2019 Fiscal Year Research-status Report
複合モデル型プロセス表現を基にした加工事例の共有と利用による切削加工の精度保証
Project/Area Number |
19K04119
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
寺本 孝司 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (40252605)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 精度保証 / 複合モデル型プロセス表現 / エンドミル加工 / 工作物変形 / 工作物剛性変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は加工誤差に関する事例共有により精度保証を行うことを目的としており,H30年度には,加工状況と加工誤差の関連付けの方法について検討した. 具体的には,異なる加工手順で発生する加工誤差の変動について,研究代表者がこれまでに提案している複合モデル型プロセス表現を基にした原因推定が可能であるかどうか検討した.特に,複数の加工誤差要因が関与する加工状況において,実加工計測結果から加工誤差要因を分析する手法について検討を行った.H30年度は,主に力学的側面に注目して,これまでに十分取り組まれてて来なかった,加工中の工作物剛性低下が与える工作物変形および加工誤差への影響について検討した.本研究費で購入した高精度距離センサを用いた機上計測結果をもとに,「加工状況の変化-物理プロセスの状態変化-加工誤差の変動」といった関連の中で事例の蓄積が可能であることが明らかになった.さらに,蓄積した事例について,複合モデル型プロセス表現を基にした,加工誤差要因の推定についても検討し,定性的には誤差要因の推定が可能であることを示すことができた. より精緻な誤差要因推定のために,高精度な加工プロセスモデルが必要であることが明らかになったことから,工作物把持モデルについても検討した.具体的には,工作物把持における把持シーケンスの違いが加工誤差に与える影響について検証した.この検討においても,工作物把持時の変形計測について,有限要素解析を基にした把持変形シミュレーションと実変形結果の比較を行い,加工状況と物理プロセス状態の関係を整理することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度計画していた,1)加工事例記述スキーマの定式化,2)加工プロセスシミュレーション結果と実加工において機上計測される加工誤差情報を連携して管理する加工事例管理システムの試作,について検討した. 加工事例記述スキーマについては,複数の加工事例について研究代表者が提案してきた複合プロセスモデル表現を基にした,属性記述型の加工事例記述方法で加工情報の記述が可能であることが確認できた. 加工事例管理システムについては,形状情報を中心として物理情報および加工に関する属性情報を連携させることで,加工前のシミュレーション結果および加工後の計測結果を加工事例情報として系統的に管理できることが明らかになった. 特に,今年度明らかになった工作物把持シーケンスや,切削加工シーケンスの違いによる加工プロセスの変動と,加工誤差への影響を考慮できる記述とすることで,事例共有における事例の特徴づけの指標が明確になると考えられれる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,大学への立ち入りが制限されていることもあり,実験面での検討ができない状況が続いている.状況が改善するかどうかにより今後の方針も影響を受けるが,現時点では一定程度の実験が可能であるとの前提で研究を推進する予定である.具体的には,加工前の事前予想結果,加工中の物理情報の計測結果,加工誤差の計測結果,について異なる加工状況,異なる工作機械を用いた実験を行い事例の蓄積を進める.さらに,蓄積された加工事例について,加工結果を基にした加工プロセスモデルのチューニングについて検討する.さらに,このチューニング結果の管理についても検討を行い,新規加工におけるテスト加工の効率化と加工予測の信頼性向上に向けた利用について検討する. 大学への立ち入り制限が長期にわたり実験の実施が限定的となった場合には,H30年度に実験した事例を基に検討を進めたのち,実験可能となったときに速やかに最小限の実験を行い手法の妥当性を検証する.
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Causes of Carryover |
加工実験での使用を想定していた工具,工作物の購入,ジグ製作において経費を抑えることができたことと,情報収集のために参加を予定していた国内学会が開催されなくなったことから,当初予定していた旅費・学会参加費の支出が行われなかったことにより次年度使用額が生じた. R2年度には,集中的に実験を行うことが必要となることから,アルバイトの雇用をおよび実験効率化のための機材購入を増加させて使用する予定である.
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