2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Extended BEM Method Which Includes the Rotor-Tower Aerodynamic Interaction of Downwind Turbines
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19K04195
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 茂雄 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (80620137)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 風力発電 / 風車 / ロータ / ダウンウィンド / タワーシャドウ / 翼素・運動量理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能な循環型社会の実現に向け,再生可能エネルギーの導入促進が不可欠である.特に,風力発電は発電コストが低く,エネルギー賦存量が大きいため,最も有望な技術の一つであるである.風車の設計においては,風や運転条件などの膨大な組み合わせのシミュレーションを行う必要があるため,ロータの空力計算には比較的計算負荷の低い翼素・運動量理論(BEM)が使用されている.しかし,この手法では,タワーやナセルなどの固定部との空力干渉のモデルを開発する必要がある. 本研究では,将来の風車の大型化・低コスト化,ならびに,日本の周辺海域に膨大なエネルギー賦存量が期待できる浮体式洋上風力発電用に有望視されるダウンウィンド風車の技術課題であるロータ~タワー間の空力干渉(RTI)を包含する拡張BEM理論を開発する.これは,従来のBEM理論に,揚力線理論やポテンシャル理論を統合した,これまでにない新しいロータ空力解析理論で過去数十年間のBEMの枠組みを転換させる画期的なモデルである.これにより,少ない計算負荷で精度のよい応答解析を可能とするとともに,個別の現象に対する形状,翼特性,運転条件などの代表的な設計パラメータの個別の影響を明らかにすることにより,設計へのフィードバックが可能とし,より競争力の高いシステムが実現させる. 本研究では,さらに,それを空力弾性解析ソフトに実装し,風車の荷重や性能に対する各種設計・パラメータの影響を評価するとともに,これらの空力干渉を考慮したダウンウィンド風車の設計指針を得る.さらに,国際エネルギー機関の国際共同研究プラットフォームIEA Wind, Task 40 Downwind Turbine Technologiesへ推奨方法案として提案を行い,社会的な普及・定着まで視野に入れている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RTIに関しては,動的なタワーシャドウの効果のモデルを開発した.従来の干渉モデルでは,ブレードがタワーの後流に進入する際と脱出する際の荷重変化を対称に扱っていたが,このモデルでは動的な空力特性により生じる進入時と脱出時の非対称性を考慮するものである.特に,このモデルでは,従来のモデルで模擬できなかった,侵入時に若干荷重が上昇してから減少に転じる現象を,当モデルでは模擬できるようにした.この結果は,先行研究における風洞試験(直径1m)結果で検証するとともに,スケール効果を明らかにし,実機スケールでの解析も行った.このモデルは,荷重の振幅が重要となる疲労荷重の推算において大きな効果をもたらすことが期待される.この成果は,学会(風力エネルギー利用シンポジウム),ならびに,国際ワークショップ(IEA Wind Workshop)で発表し,国際的な雑誌論文への投稿に向け原稿執筆中である. また,これに加えて,ダウンウィンド風車では,ロータの風上側にナセルがあり,これが気流,ひいては,ロータの空力特性に対して影響を与える.この,ロータ~ナセルの空力干渉に関しては,一般化BEMを応用したモデルを提案していたが,今年度はこれに関するCFDを実施した.その結果,定性的には,同モデルを裏付ける結果が得られており,国際的な雑誌論文への投稿原稿を執筆中である. 当初FY2021に計画していた空力弾性解析ツールの開発など, 2年目以降に実施する計画であった内容を前倒しで実施している. 計画では初年度(FY2019)に風洞試験を計画していたが,研究を進める中で,様々な現象や課題が見つかり,それらを整理した上で実施するのが適当と判断し,風洞試験を2年目以降に実施することとした. 以上を勘案し,概ね順調に推移していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 解析理論開発:初年度に開発した動的タワーシャドウモデル,ならびに,ロータ~ナセル(スピナ)空力干渉モデルについて,論文としてまとめて国際誌に投稿する.続いて,1)上記(a)(b)によるタワー荷重に整合するタワー後流の風速分布のパラメータの関係(幅,流速欠損分布など)を求める.2)翼弦長の影響を考慮するため,揚力(BEMでは点で代表)を複数の循環でモデル化する.3)ブレードの動的失速をモデル化する. (2) 検証:前項のモデルをCFDと風洞試験で検証する.風洞試験は,九州大学応用力学研究所大型境界層風洞を利用し,ロータ~タワー離隔距離などの条件で試験を行う.計測項目として,ロータ荷重,タワー表面の圧力,タワー・風車後流風速分布,PIV流速分布を計画している.検証手順を以下に示す.1)タワー単独の試験で,タワー圧力分布・抗力とタワー後流の風速分布を計測する.2)ロータ単独での試験で荷重と風車後流風速分布を計測し,ロータ荷重分布を求める.3)ロータ・タワーの試験で,タワー圧力分布による抗力とCFDで本解析法を検証する.4)同じく,ロータ荷重とCFDで本解析法を検証する. (3) 空力弾性解析ソフトの開発:1)風車のオープンソースの空力弾性解析ソフトに(1)のRTIモデルを実装する.2)同手法を用いて設計における翼弦長,タワー直径,ロータ~タワー離隔距離,ロータ速度等の主要な設計パラメータの影響を明らかにする.2年目:解析理論開発,風洞試験,CFD,3年目:空力弾性解析ソフトの開発,パラメータ影響評価,推奨方法案作成.4. 達成目標 1)数値モデル:解析精度±10%以内(風洞試験比),解析時間+50%未満(従来BEM比).2)理論の開発:国際ジャーナル査読付論文2件.3)推奨方法案:IEA Windに推奨方法案を提出.
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Causes of Carryover |
当初,風洞試験模型を3Dプリンタにより製作する予定であったが,別件を優先的に実施した方が有効と考え,次年度使用とした.圧力計(高速多点圧力スキャナー)は予定通り購入したが,気流の可視化に使用するPIVプローブは販売停止になっていたため,試験実施前に自作することとした.以上により,差額の763,100円を次年度使用とする.
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Remarks |
(1)IEA Wind Task 40のホームページ. (2)九州大学応用力学研究所の共同利用研究の採択情報.報告書は未掲載.
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