2019 Fiscal Year Research-status Report
形状に沿った方向と積層方向に配向した炭素繊維で強化した光造形法の開発
Project/Area Number |
19K04121
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中本 剛 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (30198262)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光造形 / 炭素繊維 / 繊維強化 / 電界 / 配向 / 紫外線硬化樹脂 |
Outline of Annual Research Achievements |
光造形法ではその素材は紫外線硬化樹脂である.光造形法で得られた部品を実用に供するためには機械的な強度を向上させることが必要である.本研究は積層方向に炭素繊維を配向して強化した部品の製作方法を開発することを目的としている. その方法として本研究では電界を利用した.2枚の銅板を用意して上下に平行に配置する.上側の銅板にスライドガラスを銅箔テープで固定し,その上に液体の紫外線硬化樹脂を薄く塗布して陽極の極板とする.一方,下側の銅板上に,長さ0.7mm程度に切断した炭素繊維の束を置いて陰極とする.これらの極板間に直流電界を印加する.電界強度は190V/mm程度である.この電界の印加によって炭素繊維が電荷を帯びて上側の陽極板上に直立して配向する.この状態で紫外光を照射して上側の陽極板の液体樹脂を硬化させる. 電界を除荷した後,銅箔テープとスライドガラスを取り出して,これを上部の板とする.一方,別のスライドガラスに液体の紫外線硬化樹脂を塗布して,これを下部の板とする.下部の板に塗布する液体樹脂は,上部の板の液体樹脂よりも厚くする.上部の板と下部の板を近づけて,上部板の炭素繊維が下部の板の樹脂まで達するようにする.この状態で下部のスライドガラスを通して紫外線光源を照射して下部スライドガラス上に塗布した樹脂を硬化させる.樹脂が硬化したところで上部の板と下部の板を離すと下部のスライドガラス上に直立した炭素繊維が得られる. 下部のスライドガラス上に新たに液体の紫外線硬化樹脂を塗布する.次にこの樹脂上を紫外線レーザで描画することによって設計した形状に樹脂を硬化させる.その後,余分な未硬化の液体樹脂を除去して,構造物を得る. 令和元年度は,上記の製作工程を提案して実験で示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,造形物の平面内の強化のための長手方向とそれに垂直な積層方向の強化のための両方の配向を有するシート状の炭素繊維を製作することから始める予定であった.しかし積層方向に強化するためには,令和元年度の研究実績の概要で述べたように電界を利用することによって容易に配向することができた.このように当初の計画とは異なる方法であるけれども,当初の目的通りに積層方向に配向した造形物を製作する方法を実証することができた.このため,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次のように研究を推進したい. (1)現時点では積層方向に配向する炭素繊維の本数について検討する.本数が多いほど強化の程度は高くなるけれども製作しにくくなる.製作しやすく強化の程度も高い本数はどの程度か実験によって検証する. (2)積層する一つ一つの面内についてはこれまで張力を利用して炭素繊維を配向していた.炭素繊維による面内方向の強化と積層方向の強化を同時に行って,両方の方向に強化された部品を製作する.面内方向の強化については張力を用いる以外の方法も検討したい. (3)本研究のように積層方向にも面内方向にも強化された部品の報告はない.この部品の機械的な強度の向上について実証したい.
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では積層方向に炭素繊維を配向するために張力を利用する予定であり,そのために新たにXYステージ,θステージ,ステッピングモータコントローラを購入する予定であった.しかし積層方向への炭素繊維の配向は電界を利用することによって実現することができた.このためXYステージ,θステージ,ステッピングモータコントローラを新たに購入する必要はなく,本申請者の研究室で現在,所有している装置で十分に実験を遂行することができた.このため使用金額が当初予定よりも小さくなった. 令和元年度の実験では電界を生じさせるために現在,本申請者の研究室で所有している500Vまでしか印加できない直流電源を使用した.このため必要な電界強度を得るために極板間隔を小さくせざるを得なかった.このため炭素繊維の長さも0.7mmと短くせざるを得なかった.令和2年度は極板間隔を大きくして炭素繊維をより長くした実験ができるようにしたい.そのためにより高い直流電圧を出力できる電源装置を購入する.その費用に充てることを計画している.
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