2020 Fiscal Year Research-status Report
微量化学種の導入による非定常噴霧燃焼空気エントレインメントの高応答制御
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19K04208
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小橋 好充 北海道大学, 工学研究院, 助教 (80469072)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 噴霧燃焼 / 空気導入 / 圧縮着火 / オゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
非定常噴霧の自着火燃焼を実現する熱機関において,有害排出物質の低減と高熱効率化の両立は重要な課題である.本研究では,噴霧火炎内への空気導入量を高応答に制御する手法を構築することで,この課題解決を試みている. 噴霧火炎の主たる空気導入部は,燃料噴射ノズルから燃焼が生ずるまでの非燃焼区間である.この区間長を制御するため,非平衡プラズマにより容易かつ高応答に生成可能なオゾンをレシプロ機関の燃焼室に導入した.オゾンは圧縮行程の高温場で分解し,活性の高い酸素ラジカルを生成するため,その分解前に燃料を燃焼室内に直接噴射して,酸素ラジカルと反応させ,その一段目燃料の発熱量を制御することで,その後に直接噴射する二段目燃料の非燃焼区間長を変化させた. 初年度と同様,実験には単気筒ディーゼル機関を用い,主燃料は低着火性のガソリン系燃料(オクタン価90の標準燃料)とした.図示平均有効圧力も初年度と同等の700 kPa程度としたが,2年目は排気再循環を行い,吸気酸素濃度を15%とし,さらにスス生成が顕著となる条件において実験を行った.その結果,低吸気酸素濃度条件においては,オゾン添加量および一段目噴射量に対し,より顕著に噴霧火炎内への空気導入量が変化することが明らかとなった.さらに,二段目噴射燃料が失火しない範囲で噴霧火炎上流の非燃焼区間を拡大することにより,排出黒煙濃度が著しく低下し,低温燃焼による冷却損失の低減効果とあいまって,ディーゼル機関に匹敵する高熱効率を実現しつつも,クリーンな排ガスが達成できることを実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで既に,微量化学種として,供給量の高応答制御が可能であり,着火促進剤として有効なオゾンを選定している.さらに,レシプロ機関の圧縮行程においてオゾンが分解する前に一段目噴射を行えば,メイン噴射となる二段目噴射の噴霧火炎上流の非燃焼区間を制御可能であり,その噴霧内への空気導入量を変化させ得ることを明らかにしている.加えて,低着火性のガソリン系燃料と低吸気酸素濃度条件を組み合わせることで,ディーゼル機関に匹敵する高熱効率を実現しつつも,クリーンな排ガスが達成できることを実証している. したがって,おおむね順調と評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,これまでの単気筒ディーゼル機関における実験結果を整理して,二段目噴射の非燃焼区間長と密接な関係にある一段目噴射燃料の発熱に影響を及ぼす因子を明らかにする.基本的にはオゾン添加量および一段目噴射量が主たる影響因子であるが,両者の寄与度が不明であり,さらに窒素酸化物が多量に吸気へ還流される条件では,不規則な変化が得られているため,これらの点を解明する. また,これまでは図示平均有効圧力700kPa程度の中負荷運転のみを実験条件としたが,本制御手法の燃料噴射量依存性を明らかにし,運転負荷に応じたオゾン濃度と一段目噴射量を示すために,最終年度は運転負荷を変更した実験を行う.
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Causes of Carryover |
当初の想定よりオゾン生成に要する酸素量が少なく,結果的に酸素ガスの購入費が安価に済んだ.次年度はこの残額を有効に利用して,より広範な条件において実験を行う予定である.
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Research Products
(2 results)