2020 Fiscal Year Research-status Report
A study on product shape preferred by users based on quantification of visual informaton using induction field
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19K04137
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
三島 望 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (00358087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 雅英 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (60172441)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 誘導場 / 感性工学 / 製品形状 / 形状設計 / ユーザー選好 / 相関係数 / AHP |
Outline of Annual Research Achievements |
品形状情報を定量化し,ユーザーの選好情報と比較することにより,ユーザーに好まれる製品形状を予め予測し設計プロセスの効率化を実現することが本研究の目的である。 2020年度は,初年度に事例分析対象としたスマートホンに比べて,より形状が製品選択に影響する製品として自動車(乗用車)を対象とした分析を行った.スマートホンの解析の際には,実際の製品形状を線画化した画像を用いたが,製品の使用経験や製品に対する知識が選好に影響を与える可能性が指摘された.そのため,2020年度の分析に際しては,手書きイラストに対して画像情報の定量化,ユーザー選好の同定を行った. 乗用車を4つの車種(セダン,ワゴン,ミニバン,SUV)に分け,それぞれに対して2種類のイラストを準備し,視覚誘導場計算プログラムで解析したところ,ワゴンのみ誘導場のポテンシャル値(画像全体の面積分値)と最大-最小差に3%程度の数値の違いが見られたが,他の3車種はほとんど違いが見られなかった. 一方,ユーザー選好については,先行研究から自動車の形状評価基準として,“スポーティーな”,“高級そうな”,“落ち着いた”,“親しみやすい”の4種類を抽出した.4種類の評価基準の相対重要度を一対評価法によって同定したところ,前2者の相対重要度の合計が5割を超える“スポーティー指向”と後2者を重視する“カジュアル志向”に明確に分解できることが明らかになった. 画像の誘導場に違いが見られたワゴンについては,ユーザー選好が誘導場のポテンシャル値,最大-最小差ともに強い負の相関を示した.このことは,スマートホン同様,自動車においても,相対的に印象の弱い,メリハリの小さい形状が好まれることを示している.ただし,この結果が有意なものであるか,さらに検証が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
旅費を除く研究予算の仕様と,研究設備の整備は順調に進んでいる.また,初年度はスマートホン,2年度目は自動車,最終年度は椅子(予定)と順次,形状がよりユーザー選好に影響すると考えられる事例分析対象に取り組んでおり,異なる製品群に対する分析結果も収集できている.最終年度に製品群毎の違いに着目して分析を加えることにより,製品群毎に,機能設計と形状設計の重みづけ,形状設計においてユーザーに好まれる製品形状のおおまかな予測が可能となると考えている.研究内容そのものの進展は順調である.一方,研究成果の発表,成果普及については予定より遅れている.新型コロナウィルス感染拡大の影響により,予定した国際学会が遠隔実施となった.その際,オンデマンド型の実施方法であったため,ユーザー選好に対する色の影響,3次元形状の取り扱い方法について突っ込んだ議論が難しいものと予想されたため,参加を取りやめた.その後,発表予定の成果を学術誌への投稿に切り替えたものの,予定外だったため,年度内に投稿は行ったものの,査読結果は出ていない.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は事例分析の対象を椅子に変更する.一般的な工業製品の中でも,形状がユーザー選好に強く影響する製品群だと考えられるからである.これまでの分析対象同様,椅子の場合もメーカーとそれによって形成されるブランドイメージがユーザーの製品選択に影響すると考えられるものの,一般的に形状だけからメーカーを特定することは難しいため,ブランドイメージなどの形状以外の情報がユーザー選好に与える影響を除去できると考えたことも理由である.椅子の中でもオフィス用の椅子とリビング用の椅子(いわゆるソファ)があるが,先ずはオフィス用の椅子を分析対象とすることとした.ソファの場合は,一人掛け,二人掛けをはじめとして形状にバリエーションが多く,一定の基準で製品画像を収集することが困難だと考えたからである. 研究のアプローチとして,先ず典型的な作業用椅子の画像を2種類程度収集し,画像から生起される印象をSD(Semantic Difference)法により収集する.得られた印象を3~4程度の評価基準に縮約する.次にユーザー選好の同定に使用する画像を3,4種類収集し,予め誘導場の計算を行っておく.これらの画像は,予め誘導場の値に有意な差が見られるよう調整しておく.(有意な差が得られない場合は画像を変更する.) また,インターネット調査により,AHP(Analytical Hierarchy Process)法を用いて,評価基準の相対重要度を同定し,ユーザー選好の同定に用いた画像の相対重要度を求める.最後に,誘導場の計算値と,ユーザー選好の同定値の相関を計算する.これにより,椅子の形状に関するユーザーの選好とその理由を明らかにすることができる. 最後に3年計画の成果として,製品群毎にユーザーに好まれる製品形状が異なるか,あるいは共通した選好があるかなどについて分析を進めて行く.
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Causes of Carryover |
全体予算については,直接経費1,206,160円のうち,289,130円が未使用であった.各項目における予算使用状況と理由は以下のとおりである.以下に記載した事項以外は概ね予定通り支出し,研究を遂行することになった. 物品費・その他の経費:購入した3Dプリンターが,本体とともに,形状モデリングフトウェアと一体の販売であったため,物品費より支出した.一方,その他の経費については,3次元形状モデリング用のソフトウェアの支出を予定していたが,上記のように,物品費より支出したため,物品費の超過分を含めた216,620円が未使用となった. 旅費:300,000円の当初予算額であったが,ウィルスの感染拡大の影響により,研究成果の発表のために参加を予定していた国際学会への参加を取りやめた.このため,全額が未使用であった. 最終年度は2年度目に取りやめた研究成果の発表を埋め合わせるべく,オンライン、オフラインの複数の国際学会に参加し議論を通じて成果の公表を図る.そのための会議参加費,旅費としての使用を予定している.また,製品形状に対するより広範なユーザー選好データを収集するために,3Dプリンターによる製品形状モデルの製作を積極的に行う.その際の消耗品費としても使用する.
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