2019 Fiscal Year Research-status Report
次世代モータ用電磁材料の超音波振動せん断技術に関する研究
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19K04129
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
神 雅彦 日本工業大学, 基幹工学部, 教授 (80265371)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超音波振動 / 電磁鋼板 / シェービング / 切り口面 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気モータは,輸送機器や産業機械をはじめとする,あらゆる分野の動力発生装置である.この電気モータの性能は,回転軸側であるコアおよびケース側であるステータの電磁特性により決まる.そして,このコアとステータは無方向性電磁鋼鈑の積層構造となっている.その製造には,せん断加工法が主として用いられるが,切り口面の精度不良,結晶の塑性ひずみ増大など,電磁特性の劣化につながる加工上の課題が内在している.本研究では,超音波振動打抜き法およびシェービング法により,その課題を解決するためのテーマに取り組んでいる. 当年度の研究実績は,まず,超音波振動打抜き法に関するテーマでは,電磁鋼板打抜き実験用の超音波振動金型を開発し製作した.その結果,クリアランスをゼロ近傍から数%までの範囲で任意に設定可能で,振動数f=20.24kHz,振幅a=3~11μm(0-p)で超音波振動するパンチを新たに開発し,打抜き寸法が,テストピース寸法の(55mm×5mm,t=0.2mm)である金型を開発,製作することができた.今後,この金型をプレス機械に設置することにより,各種条件での打抜き実験を実施することができ,超音波振動打抜きの加工特性を調べることができる. 次に,超音波振動シェービングに関するテーマでは,万能型フライス盤を利用した実験装置を構築した.前述の超音波振動パンチをフライス盤のテーブル上に固定し,被加工材はフライス盤の主軸頭に設置する.パンチ切れ刃と電磁鋼板とを干渉させてシェービング代として設定し,テーブルの送りを与えて加工を行なうことができる.以上の二つのテーマにおける実験は次年度のテーマとなるので,研究発表等は次年度以降になる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,解析結果の妥当性を証明する実験を実施するために,新たに電磁鋼鈑およびアモルファス合金打抜き用の超音波振動金型を開発,設計および製作することを目標としている. そのための主たる部品である超音波振動パンチは,市販のボルト締めランジュバンタイプの超音波振動子(最大入力1kW)を用い,パンチそのものが周波数20kHzの1/2波長で共振し,金型(上型)に十分な剛性を持って支持させることができ,かつ切れ刃が打抜き方向と同方向に一様に超音波振動するような設計である.設計に際しては,固有値解析FEMソフトウエアを利用し,数回の設計変更をしながら,かつ振動動作をFEMシミュレーションしながら最適化していった.その結果,計画通りの期間で設計を完了させることができた. 下型には,打抜きクリアランスが調整できるように,2分割型のダイを設計した.これにより,クリアランスをゼロ近傍から数%までの範囲で任意に設定した実験が可能となる.製作した超音波振動パンチは,超音波振動金型の上型に設置し,振動数f=20.24kHz,振幅a=3~11μm(0-p)で,実際に超音波振動させることができた.打抜き寸法は,テストピース用寸法である(55mm×5mm,t=0.2mm)とした. このパンチを含む金型の製作にあたっては,計画では,金型メーカーに製作発注する予定であったが,当時の経済動向からして納期が長いことが想定されたため,学内の機械工場で内作する方針に変更した.その結果,計画よりも短期間で製作することができ,経費も抑制することができた.経費削減分は,新たに超音波発振器の購入に充当した.当初研究計画では,その超音波発振器は,他の研究に利用していたものを転用する予定であったが,新規購入に切り替えたことにより,より快適に実験ができる環境を構築することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
製作した超音波振動パンチおよび金型により,電磁鋼鈑およびアモルファス合金の打抜き,およびシェービング実験を実施する.実験では,超音波振動の振幅と切り口面との関係を中心に検討していく.切り口面の評価項目には,切り口面割合(だれ,平滑面,破断面およびかえりの比率)の変化,切り口面の加工硬化度合いの変化,結晶のひずみの変化について調べていく.また,超音波振動切削の場合,パンチ速度Vに超音波振動f,aが重畳されるため,V<2πafの条件を満足させることにより,振動1周期当たりの切込みがlT(=V/f)毎に断続的となることが明らかにされている.超音波振動切削においては,lTが小さいほど切削面が平滑になることが明らかになっている.そこで,特に,そのlTマークの形成状況について調べることとする. 応用研究としては,量産効果を考慮して,1枚抜き~数枚重ね抜きなどの条件により実験を実施し,加工荷重,切り口面精度,電磁特性などに関して評価する. 期待される効果としては,超音波振動打抜きおよびシェービング法により,切り口面精度に関しては,だれ低減,平滑な切り口面の実現,かえり低減などを期待する.結晶組織では,塑性ひずみや残留応力の低減などを期待する.これらの切り口面精度向上により,鉄損率低減,磁束密度維持などが実現でき,電磁特性に優れたモータコアやステータが実現できるようになるものと考える. 一方,この技術は生産技術であることから,前記の学術的観点に合わせて,生産プロセスとしての評価をも行っていく.すなわち,加工速度などの生産性,工具寿命などに関しても評価する.また,加工精度の向上度合いが,モータ性能に与える影響をも評価する.さらに,多重打抜きと加工精度との相関を調べ,生産性と品質との相反関係についても評価する.
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Research Products
(2 results)