2019 Fiscal Year Research-status Report
ソフトな有機表面材料によって発現する界面親和性に関する分子論的メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K04209
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊川 豪太 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (90435644)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱工学 / 分子動力学 / 界面親和性 / 有機分子修飾膜 / 輸送特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,分子動力学シミュレーションを用いて,SAM有機分子薄膜を初めとしたソフトな分子修飾表面と液体界面における界面自由エネルギー・付着仕事の定量的評価手法の確立を行うことを目指し研究を行っている. 2019年度においては,接触角による界面親和性の評価を行った.典型的なアルカンチオールSAMと水の界面において,SAM末端の官能基を親水性および疎水性の末端とした時の接触角を精確に測定した.複数初期状態から異なる液滴サンプルを用いて接触角を比較した結果,接触角自体には有意な差は見られなかったものの,系の相互作用エネルギーには有意な差が見られた.これは,界面がソフトな特性を持つことにより,ピニング効果など液滴接触状態が分子スケールで異なっていることが示唆される. また,界面親和性と関連する界面熱輸送特性について新たな解析手法を構築した.計算セル内に設置した検査面に対する熱流束表現(MoP)に矛盾しないスペクトル分解手法を提示し,これを用いてSAM内部の熱流を周波数成分に分解した.この結果,構造秩序性が高く,固体的な振る舞い(格子振動)をするSAM内部では,特徴的な分子振動の周波数領域でエネルギーの交換が強く行われていることがわかった.また,より低い周波数領域において,熱輸送のほとんどが行われていることが明らかになった.これらの結果は,これまで結晶構造を持つポリエチレン(アルカン鎖)において得られている結果と矛盾しない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SAM表面の液滴接触について,分子動力学シミュレーションのモデリングから接触角解析に至るまで,高精度に評価する手法の確立に成功しており,この点は順調に進捗している.しかしながら,界面自由エネルギー評価のシミュレーションについては,現在も方法論の構築を行っているところである.親和性評価に関与する熱輸送特性の解析については,順調に進んでおり,今後も継続して研究に取り組んでいきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は界面自由エネルギーの直接評価を行う手法の構築を進める.まず,液滴接触の系において相互作用エネルギーを詳細に分析し,前年度に得られた異なるサンプルに対するエネルギー差の要因を明確にする.また,相互作用エネルギーとナノ液滴の接触状態との関係を明らかにするため,液滴接触状態での界面付近の力学的特性を解明する.さらに,力学的に得られる界面付近でのSAM内部や液滴のミクロな応力分布と,熱力学的に得られる界面自由エネルギーの情報を統合することで,Youngの式が成立するか,また成立しない場合はその要因を明らかにする.
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Causes of Carryover |
購入を予定していた消耗品(記録メディアなど)について,当該年度で購入する必要性がなくなったため次年度使用額が生じた.これについては,研究の進捗に伴い次年度以降に必要となるため,執行する予定である.
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