2019 Fiscal Year Research-status Report
音波共鳴管実験と分子気体力学に基づく非平衡状態下での蒸発係数測定法の開発
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19K04202
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
中村 篤人 奈良工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (80619867)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 相変化 / 蒸発係数 / 凝縮係数 / 音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,申請者が開発した共鳴音波を用いた蒸発係数測定法を基盤として非平衡状態下における蒸発係数測定法を開発することである.蒸発係数は,分子気体力学の境界条件,気体論境界条件に含まれる未知パラメータであり,蒸発係数を求めることで,気体と液体の界面において,どれだけの質量,運動量,エネルギーが交換されるのか,正確に求めることが可能となる.従って蒸発係数が決定されることで,熱交換器,薄膜形成,キャビテーションなど,工学分野への直接的な貢献はもちろん,異常気象,環境問題など,本研究による成果は幅広い分野に応用可能である. 今年度は初年度ということで,研究計画に基づき,実験装置として使用している音波共鳴管内の音場の精密測定に取り組んだ.音波共鳴管は音源,受信器と同程度の内径を有する円管により構成されている.これまで圧力センサや,レーザ変位計を用いて,共鳴管内の音場測定を試みてきたが,これらによる測定は蒸発係数測定と同時に行うことができず,また,音源の振動状態は周囲温度,周囲圧力状態により変化することが判明したことから,改めて共鳴管内の音場を精密に測定する必要性が生じた.共鳴管内の音場測定には当初,複数のニードル型マイクロホンによる測定を予定していたが,マイクロホンが試料蒸気にさらされることによるマイクロホンへの影響等,予定していた方法への懸念が生じたことから,試料液膜を形成した状態で音源を駆動させ,共鳴管内に定在波を形成し,圧力計を用いて複数位置での音圧を測定する方法へ変更することとした.この測定方法の変更に伴い,既存の実験装置の改良が必要となったことから,改良方法の検討に取り組み,実験装置の改良については一定の目途が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共鳴管内の音場の精密測定について,当初,複数のニードル型マイクロホンによる測定を想定していたが,蒸発係数測定実験は試料物質の飽和蒸気圧下で行うことから,水蒸気下であれば,高湿度下にマイクロホンがさらされることとなる.検討の結果,このような状況下におけるマイクロホンの使用が困難であることが明らかとなったことから,圧電素子を使用した,圧力計による測定と数値計算を組み合わせて,共鳴管内の音圧分布を求める方法に変更することとした.しかしながら,この方法で測定するためには既存の実験装置を改良することが必要となり,改良方法の検討に取り組んでいたため,共鳴管内の音場測定が遅れている状況である.なお,実験装置の改良方法については一定の目処が立ったことから,今後,改良作業と音場の測定実験に順次取り組んでいく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
現在問題となっている,共鳴管内の音場測定については圧力計を用いて,共鳴管内で圧力計の位置を細かく制御し,各位置における音圧を測定することで,共鳴管内の音場を求める方法に変更することとした.これまで,測定方法を変更したことによる実験装置の改良について検討を行っていたが,概ね改良方法についての目処が立ったことから,実験装置の改良作業に取り組んでいく.改良作業が完了次第,音場の測定実験に取り組む.併せて,今年度の実施予定項目である,実験に対応する理論解の構築にも取り組む.現在の蒸発係数測定法には,分子気体力学に基づき,蒸発,凝縮の影響を加味した線形理論解を用いているが,平面音波の形成,平衡状態の実現,など,様々な仮定があることから,実験条件との乖離が生じている.そのため,理論面を改めて見直し,弱非平衡状態,非平面波条件に対応可能な理論解を導出する.具体的にはBoltzmann方程式(ES-BGKモデル)を数値解析により,直接計算し,実験装置を模擬した計算領域内の音場を求める.数値解析を行うことにより,実験装置内の温度の不均一性,装置内の音波が平面波ではない場合や音源周囲の隙間の影響等を考慮することができ,理論解を実験条件に近づけることができると考える.
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Causes of Carryover |
(理由) 共鳴管内の音圧分布を測定するために,ニードル型マイクロホンの購入を予定していたが,マイクロホンの利用が困難と予想され,音圧分布測定方法を変更したことから,研究費の執行計画に変更が生じた. (使用計画) 音圧分布の測定については,圧力計を用いた方法に変更して行うこととする.この変更に際して,実験装置の改良が必要となったことから,マイクロホン購入に予定していた研究費は実験装置改良費用に充当したいと考えている.
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