2021 Fiscal Year Research-status Report
高速重畳スキャンにより空間強度分布を最適成形したレーザによる隅角部焼入れ法の開発
Project/Area Number |
19K04116
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
小川 圭二 龍谷大学, 先端理工学部, 教授 (80405232)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田邉 裕貴 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (00275174)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザ / 空間強度分布 / 焼入れ / 硬度分布 / 高精度 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザ焼入れは、必要箇所のみを硬化させることが可能で、強度向上はもちろん、ひずみレス、クリーンな作業環境も実現できるため、産業界で急速に利用が進んでいる注目技術である。本研究課題では、隅角部(凹凸部)を有する鉄鋼材部品を対象とし、超高速重畳スキャンにより空間強度分布を最適成形したレーザを用いた焼入れ法を開発し、多種多様な隅角部に確実に硬化領域を形成する技術を確立することを最終目的にしている。令和3年度は、引き続き、熱シミュレーションによる硬化領域予測技術の確立とその検証実験に取り組んだ。令和元年度は、トップハット分布矩形レーザを想定また実際に用いて、平面階段形状工作物の隅角部の焼入れについて検討し効果を見出し、令和2年度は高速スキャンレーザでの検討を開始したが、研究を進めるなかで、焼入れ試験においても強度分布測定においても、スキャンレーザ特有の課題が顕在化し、その課題克服に注力することになった。令和3年度は、まずはラインビームを成形して段付き部を模したモデルに対して、熱シミュレーションによる適正条件の検討とその効果の検証試験を中心に研究を進めた。工作物隅角部に応じて、レーザ出力を制御する手法を考案し、熱シミュレーションを用いて適正化を図った。具体的には、凸部に向かって走査する際は、レーザ出力を下げることで過度な温度上昇を抑制し、凹部に向かって走査する際は、レーザ出力を上げることで十分な温度上昇を確保することが有効であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題では、隅角部(凹凸部)を有する鉄鋼材部品を対象とし、超高速重畳スキャンにより空間強度分布を最適成形したレーザを用いた焼入れ法を開発し、多種多様な隅角部に確実に硬化領域を形成する技術を確立することを最終目的にしており、令和3年度は、引き続き、(1)熱シミュレーションによる硬化領域予測技術の確立、(2)超高速重畳スキャンによるレーザ空間強度分布成形技術の確立 に取り組み、(1)については、平板を対象に理論と実験の両面から、レーザ照射条件と工作物条件が創成される硬度分布に及ぼす影響を明らかにした。また、(2)については、スポットレーザを超高速重畳スキャンすることで種々のレーザ空間強度分布に成形できることを確認した。しかしながら、いずれもスキャンレーザ特有の非定常性が要因となって、高精度なレーザ焼入れおよび空間強度分布の測定には至らなかった。一方、新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、予定していた(3)赤外線サーモカメラによるレーザ照射部温度計測および(4)環境負荷の定量評価が十分に実施できなかった。これらの結果、研究期間延長せざるを得ない状況になったため、遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
実施内容の計画変更は行わないが、研究期間については1年延長した。熱シミュレーションによる硬化領域予測技術および超高速重畳スキャンによるレーザ空間強度分布成形技術については、ほぼ計画通り技術確立が進められたため、これらの深耕を実施する。これに加えて、焼入れ品質を保証するためのレーザ照射部温度計測技術、そしてLCA解析による環境負荷の定量評価に取り組み、本研究課題技術を確立する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、予定していた国際会議が中止となり、また打合せのオンライン化が進み、旅費の執行が減少したことが主な原因である。翌年度に状況が改善すれば旅費に充当する、また消耗品等でも使用する計画である。
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