補正のバランスに配慮して決める。 上記の検討を通じて、光学系の諸分散を制御することにより、10fsのパルスビームに対しても、波形歪の主要因である色収差とパルスフロント歪を補正できることを示した。開発した光学系を用いると加工スループットが大きく向上するため、超短パルスレーザー精密加工の実用に向けたシナリオが描ける。
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