2019 Fiscal Year Research-status Report
カイアシ類は流されながら流速場をどのように検知し応答するのか
Project/Area Number |
19K04184
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
秋葉 龍郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (00221713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 祐志 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90207150)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カイアシ類 / 速度勾配 / 行動観察 / 生物流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は初年度であり、実験装置の概念設計を行った。カイアシ類を含む様々な水棲生物が速度勾配に対してどのような行動が誘発されるかを実験的に調べることとした。そのために様々な速度勾配発生装置を設計することとした。ひとつは円形水槽の中心部の回転する剛体を配置するテイラークエット水槽である。この方式の装置は回転速度一定の場合、場所で速度勾配強度が決定できる点が有利である。水槽の流れにより流されているとしても好んで滞留する場所を探索できる。生物の位置検出には半導体レーザーを利用した遮光型の位置検出センサーを利用することとした。これにより位置検出の簡略化を達成することができた。 もうひとつの装置は速度勾配の時間変化に対する応答を調べるものである。すなわち、ピエゾ素子を利用したピエゾポンプを利用することとした。ピエゾポンプは入力された電気信波形に応じて、時間変化する水量を吐出できるポンプである。したがってパルス幅、波高強度を利用することで時間変化のある速度勾配をつくりだすことができる。この刺激に対する応答は高速カメラを利用して行動を計測する予定である。流速分布をシミュレーションするための流体計算のシミュレーションコードを入手した。 なぜ速度勾配検知応答特性が重要であるかというと、生物の未来予測能力に関係しているからである。これは感覚器から得られる情報を脳がどのように処理して応答するかについて行動観察から探る研究である。この研究により生物にとって脳という器官を獲得した意味について物理実験を通じて知ることができる
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まだに装置の概念設計が完了し、装置の開発に着手している。行動観察を当初はカメラを利用して行う予定であったが、半導体レーザーを利用した遮光型センサを利用することした。これにより実験の省力化を図ることができた。また研究の提案時は節足動物の1種のカイアシ類の速度勾配応答特性を調べる研究としていたが、それ以外の生物についても同様の実験をするべきだと気付いたのでいくつかの生物について同様の実験をする予定に変更した。 また速度勾配の時間応答を測定する装置として、過去の類似研究ではピエゾ素子を利用した水中で細線や球をを動かす研究がみられたが調査の結果ピエゾ素子を利用したパルスポンプが入手可能であったのでこれを購入した。その結果様々な理想的な流体力学信号を生物に刺激源として与えることが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は実験装置を完成し、実験に着手する。カイアシ類、フジツボ幼生、魚類などの速度勾配を検知し、応答できると考えられる生物を対象とし、定常状態での速度勾配選択特性を測定する。位置により速度勾配が異なる水槽を用意し、その水槽中での生物の行動をモニタリングする。実験の解析を簡素化するために、生物の位置を測定するのに半導体レーザーを利用した遮光型の位置検出センサーを利用する。生物が所定の位置に現れるとセンサーが反応して、トランジスタ出力を発生する。速度勾配の異なる複数の地点にセンサーを配置し、各センサーのトランジスタ出力を計数すれば速度勾配選択性を調べることができる。装置自体は簡単に制作できるので数100ミクロンのサイズの生物(カイアシ類を含む)から数mmの小魚までを対象に実験をおこなう。また速度勾配の分布は理論式とトレーサーの撮影により導出および測定する。また可能であれば速度勾配が徐々に変化する刺激装置を作成し、定常状態と非定常状態での速度勾配応答特性に違いがあるかどうかについて調べる。 またパルス状刺激に対する応答を調べることで、速度勾配応答の周波数依存性を知る。生物にとって応答できる周波数があるかどうかを探る。すなわちあまりに短いパルスは強度が強くても応答できないと考えられまたあまりにゆっくり変化する刺激にもの応答しずらいと思われるので、これらの実験を通じて速度勾配応答特性を明らかにする予定である。また実際に生物が感じた応力を計算により求める予定である。 この時間応答特性実験により実験対象生物特有の環境変化の周波数応答特性関数が得られる予定である。
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Causes of Carryover |
一部予定した機器が新型コロナウィルスの影響で入手困難となり次年度使用額が生じた。今年度の装置開発に利用する。
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