2019 Fiscal Year Research-status Report
新規駆動系実用化展開のための超大偏心許容形等速軸継手の研究開発
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19K04158
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
野崎 孝志 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (20548888)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 軸継手 / 機素 / 潤滑 / 微小すべり / 寿命 / 混合潤滑 / Hertz接触 / 転がり疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究開発の目的は,差動滑りのような微小すべりが内在する転がり接触部で構成されている超大偏心量許容形等速軸継手(以下軸継手)の寿命を,転がり疲労の観点から定量的に明確にすることにより,実用化適用範囲の拡大を図ることである.更に,軸継手の摩擦特性を,表面粗さを考慮したGREENWOOD-WILLIAMSONモデルで代表されるような,ストライベック曲線で現れる混合潤滑領域での潤滑理論(混合潤滑理論)により明確にし,機構安定性や寿命向上を図ることである. 初年度の研究実績としては,これらの実施項目の基盤となる軸継手内部に作用する力の測定装置の開発を行った.軸継手内部に作用する力の測定装置には,力センサを組み込んだ構成を採用した.本装置により,ボールと案内溝に作用する力の計測が可能になる.本装置は,軸継手の基本構成に案内溝1個あたり2個の力センサを配置し,合計4個の力センサで構成されている.案内溝(力の計測箇所)はプレートと分割し,プレートと分割した案内溝間に力センサを配置している.案内溝はゴシックアークを採用しており,ボールと案内溝は2点で接触している.そのため,案内溝も2個に分割して,2点それぞれの力を計測することを可能としている.さらに,軸中心にばねを配置し,プレートに軸方向力を作用することで,ボールに予圧を作用させた.その結果,軸方向のボールの挙動を安定させることが可能な構成とした.本装置の力センサは,3分力計測が可能なセンサを選定していることから,法線方向力のみでなく摩擦力も計測が可能である.継手内部の摩擦力変化を計測することで,転がり滑りが混在する軸継手の摩擦係数変化についても実験により解析を行うことができ,理論解析結果との精度の高い整合性を確認することが可能となった. これらの研究実績は,2019年度日本機械学会年次大会講演論文集にて,その一部を発表している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(令和元年)から着手する項目は次の2項目である.1項目めは『接触部のHertz接触面圧,及び転がりと微小滑りが混在する運動を理論的に解明し,寿命試験を行うことで実験的に寿命を把握し,計算寿命式を確立する.』であり,2項目めは『混合潤滑理論(GREENWOOD-WILLIAMSONモデル等)や転がり軸受のスピン・滑り機構の理論を適用し,摩擦特性を定量的に明確にする.』である. 1項目めでは,本軸継手の動力学解析(特にボールの運動)を摩擦係数変化を考慮して行う必要がある.初年度は,実証実験のための軸継手内部に作用する力の測定装置を開発した.この装置の開発を優先させることにより,理論的な面からだけでなく,実際の軸継手に作用する力,接触部におけるHertz接触面圧,及びボールの運動等を様々な条件下で明確にできるようになった. 2項目めでは,混合潤滑理論を適用した動力学解析(理論解析)モデルの開発を実施している.軸継手のボールは,案内溝や保持器に対して往復運動をするため,潤滑領域が変化することにより摩擦係数が大きく変化する.摩擦特性の把握には,混合潤滑理論を適用する.本年度は混合潤滑理論から推定される二面間の相対速度に対する摩擦係数変化を近似曲線にて解析モデルに適用し,理論解(継手に作用する力及び接触部におけるHertz接触面圧等)を得ることができた.今後,様々な条件におけるパラメータスタディを実施することが可能となり,上記の軸継手内部に作用する力の測定装置から得られる実証データにより動力学解析(理論解析)モデルの精度向上を図ることが可能となった.この装置により,混合潤滑理論のみでは予測できない境界潤滑領域の摩擦係数を,極低速回転での実験による動力損失を求め,理論解析との整合性を取ることで推定できる.これらの研究開発により,今後の研究スピードの加速が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は,次のような3項目を考えている.1及び2項目めは,【現在までの進捗状況】において示した.3項目目は,『摩擦特性や寿命を把握した上で,機構の安定性や寿命の向上を図る.』ことである.3項目目は,最終年度に実施予定であるが,なるべく前倒しで実施したいと考えている. 令和2年度は,大きくは1及び2項目めについて以下の通り研究開発を進めていく. 1項目めでは,現在所有する軸継手の特性試験機(基盤研究(C)H28~H30)を寿命試験機に改造し,寿命試験に着手することである.軸継手の内部の運動は,転がり軸受内部の運動と類似するため,基本的には転がり疲労の考え方を適用することとする.転がり軸受の寿命は,残存確率90%に対応する寿命を基本定格寿命と呼び,JIS B 1518の定義では通常使用条件において,信頼度が90%のときの定格寿命としている.その後「疲労限応力」,「汚染係数」及び「粘度比」の概念が取り入れられ,最新のJISでも規格化されている.この考え方を取り入れ,計算寿命式を確立するための寿命試験を実施する. 2項目めでは,摩擦特性の具体的な把握には,次の手順で混合潤滑理論の考え方を適用する.①粗さの高さを分布ガウスと仮定したGREENWOOD & TRIPPの接触理論式を用いて,粗さ突起が分担する接触面圧を求め,摩擦係数との積から摩擦力を算出する.②流体潤滑部ではジョンソチャートによる潤滑モード判定を行い,油膜厚さ求める.③JOHNSON& TEVAARWERKの非線型粘弾性マクスウェルモデルをアイリング解に簡略化して,流体潤滑部の摩擦力を求める.④突起接触による接触摩擦力と流体潤滑部摩擦力の和を求めて摩擦係数を算出する.また,境界潤滑領域の摩擦係数は,極低速回転での実験による動力損失を求め,動力学解析(理論解析)モデルとの整合性を取ることで,推定できると考えている.
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Causes of Carryover |
寿命試験機製作のための一部の機器を次年度(令和2年度)に購入することとした.試験機製作完了時期に合わせて納入することでも,円滑に寿命試験が実施できることから,寿命試験機製作進捗と合わせて次年度(令和2年度)に購入していくこととした.
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Remarks |
ヴィークル工学研究室(野﨑研究室)のホームページ内に,科研費研究のページを別途作成した.内容については,随時更新していく予定である.
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Research Products
(2 results)