2020 Fiscal Year Research-status Report
ソフトな有機表面材料によって発現する界面親和性に関する分子論的メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K04209
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊川 豪太 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (90435644)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 熱工学 / 分子動力学 / 界面親和性 / 有機分子修飾膜 / 輸送特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,分子動力学シミュレーションを用いて,SAM有機分子薄膜を初めとしたソフトな分子修飾表面と液体界面における界面自由エネルギー・付着仕事の定量的評価手法の確立を行うことを目指し研究を行っている. 2020年度においては,液滴接触状態における詳細な界面の相互作用エネルギーや局所応力テンソルの評価を行った.典型的なアルカンチオールSAMと水の界面において,SAM末端の官能基を疎水性末端とし,複数の液滴接触状態を初期構造として作成した.異なる液滴サンプルを用いて局所領域における界面の相互作用エネルギーを測定した結果,界面間の分子間相互作用にはサンプル間での明確な差異はなかったが,SAM分子内相互作用には大きな差が生じた.これは,界面がソフトな特性を持つことにより液滴接触状態におけるSAM側の歪みの状態が異なっているためであると考えられる. また,検査面における応力テンソルの表現(MoP)を用いて,局所領域における応力場を算出した.これによって,液滴接触状態での界面付近の応力状態を明らかにできる.3相接触線付近に設けた検査体積における応力の表面積分から,SAM表面における液滴に作用するピニング力を定量化した.その結果,ピニング力は,解析における系統的誤差より小さい大きさを持つことから,今回実施した疎水性SAM表面においては,明確なピニングを生じておらず接触角に対する影響は小さいと考えられる.この結果は,比較的表面の乱れが少ない100%のSAM被覆密度が要因であると考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SAM表面の液滴接触について,分子動力学シミュレーションのモデリングから接触角解析,局所応力解析に至るまで,高精度に評価する手法の確立に成功しており,この点は順調に進捗している.界面自由エネルギー評価のシミュレーションについては,今後実施していく予定である.これら液滴接触系における応力場の情報と自由エネルギーの解析を融合して,ソフトな界面における界面親和性の描像を明らかにしたい.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は界面張力・界面自由エネルギーの直接評価を行う手法の構築を行う.まず,液滴接触の系においては,異なるSAM表面特性,すなわち,疎水性や親水性末端,それらが複合した表面や,被覆率が低く表面粗さが存在する場合のピニング状態についても明らかにする.また,界面自由エネルギー の解析結果を併せ,ソフトな界面における界面親和性の物理的描像を明らかにする.特に,従来のマクロな液滴接触系で考えられているYoungの式が成立するか,また成立しない場合はその要因を明らかにする.
|
Causes of Carryover |
予定していた消耗品(記録メディアなど)や旅費について,当該年度で使用する必要性がなくなったため次年度使用額が生じた.これについては,研究の進捗や研究遂行上の必要性に応じ,次年度に執行する予定である.
|