2020 Fiscal Year Research-status Report
自動車用ターボチャージャの脈動流下における損失発生機構の解明
Project/Area Number |
19K04177
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮川 和芳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30623673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 揚平 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (80822452)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ターボチャージャ / 脈動流 / 非定常流れ / タービン / コンプレッサ / サージ |
Outline of Annual Research Achievements |
ターボチャージャは、エンジンのダウンサイジングのために近年多用されているが、エンジンの排気脈動流下で運転されるため、非定常的な挙動を示し定常流下と異なる性能であることが明らかになっている。本研究ではターボチャージャのタービン、コンプレッサの脈動流による非定常的な挙動を流動解析および実験により明らかにする。2019年度は、タービン、コンプレッサの脈動流下での挙動を明らかにするために、ターボチャージャ試験装置を用いタービン、コンプレッサのそれぞれの性能を評価した。また非定常流動解析により、実験を補間した。2020年度は、非定常流要素試験装置の構築、計測により基礎的な流れに対する流れの応答を把握した。また、タービン、コンプレッサ試験装置を用いて詳細な内部流れの計測を実施した。これまで得た知見は以下の通りである。 1.加速流、減速流においては圧力損失を計算する上で、非定常圧力項を除去し単純なディフューザ、ノズル流路で流量変動の無い定常流下と比較検討した結果、ディフューザ流れにおいては加速流にて損失が減少、減速流にて損失が増加する。ノズル流れにおいては加速流にて損失が増加、減速流にて損失が減少する。 2.タービン試験装置にて脈動流下における性能計測を行った結果、脈動流下においてタービンの性能は定常流下と比較して大きく低下し、脈動周波数が小さいほど効率低下が大きく、大きいほど効率低下が小さい。タービンのCFD解析の結果から、定常流下と比較すると、ホイール、出口ディフューザ、ケーシングにて脈動流下における損失が増加することが明らかになった。 3.コンプレッサ性能計測ではタービンと同様に脈動流下でヒステリシスループなどが確認されたが、効率についてはタービンほど大きな影響は見受けられない。また、サージ周波数は脈動周波数の影響を受け、脈動周波数への引き込み現象が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度も引き続き、脈動流下でのタービン、コンプレッサの挙動、損失発生メカニズムの解明に、実験と解析で取り組んだ。このため非定常流要素試験装置、タービン試験装置をメカニズムの解明に用いた。要素試験装置では、ディフューザ流路内に増減速流やディストーションを流入させ、圧力分布、流速の計測を行い非定常流に基づく摩擦損失や、混合損失発生の分析を行った。脈動発生装置には穴の空いた円盤が入っており、任意の周波数の周期的な脈動流やディストーションを生成することが可能となっている。また、インバータで駆動するブロワによってランプ状に変動する流れも模擬可能であり、本研究においてはランプ波形(加速流、減速流)に対して、ディフューザ流路の流路形状において損失発生過程の検討を実施した。さらに、流動解析においても同様な条件でのシミュレーションを実施し、実験結果と併せて流れの分析を実施した。ターボチャージャ試験装置でも同様に様々な脈動流下におけるターボチャージャの性能応答を引き続き把握し、脈動流が与える影響を把握した。タービン、コンプレッサとも脈動流下の流れは、同じ流量での準定常の仮定からも大きく異なるため、そのメカニズムの構築を実施、試験装置を用いた実験の実施と並行して流動解析も実施し、脈動流下での損失メカニズムの構築を検討した。特に、タービン流れでのノズルとホイールの間の非定常流れの特性を実験、解析で把握し、その影響をまとめた。 また、コンプレッサ流れでは、サージの脈動流下での特性について検討、把握した。 上記のように二つの実験装置を本研究課題に適用し、流動解析の実施によりパラメータの影響や内部流れの詳細挙動の補間を実施した。本進捗は概ね計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、脈動流下でのタービン、コンプレッサの挙動、損失発生メカニズムを引き続き、実験と解析で解明し、内部流れと損失発生の関係を明確化していく。特に、流非定常流計測要素試験装置を用いた基礎的事象の解明に基づく、タービン、コンプレッサの非定常流れを検討していく。そのため、2020年度に引き続きノズル、ディフューザ流路内に脈動流や、ウェークを流入させ、摩擦損失、混合損失発生の分析を行い、正弦波形、ランプ波形(加速流、減速流)、脈動波形の4種類の変動流に対して、ディフューザ流路、ノズル流路の2パターンの流路形状において実験を実施する予定である。ターボチャージャ試験装置のタービン、コンプレッサでも同様に周波数、大きさ、特性等の異なる脈動流下におけるターボチャージャの性能応答を計測し、脈動流が与える影響を把握する。また、タービン、コンプレッサの定常流下と脈動流下での計測、評価手法についても検討をし、実際のターボチャージャ試験での計測方法を評価する。実験と同じ条件での流動解析も進め、実験検証により精度を確認すると共に、内部流れの把握に資する。タービンの流れはLDV等を使用した内部流れの計測をさらに行い解析結果を検証する。また、コンプレッサの低流量域で旋回失速やサージングの発生を確認したが、脈動流下においては旋回失速やサージングの挙動が異なることを更に明らかにする。今年度は、サージに加え旋回失速にも注目し、定常流下と脈動流下の違いを明らかにする。 今年度の実施事項により、脈動流下でのタービン、コンプレッサの内部流れと性能の関係をまとめ、研究の纏めとする。
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Remarks |
ISROMAC:18th International Symposium on Transport Phenomena and Dynamics of Rotating Machinery 研究室が主催した回転機械の関する国際会議であり、過給機のセッションを設けた。
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