2019 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of functional surface by ultra-precision cutting of mold materials for plastic injection molding
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19K04127
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
坂本 重彦 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (00315285)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ステンレス鋼 / バニシング加工 / 硬度 / マルテンサイト変態 |
Outline of Annual Research Achievements |
3軸立形マシニングセンタで、切削工具としてTiAlN コーティング超硬スクエアエンドミルを用いて,オーステナイト系ステンレス鋼SUS304を切削した。加工中には、切削油剤として植物油ベースのセミドライ加工専用油剤を供給した。切削加工は、荒加工とバニシング仕上げ加工とした。荒加工では、切削速度Vc=60m/min、工具軸方向切込み量8mm、工具半径方向切込み量800ミクロンとした。一方、バニシング仕上げ加工では、切削速度Vc=10-60m/minと変化させて、工具半径方向切込み量を5ミクロンと極僅かにした。 SUS304の加工面について、ビッカース硬さ試験方法(JISZ2244:2009)による硬度計測を行なった。加工前における被削材表面の硬度は163HVであった。荒加工を行なった仕上げ面は、276HVまで硬度が上昇した。さらにバニシング仕上げ加工を行うと、356HVまで硬度を上げることが確認された。バニシング仕上げ加工の加工条件で、切削速度を20m/minに、1刃当たり送り量を2ミクロン/toothと低速加工にすると、仕上げ面の硬度は469HVまで上がることが確認された。 加工表面層について、X線解析装置を使用して結晶構造解析を行なった。バニシング仕上げ加工を行うことで、SUS304のオーステナイト相が、マルテンサイト相に変態していることを確認した。すべての加工ではMQLによる圧縮空気を供給して加工したため、加工中の温度上昇による影響よりも、機械的な応力による加工誘起マルテンサイト変態が生じたと考えられる。 オーステナイトステンレス鋼SUS304に対して、切込み量を小さくし、低速加工を行うバニシング仕上げ加工が、加工面にマルテンサイト相を構築することで硬度を上げることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎的な実験として、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304におけるバニシング加工の効果を確認することができた。切込み深さが非常に小さいバニシング加工で実現できた加工条件を、超精密切削加工に置き換えて、さらに高精度な加工面を創成し、加工面の硬度化につながる実験結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
ステンレス鋼SUS304に続き、SUS420J2などにも同様な加工を適用してゆく。加工仕上げ面における硬度を評価することで、機能性加工面の創成を確認する。さらに、バニッシュ仕上げ加工を上回る超精密切削加工を実施し、さらに高精度な加工面を実現し、高機能な硬度仕上げ面を構築する加工技術を確立する。
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