2019 Fiscal Year Research-status Report
強い衝撃波背後の鈍頭物体に対する亜音速逆方向ジェットによる熱防御システム
Project/Area Number |
19K04192
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大和田 拓 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40223987)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Hypersonic flow / Aerodynaic heating / counter flowing jet / film cooling / Shock wave / Turbulence / near-wall streaks |
Outline of Annual Research Achievements |
極超音速で航行する航空宇宙機の機体前方には強い衝撃波が形成されノーズや翼前縁は過酷な空力加熱を受ける。超音速ジェットの逆噴射はその動的軽減法として宇宙開発黎明期より研究されてきた。超音速逆噴射ジェットには多くの冷媒が必要で、閉鎖系である航空宇宙機の冷却法としてはこれがネックになって実用化の目処はいまだに立っていない。本研究では冷媒消費量の少ない亜音速ジェットを利用した冷却の可能性を探っている。しかし亜音速逆噴射ジェットは横断方向の流れに対し脆弱であり、迎角がわずかであっても棚引いてしまうという欠点がある。先行研究では高度30Kmをマッハ5で航行する飛翔体の翼前縁の亜音速逆噴射ジェットによる冷却を2次元NS方程式に基づき数値解析したが、亜音速ジェットの脆弱性はジェットを3本に分割することで解決された。迎角が5度までの範囲で冷媒は円柱前面部の全体にわたって流れ、KH不安定が生じるにもかかわらず90パーセントという高い冷却効率が達成された。しかし実際の3次元流れでは例えばKH不安定の2次不安定等の3次元不安定性が顕在化すること、それによって乱流遷移が生じ、乱流混合によって冷却効率が大幅に低下してしまうという可能性が危惧される。本研究では3次元の大規模計算を行い、冷却効率およびそれに影響を及ぼす3次元流れの構造を調べた。得られた結果を以下にまとめる。流れ場は種々の不安定現象を呈した。逆噴射ジェットのフラッピング、噴射口付近で冷媒のジェットが急激に曲げられることから生じるRT不安定性とそれに伴うKH不安定性、これより生じる渦が縦渦に成長して高温気体を壁面近傍へ巻き込むこと、剥離渦の形成とそこでの乱流へのバイパス遷移、乱流境界層の底部における縞状のストリークの形成等である。冷却効率は迎角が0度の場合は60%程度、迎角が5度の場合は40%程度まで低下した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
得られた結果はすでに学術論文にまとめられ、SpringerのOpen JournalであるAdvances in Aerodynamicsで近日中に出版される運びとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は数値計算法の研究を行う予定である。当初は研究代表者が先行研究で開発した5次精度高解像度スキームによるDNSを考えたが、計算資源および計算時間の関係上、ILES計算をせざるを得ないことが判った。計算量を削減するために精度を空間、時間共に2次精度に落としたが、高次の多項式を流体力学的変数の再構成に用いることで、Q値の等値面ではより詳細な流れの構造が捕らえられた。本年度は等方性乱流等の基本的問題でこの計算法の特性を詳しく調べてみようと考えている。
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Causes of Carryover |
研究室に大学より支給される運営交付金に余裕があったので、旅費はそちらから支給したことにより、次年度繰越金が生じました。これはラップトップコンピュータの購入に充てる予定にしています。
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