2020 Fiscal Year Research-status Report
高密度マイクアレイと集束超音波音響流を用いた壁面圧力変動場に基づく乱流制御
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19K04176
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中 吉嗣 明治大学, 理工学部, 専任講師 (10723421)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超音波音響流 / 超音波フェーズドアレイ / マイクアレイ / 壁面圧力変動 / 乱流構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下の3項目について研究を実施した (1) 超音波振動子アレイ駆動回路の設計と実装,(2) 新たなマイクアレイキャリブレーション手法の開発,(3) 直接数値計算による壁面乱流圧力変動と乱流構造の関係解明。(1) 超音波振動子の駆動回路設計についてフェーズドアレイ超音波音響流アクチュエータを構成する多チャンネル超音波振動子駆動系の設計と実装を行った。駆動系はFPGAから出力された位相差のある多チャンネル駆動信号を受け取り,これをドライバICで電力増幅して超音波素子を駆動するものである。7×7の正方形超音波振動子アレイを複数のドライバICで駆動する回路を作成し,動作することを確認した。(2) マイクアレイキャリブレーションの新たな手法としてチャープ信号を用いた手法を試みた。チャープ信号は時間的に周波数が連続的に変化する信号である。マイクアレイを乱流計測系に組付けた状態で外部からチャープ信号音波を与え,マイクアレイ近傍に設置した基準マイクロフォンとの比較によってキャリブレーション情報を得る。チャープ信号の解析は短時間フーリエ変換を用いたスペクトログラムによって行っている。この手法によって多チャンネルマイクアレイのキャリブレーションをより簡便かつ正確に行うことができると考えられる。次年度も引き続き本手法の検証を行う。(3) 直接数値計算を実施して,壁面乱流圧力変動と乱流構造の関係を条件付き平均によって調べた。乱流によって生ずる強い正の壁面圧力変動は,壁面近傍のスウィープ運動(壁面方向に向かう運動)によって引き起こされることを明らかにした。また,強い負の壁面圧力変動は壁面近傍の縦渦構造の直下に存在することを確かめた。壁面圧力変動とその上部にある乱流構造の関係を明らかにすることで,壁面センシングによる乱流の効率的な能動制御手法の確立に役立てることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,超音波振動子アレイ駆動回路の設計と実装,新たなマイクアレイキャリブレーション手法の開発,直接数値計算による壁面乱流圧力変動と乱流構造の関係解明に関する研究を実施し,一定の成果を得た。これらは本研究の要素技術である,流れの制御アクチュエータの開発,流れのセンシング技術の開発,流れの能動制御のための物理モデルの構築にそれぞれ対応するものである。超音波振動子アレイを用いた集束超音波音響流の実現状況について,当初目標としていた2 m/s 程度の誘起流速は未達成となっている。ただ,収束超音波音響流を構成するための要素技術の開発は進んでいることと,センシングと物理モデル開発の取り組みが進んでいることから,現在までの進捗状況をおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は超音波振動子アレイの大規模化によって,当初目標としていた2 m/s程度の集束超音波音響流を発生させることを目指す。また,フィードバック/フィードフォワード制御系を構築するために,マイクアレイと超音波振動子を1つのFPGAで制御する。制御の応答時間を評価して,構築したシステムの適用範囲を明らかにする。壁面乱流における壁面圧力変動と乱流構造の関係に関する理解をさらに深め,効率的な乱流能動制御アルゴリズムを決定する。具体的には,壁面圧力変動の時系列多点計測データと超音波音響流出力をどのように対応させれば,効率的な乱流制御が可能となるかを,壁面乱流の物理的理解に基づいて見い出す。センサ・アクチュエータ・制御アルゴリズムの3要素を統合して,本研究で提案している乱流能動制御手法を確立する。
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Causes of Carryover |
今年度大規模な超音波振動子アレイをするために予算を使用する予定としていたが,要素技術の開発に時間を費やしたため次年度使用額が生じた。次年度は,速やかに大規模超音波振動子アレイの作成のために予算を使用する予定である。
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