2020 Fiscal Year Research-status Report
極間雰囲気が微小径深穴加工用電極工具の成形精度へおよぼす影響の解明
Project/Area Number |
19K04122
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
平尾 篤利 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70455111)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 放電加工 / 深穴加工 / 微小径 / 軸成形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度,微小径軸を用いた深穴放電加工を行った。ここでは,次の3つについて実施した。 (1)深穴放電加工用電極の形状制御:ここでは,走査放電加工法によってダンベル形状の微小径軸を成形した。ダンベル形状とは,工具電極の先端直径を維持した状態で,他の領域を細くする。無垢電極を用いた場合,加工屑および気泡が適切に排出されていたのはL/D=2以下であった。そこで,ダンベル部先端の高さを制御し,先端の高さをL/D=2とした。本手法は,加工に必要な先端領域を残すことができ,軸直径の細い領域においての2次放電を抑制することも可能となった。 (2)深穴放電加工における工具電極形状の影響:本研究で使用したダンベル形状の寸法は,軸長さ3mmおよびダンベル部長さ0.5mmである。加工時間は1800sとした。丸棒電極を用いた場合,電極の変位結果から300sまで安定した加工が実現していた。しかし,300s以降,穴深さ1.4mm付近で加工が停滞した。また,途中2回の上昇が見られた。軸直径を0.4mmおよび0.2mmのダンベル形状の電極を用いた場合,途中まで安定した加工が実現した。しかし,ある一定の深さまで加工すると,同様に停滞した。ダンベル形状した電極を用いた場合でも,穴深さが深くなると加工が停滞することが分かった。 (3)側面からの直接観察:側面ギャップから直接観察した結果,気泡は,気泡の合一により膨張しながら動き,加工屑をより外側に押し出すことが確認された。この影響によって,加工屑は気泡の境界に多く存在することが分かった。また,気泡上部において,気泡が加工穴から排出されるのと同時に加工屑が排出されることが分かった。このように,加工屑の排出には気泡の排出が大きな役割を担っているものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,放電加工における極間の雰囲気が軸成形におよぼす影響の解明である。そこで,放電加工時の加工雰囲気を観察するため,側面ギャップの気泡挙動をハイスピードマイクロスコープによって直接観察した。その結果,深穴放電加工L/D=4の場合,気泡が穴上面から排出された後,次の気泡が排出されずに極間および側面ギャップに滞留することが確認された。L/D=5の場合,ハイスピードマイクロスコープで観察可能な時間20 [s]内において気泡排出は確認されなかった。このようにアスペクト比が大きい深穴放電加工は,側面ギャップに気泡が滞留してしまい,加工が進行しないものと考えられる。L/D=1とL/D=5の気泡占有部を比較した場合,気泡占有部は,加工穴が深くなればなるほど拡大する。L/D=1の場合,加工穴は浅いため,気泡は側面ギャップからすぐに排出される。しかし,L/D=5の場合,加工穴は深いため,気泡排出までの経路が長くなる。この結果,気泡は側面ギャップからすぐに抜け出せなくなり滞留する。深穴放電加工は,側面ギャップに存在していた加工液の減少と移動を制限された加工屑によって短絡や異常放電が引き起こされ,加工が進行しなくなるものと推察される。 本年度,深穴放電加工時において,気泡を適切に排出させるために2つの方法を行っている。1つが,工具電極の形状制御である。電極をダンベル形状に成形することで気泡・加工屑の排出を狙っている。もう1つが,工具電極に超音波振動を付与することである。超音波振動を付与することで,キャビテーションが発生し,合一した気泡崩壊を狙っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,深穴放電加工時における側面ギャップを直接観察することで,加工停滞の要因について考察する。ダンベル型形状の電極を用いた場合,電極のダンベル軸内側に多くの炭素が付着していた。これは,加工屑が適切に排出されず,軸近傍に堆積していたものと予想される。そこで,工具電極に様々な形状を成形することで,気泡・加工屑の除去効率の向上を試みる。特に,側面ギャップを攪拌することが有効な手段と考えており,特殊な軸成形を試みる。気泡の滞留が,加工効率にどの程度影響するか数値化されたデータを取得する。 より高アスペクト比の深穴加工を実現するには,電極消耗の改善が必須である。超音波振動を付与することで,電極消耗の改善が報告されている。そこで,電極消耗に対して超音波振動が,どのような効果を発揮しているのか解明する。また,超音波振動の条件によって,加工雰囲気は大きく異なることが予想されるため,電極速度Vにおける加工屑・気泡の様子および加工特性を詳細に調査する。電極速度Vが速いほど気泡の排出が促進されると想定される。ここでの電極速度Vとは,電極が縦振動する平均の速さとし,次式から算出する。V=a・f [μm/s] (a:電極の振幅,f:振動周波数)最終的に,振幅・電極速度・振動周波数のどの要因が気泡の排出に大きく影響しているかを検証する。
|
Causes of Carryover |
【理由】一年間を通して,コロナウィルスの影響が大きい。予定されていた国際会議,学会,研究打ち合わせが,オンライン開催,中止などとなったため,次年度使用額が生じた。 【使用計画】本年度も引き続き,コロナウェルスの影響が考えられる。このため,学会,研究打ち合わせなどの旅費に関しては不透明である。コロナウェルスが終息すれば,研究打ち合わせなどの旅費が必要となる。本年度,放電加工を側面から直接観察できる光学系を改良する。そのために,ステージなど周辺機器の購入を予定している。
|