2019 Fiscal Year Research-status Report
流動誘起構造を有する複雑流体の伸張粘度を計測する平面伸張レオメーターの開発
Project/Area Number |
19K04203
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
加藤 学 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 准教授 (20370017)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 平面伸張レオメーター / 平面伸張粘度 / 定常粘弾性試験 / 動的粘弾性試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,流動誘起構造変化後の伸張粘度を評価することのできる伸張レオメーターを開発する.この手法は,平行リング間に試験流体を充填しリングを引き離すことで円筒状フィルムを成形し,その際の膜厚変化および平面伸張応力を計測するシステムである.本年度は,① 平行リングを用いた円筒フィルム成形とフィルム膜厚計測装置システムの構築,② 円筒フィルム成形のための平行リングに作用する力の計測装置の追加,を行った. フィルム膜厚計測システム:粘弾性流体を円筒状に伸張しフィルムを作る装置を作成した.この装置にKeyence社製の膜厚計測器を設置して,膜厚の時間変化の測定を試みた.膜そのもののや位置を安定させるための試行錯誤を行なった結果,膜厚が変化する様子を捉えることができた.しかしながら,計測器の下限を下回るために安定した計測ができなかった.そのため膜厚を厚く保つ工夫が必要であることを確認した. フィルム成形時の平行リングに作用する力の計測:一対の平行リングを用いて,試験流体を円筒状にを伸張させる装置に,ロードセルを設置し伸張時のリングに作用する力の計測を行なった.力の計測結果より, 伸張応力と伸張粘度の算出を行った.伸張速度を一定に保った測定では,伸張力ピーク値は伸張速度と依存関係にあることが確認された.伸張速度を周期的に変動させた測定では, 振動振幅を固定して周波数を変化させた場合,伸張力の振幅は振動振幅と周波数の積に依存していることを確認した.さらに,振動振幅と周波数を固定して, 初期ギャップのみを変化させた場合には伸張力のピークが減少することを確認した.それぞれの方法で得た結果より平面伸張粘度の評価を行ったところ,定性的にはせん断粘度と同様にひずみ速度と共に粘性係数が減少する特徴が得られた.また,伸張速度一定の場合と振動させた場合とで,伸張粘度はほぼ同等の値が得られることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で鍵となるのは,流体に伸張変形を加える方法とその際の伸張力計測と膜厚の計測である. 平行リングを用いて試料を円筒状に平面伸張変形させる手法は有効であることを確認した.2枚の平行リングに試料を充填し,リング間の距離を指数関数的に大きくして試料に伸張変形を加えることに成功した.また,リング間隔を正弦的に変化させて,動的に変動する平面伸張変形を試料に加えることも成功した. 力の計測については,計画通り実施することができた.伸張力変形の条件を変えると,初期条件および変形速度から計算できる伸張速度に依存した結果が得られており,順調に進んでいる.当初,この年度では予定していなかった動的に変動するひずみ速度を加えた際の計測も可能であることが確認でき計測の幅を大きく広げることができた.他方,膜厚の計測は計測結果が得られるものの,安定して計測することが非常に難しいことがわかった.計測は,伸張変形中の膜厚の変化と伸張変形後の膜厚の変化の両方について計測を行った.実験当初は,膜を安定的に得ること自体も困難であったが,実験条件を工夫することで徐々に膜の安定性は向上した.膜厚の計測は,センサー側の界面の検出はかろうじて可能であったため,センサーヘッドを二つにしての計測を試みたが解決には至っていない.膜厚をミリオーダーにするために円筒リング形状についての工夫や試料の粘度についての検討が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,以下の2点について重点的に進める. ・動的伸張流動下での膜厚計測の検討:平行リング間隔を正弦的に変化させた状態での力の計測が可能出ることが確認された.動的伸張流動であれば,膜厚を数ミリ程度に保ったままでの実験が可能である.平行リング形状および試験流体の粘性係数を変化させながら膜厚計測可能となる実験条件を模索する. ・プレシアを加えた際の伸張変形に対する力の応答:伸張変形させる前にせん断変形を加えることで試験流体に流動誘起構造を生じさ,その際の伸張変形に対する力の応答を測定する.このプレシアを加えるに平行リングの下部リングを回転させる機構の追加する.本年度は,この機構の設計,製作および予備実験までを計画している. 加えて,膜厚計測については予想以上に困難であることがわかってきた.他方で,動的平面伸張状態での力の計測が行えることが確認できた.動的平面伸張変形においては,振幅を適切にとれば膜厚の変動の予測が可能であることから,膜厚に関するデータがなくても伸張粘度の評価ができる可能性がある.膜厚計測がうまくいかなかった場合でも,本研究の目的が達成できるような測定手法についても検討する.
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Causes of Carryover |
・膜厚の計測が予定よりも進まなかったのが要因です.膜厚計測に目処がついたのちに,取り付け用に新たな光学機器や計測・制御用のソフトウェア・ハードウェアの購入を予定していたため,全体として後ろへ移動となりました. 2020年度は,動的平面伸張流動での測定を進めていくために,昨年度分と合わせて,予定していた光学機器および計測・制御用ソフトウェア・ハードウェア購入をする計画です. ・計画では,下部リングの稼働装置を追加するので,こちらのハードウェア(ステッピングモーター,制御ドライバ等)についても順次購入して進めていく予定です.
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