2020 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッドポリマー軸受の摩擦化学反応による自己修復発現メカニズムの解明
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19K04150
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
古池 仁暢 宮崎大学, 工学部, 助教 (40603329)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 樹脂軸受 / 転がり疲労 / 樹脂機械要素 / PEEK構造・物性 / 自己潤滑膜 / 摩擦化学 / 高機能樹脂 / 長寿命化 |
Outline of Annual Research Achievements |
高機能プラスチックであるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、絶縁性かつ非磁性であり優れた耐食性をもつ。また、生体親和性や良好な摩擦摩耗特性を有しているので、医療バイオ機器や自然エネルギー生産設備などの特殊環境における機械要素材料への適用が大きく期待されている。しかしプラスチックは強度面で金属に劣る為、長期使用や高強度化において様々な課題がある。そこで高分子の特徴をいかした自己修復技術の可能性に着目した。本研究の目的は、摩擦化学反応を利用した自己潤滑膜再生挙動を明らかにして損傷修復機構を確立することである。 本年度は、PEEK系材料を主体とするラジアル型の軸受を模擬した試験体へ人工傷を導入した。そしてこれらの傷を予め付与した玉軸受モデルを用いて転がり疲労テストを行い、転がり接触下での自己潤滑膜の生成および人工傷の縮小過程を調べた。転がり疲労試験の途中止め試験片のうち、自己潤滑膜が生成した軸受の軌道面に人工傷を導入し、玉が人工傷上を転がり滑りと圧縮を繰り返しながら通過するようにした。特定の条件下で総回転数1千万回の疲労テストをおこなった結果、最終的な疲労テスト後の人工傷の周囲にレイヤー化した自己潤滑膜が観察され、PEEK試験体の表面層が変化し人工予傷部が覆われたことが確認された。この理由として転がり接触部での温度圧力上昇により様々な反応が促進されたこと、および接触応力下での膜の積層や摩擦による試験体表面の物理的変化によるものと推測した。今後、試験体表面の応力状態や化学的変化、人工傷やき裂の状態詳細等を調査する。アウトプットとして論文を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展した理由として、ラジアル試験装置導入により実験を集中して進めることができたこと、並行して試験片の損傷および修復状態の観察や分析を行えたことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
人工傷を導入したPEEK試験体を用いて、転がり疲労試験および軌道面の分析を行う。加えて試験体の転がり滑り接触部にある人工傷近傍のトライボロジー挙動等詳細を調べる。また傷修復や無害化の可能性を検討し、膜の発現条件等を明らかにする。
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Causes of Carryover |
世界的なCOVID-19感染症拡大の影響により、実験室や学会発表等の進捗に影響を与えた。海外の国際学会開催が中止されたため旅費残額が生じた。残額は次年度のオンラインでの学会発表や論文出版費、実験費として使用する予定である。
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