2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Blood Flow Rebalancing and Thrombosis Formation Caused by Patent Ductus Arteriosus
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19K04181
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Research Institution | Gifu National College of Technology |
Principal Investigator |
山本 高久 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10345960)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 数値流体力学解析 / 血行動態 / 動脈管 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,左心室低形成症候群等の重度な先天性心疾患に対しては,症状の緩和を主眼とした姑息手術(Norwood 手術,Glenn 手術など)を行い,その後,患児の成長を待ち,根治手術 (Fontan 手術) を行う。これら手術は6時間以上にも及ぶことがあり,生後間もない患児には大きな負担となっている。そこで近年,動脈管開大(PDA)を目的とした PDA ステントグラフト内挿術が注目を集めている。 同術は動脈管(大動脈と肺動脈とを繋ぐ小さい管)にステントを挿入することにより,肺に過大流入する血液の一部を全身へと迂回(血流のリバランス)させるもので,姑息手術の代替術(手術自体は 1~2 時間で完了)として実施されている。本手術のメリットは大きいものの,ステント挿入により血栓が形成されるという症例報告もなされている。PDAステントグラフト内挿術の術後コントロールの改善,PDAステントグラフト用の血栓抑制ステントの開発を進める上で,動脈管開大による大動脈-肺動脈間の血流のリバランスメカニズムならびに動脈管まわりの血行動態を詳細に明らかにすることは必要不可欠と考えられる。 そこで本研究では,大動脈-動脈管-肺動脈系の生体模型を製作,PIV 可視化実験ならびに数値流体力学(CFD)解析を行い,細管(動脈管)を介した二つの拍動流(大動脈と肺動脈)の相互作用,動脈管開大による血流のリバランスのメカニズムを実験的ならびに理論的に解明する。その上で,動脈管における血栓生長メカニズムを明らかにし,血栓成長の予測モデルを構築する。本研究を通して,個々の患児に最適化した動脈管ステントの開発が実現可能になるものと考えている。研究初年度は肺動脈-動脈管-大動脈系の生体模型を用い,PIV計測にて定常流れにおける同領域の血行動態を観察した。また,CFD解析により拍動条件における血行動態の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は実症例データを元にした肺動脈-動脈管-大動脈系の血管モデルを構築し,流れの可視化実験,数値流体力学(CFD)解析を行った。 前者では,シリコン製の可視化実験用モデルを試作し,定常流であるものの左心室低形成症候群を想定した流れの可視化実験(PIV計測)を実施した。作動流体には,シリコンと作動流体との透過率を合わせるためにグリセリン水溶液(65vol.%)を用いた。PIV計測のために可視化用粒子(10ミクロン)を作動流体に混入し,3Wのグリーンシートレーザー,ハイスピードカメラ(2000fps)により,流動状態を可視化・計測した。流動条件には,条件1(軽度左心低形成を想定):大動脈0.68L/min, 肺動脈3.2L/min,条件2(重度左心低形成を想定):大動脈0.0L/min, 肺動脈2.94L/min,の二条件を採用した。その結果,肺動脈,大動脈の血流バランスが崩れる時,肺動脈から大動脈への振動流が形成されることを明らかにした。 また,後者では肺動脈,大動脈の拍動データを元に,実験条件と同様の軽度,重度の左心低形成を想定帯したCFD解析を行った。解析に際しては,乱流モデルにLESモデル・動的Smagorinskyモデルを用いた。その結果,動脈管内に大きな循環渦が形成されること,重度の解析ではその傾向がより顕著に現れることが明らかになった。また,乱流の第二不変量であるQ値を求めたところ,動脈管内での渦の形成が顕著であること,大動脈側出口近傍に滞留場が形成されやすいことが明らかになった。 このように実験,解析ともに計画通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,大きく以下の三項目について研究を遂行する。 1) PIV計測データとCFD解析結果との比較によるCFD解析の高精度化:昨年度実施した,PIV計測データならびにCFD解析では,現在の実験装置の制約上,完全なる同一条件下での実験,解析が困難であった。そこで解析条件ならびに境界条件のあわせ込みをしつつ,乱流モデルであるLESモデルのチューニングを行う。 2) 拍動パラメータ(流量条件及び大動脈流,肺動脈流との位相差)が肺動脈-動脈管-肺動脈系の血行動態に及ぼす影響の評価:CFD解析をベースとして,肺動脈流,大動脈流の流量差,及び位相差が同領域の血行動態(血流速,拍動,Q値,壁面剪断応力)に及ぼす影響を明らかにする。 3) 動脈管の開大度合いが同領域の血行動態に及ぼす影響の評価:過度な動脈管の開大や不十分な動脈管の開大など,動脈管ステントを挿入することを想定した肺動脈-動脈管-大動脈系の血管モデルを作成し,PIV計測及びCFD解析を実施,動脈管の開大の度合いが同領域の血行動態に及ぼす影響を評価する。
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Causes of Carryover |
計画段階では今年度,肺動脈-動脈管-大動脈系の流れの可視化実験モデル(シリコン製)の試作を予定していた。しかし,本研究プロジェクトに先行して試作した同血管系の可視化模型を有していたことから,今年度はこの現有模型を流用することとした。これにより,可視化実験における改善点(配管の取り回しやレーザー照射面のクオリティの向上など)の抽出を行うことができた。このような理由で次年度使用額が発生することとなった。 次年度はこれら改善点を模型製作に反映させ, PIV計測の高精度化を図る予定である。
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Research Products
(2 results)