2019 Fiscal Year Research-status Report
自己潤滑性の高い軟質金属と硬質炭素のナノ複合構造化による摩擦界面温度センサの創製
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19K04161
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
後藤 実 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (00435455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仙波 伸也 宇部工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (40342555)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トライボロジー / ナノ複合膜 / 金 / 銀 / 銅 / 複合ターゲット |
Outline of Annual Research Achievements |
軟質金属(SMe)とダイヤモンドライクカーボン(DLC)複合膜(SMe-DLC)の成膜法を確立することを目標とし、直径10 mmの金(Au)タブレットを直径50 mmの炭素ターゲット上に同心円状に配置した同心円複合ターゲットを使用した高周波マグネトロンスパッタ法によりSi(100)基板上にAu-DLCの成膜を行い、RF出力が125 Wおよび175 Wの成膜条件下で成膜時基板温度323 Kおよび423 Kにおける成膜速度、内部応力およびAu含有率を調査した。その結果、RF出力および基板温度共に高い方が成膜速度が高くなり、エネルギー分散X線分光分析によって求めたAu含有量は低下する傾向が認められた。成膜後のAu-DLCの内部応力は、RF出力が高い条件で成膜した場合に、基板温度が高い方が半減する結果となった。 続いて、SMe-DLCの電気特性評価を行うため、比抵抗測定用の4端子プローブを自作し、真空容器内部に組み込んだ装置を作成した。真空槽内で雰囲気制御を行うことにより、高温条件における酸化劣化を生じさせない条件で電気的性質の評価が可能になるようにした。 SMe-DLCのナノ構造解析に関して、成膜時基板温度が323~423 kの範囲で成膜したCu含有量7~57at.%のCu-DLCのナノ構造を透過電子顕微鏡(TEM)によって明らかにした。その結果、Cu含有量が高い場合には成膜時基板温度の違いで膜のナノ構造が変化することが確認された。また、Ag-DLCとCu-DLCの金属含有量と結晶配向性の関係についてX線回折法を用いて調査した結果、金属含有量の増加に伴って<111>配向性が強まり、ドメインサイズも増加することを確認した。 SMe-DLCの摩擦・摩耗特性に関して、TEMを用いてSMe-DLCの摩耗率を評価する手法を新たに提案し、摩擦試験における摩擦仕事と摩耗特性の関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたAu-DLCの成膜を実施し、成膜速度、内部応力およびAu含有量の定量分析を行ったが、膜の硬さおよびTEMによるナノ構造観察には至らなかったものの、次年度中に十分挽回可能である。SMe-DLCの電気特性評価を行うための装置開発は概ね順調に進んでいる。Au-DLCの他、Ag-DLCおよびCu-DLCについては、成膜およびナノ構造観察、摩擦・摩耗特性評価、比抵抗測定について順調に推移している。従来計画に加えて、XRDによる結晶配向性評価を新規に開始している。TEMによる解析に関しては、厚さ1マイクロメートル以下の硬質薄膜の摩耗特性解析への新しい評価手法としての提案を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針は、成膜時の同心円複合ターゲットのAu/C比を変化させ、低濃度~中濃度のAu含有量のAu-DLCを製膜し、Au含有量と機械的性質、電気的性質およびナノ構造の変化を明らかにし、摩擦・摩耗特性との関係を明らかにしていくとともに、これまで研究を行ってきたAg-DLCおよびCu-DLCとの対比を行い、軟質金属の物性とSMe-DLCの物性およびトライボロジー特性の関係を明らかにし、自己潤滑性の高い軟質金属と硬質炭素膜のナノ複合化による摩擦界面温度センサの創製へ発展させていく。
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Causes of Carryover |
助成決定額が申請額を下回ったので予定していた設備購入を中止し、次年度に渡って自作することにしたため次年度使用額が生じた。次年度において引き続き設備製作に使用する。
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Research Products
(8 results)