2021 Fiscal Year Research-status Report
高密度マイクアレイと集束超音波音響流を用いた壁面圧力変動場に基づく乱流制御
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19K04176
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中 吉嗣 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (10723421)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超音波音響流 / 超音波フェーズドアレイ / マイクアレイ / 壁面圧力変動 / 乱流構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下の3項目について研究を実施した。(1)超音波振動子アレイ駆動回路の基本的な特性の評価,(2)壁面圧力変動場計測用フレキシブルマイクアレイの開発,(3)壁面乱流圧力変動と乱流構造の関係解明。(1)前年度に設計・動作確認した超音波振動子アレイ駆動回路を用いて4つの超音波振動子を実装した回路基板を製作した。4つの振動子に位相の異なる入力信号を与え,発生した音圧の強度分布および音響流を評価した。位相差を変化させることで,強い音圧が生ずる領域の位置を制御できることを確かめた。また,流れの可視化によってその際の音響流を評価した。(2)壁面圧力変動の測定技術の適用範囲を拡大するため,曲面に適用可能なフレキシブルマイクアレイの設計と製作を行った。従来のマイクアレイ基板は板厚さ1.6mmのリジッド基板が用いられていたのに対して,今回は基板を薄くして柔軟性を持たせることで,マイクアレイをR300程度の曲面に沿って設置することが可能となった。1つのマイクアレイには従来同様28個のマイクロフォンを実装した。作成したフレキシブルマイクアレイを3次曲線形状の物体表面に設置し,順圧力勾配と逆圧力勾配下で壁面圧力変動を測定した。逆圧力勾配下では壁面圧力変動のパワースペクトルの高周波数成分の増幅が確認された。 (3) 直接数値計算を実施し,壁面乱流圧力変動と乱流構造の関係を調べた。局所的な壁面圧力の値が,平均的な圧力変動強度の3倍以上の振幅となる点を high amplitude wall pressure peaks (HAWPP) と定義し,正のHAWPPと負のHAWPPの原因となる乱流構造を明らかにした。これらはHAWPP点の周りで壁面近くに存在する縦渦構造であり,クラスター解析によって複数の縦渦構造の代表的な配列パターンを明らかにした。壁面圧力変動とその上部にある乱流構造の関係を明らかにすることで,壁面センシングによって乱流を効率的に制御する手法の確立に役立てることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は,超音波振動子アレイ駆動回路の基本的な特性の評価,壁面圧力変動場計測用のフレキシブルマイクアレイの開発,壁面乱流圧力変動と乱流構造の関係解明に関する研究を進め,一定の成果を得た。壁面圧力変動場計測用のフレキシブルマイクアレイの開発と,壁面乱流圧力変動と乱流構造の関係解明については,当初の計画に準じた成果を得た。その一方で,超音波振動子アレイ駆動回路の基本的な特性の評価に関しては,当初の目標としていた 2 - 3 m/s 程度の誘起流速を生み出す超音波音響流アクチュエータの実現に遅れが生じている。これは,多数の超音波素子を個別に位相制御して駆動するための電力増幅回路と情報処理回路の実装が当初予期したよりも困難だったためである。また,複数の素子から発せられる超音波の位相を,理想的な超音波素子を仮定して計算された値に設定した場合でも,想定されるような強い音圧が得られなかった。これは超音波素子の入出力特性の個体差が原因あることが考えられる。乱流制御に必要な超音波音響流を実現するためにはこれらの技術的な課題を解決する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は超音波音響流アクチュエータの誘起流速の目標値である 2 - 3 m/s を達成するための取り組みを実施する。具体的には,超音波フェーズドアレイ空中触覚生成装置を導入し,この装置が作る超音波音響流とその乱流制御への適用性を評価する。この装置には1ユニットあたり249個の超音波素子が配置されており,2つのユニットを組み合わせて用いる。この装置は空中に触覚を生じさせるために音響放射圧による力を発生させるためのものであるが,位相制御によって集束超音波を形成することができることから,本研究における今年度の技術的な課題を解決することができると考えられる。本装置の超音波が作る音圧分布と,それによって生ずる超音波音響流の特性を評価する。並行して開発の進んでいる壁面圧力変動センサおよび壁面圧力変動に対応する乱流構造の知見を統合して,本研究で提案している新たな乱流能動制御手法の確立に取り組む。
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Causes of Carryover |
超音波フェーズドアレイ空中触覚生成装置の導入に当たり,世界的な半導体不足の影響により,発注から納品までに想定よりも大幅に長く時間がかかったため。装置は次年度4月に納品されている。残額は主に消耗品購入費用として使用する。
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Research Products
(2 results)