2019 Fiscal Year Research-status Report
多孔質粒子層を用いたパッシブ水素生成器のスケールアップ手法の開発
Project/Area Number |
19K04212
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
奥山 邦人 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (60204153)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱工学 / 多孔質粒子層 / 水素生成 / メタノール / パッシブプロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
触媒を担持した多孔質粒子の充填層反応管の下端をメタノール液に浸して含侵させ管表面から加熱すると, 乾燥域(温度上昇域)における触媒反応と気液二相域(蒸発域)の毛管作用により水素を含むガスが発生するようになり, 化学再生によるエネルギー変換プロセスの高効率化などに資する。しかし, 処理量の増大とともに管径が大きくなると, 反応温度に達した乾燥域の内部に温度の低い蒸発域が入り込んだ二次元分布をもつようになり, プロセス効率は著しい低下する。本研究はこのようなパッシブ型反応器における二次元分布過程を含む熱流体現象について実験及び理論解析を行い, プロセス効率を低下させることなくスケールアップするための設計の指針を構築することを目的とする。 本年度は, 反応管直径を増加させた際の(a)液体予熱域,(b)蒸発域(気液二相域),(c)反応域(乾燥域)の形成状態を, 充填層内温度分布を測定することにより実験的に調べた。管内径は5.6 mm~21.0 mm, 多孔質粒子に活性アルミナ粉末(平均粒径120 マイクロメートル, 及び890 マイクロメートルのもの)を用い, 層内温度分布を詳しく測定した。その結果, 最大直径まで増加させるとようやく乾燥域と気液二相域が半径方向に共存する顕著な二次元分布を形成するようになること, また乾燥域と液体予熱域では半径方向に大きな温度降下が生じるのに対し, 気液二相域(等温域)は半径方向に大きく拡がり, 二次元効果を生じにくい傾向があることが明らかとなった。また二次元効果の原因について多孔質内特有の二相流現象に基づいて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
充填層内の二次元温度分布の測定から, 3領域の形成位置や分布を明確に判別することができた。その結果, 毛管力と乾燥域における蒸気の摩擦圧力損失との釣り合いが乾燥域の拡がりに支配的となる平均粒径120 マイクロメートルの小さな粒子(充填層の透過係数9.0×10-12 m2), また毛管力と重力の釣り合いが乾燥域の拡がりに顕著に影響する平均粒径890 マイクロメートルの大きな粒子(充填層の透過係数200×10-12 m2)のいずれにおいても, 加熱量の増加とともに, 反応管上端(蒸気出口)から下方に向かって反応域, 蒸発域, 液体域が順に形成し, 気液二相域は管半径全体に拡がろうとする傾向が強く, 他の領域と半径方向に隣り合う二次元分布を生じにくい傾向があることが明らかとなった。このように半径方向に気液二相域が拡がり易いのは, 半径方向に気液対向流が生じ, ヒートパイプ効果により半径方向に効率的に熱が輸送されたためと推察される。蒸発域(気液二相域)では加熱により管下方から上方に向かって局所の液体含有率(液体飽和度ともいう)が減少し, 増進された毛管力により, 液と発生した蒸気の共に上方に向かう流れが誘起されるが, 管径が大きく中心軸付近まで液体予熱域が入り込んだ状態になると, 発生蒸気は管軸に沿って流れると同時にその一部が半径方向にも流れ, 下端から吸引された液体の予熱にその潜熱を放出し液となって加熱面に戻る循環流を形成していることが推察された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験的検討から, 充填層管直径が増加し(原料処理量の増加に対応して断面積10倍程度までを想定), (a)液体予熱域, (b)蒸発域(気液二相域), (c)反応域(乾燥域)の3領域が, 管軸方向だけでなく半径方向に分布する場合においても安定して形成し, 液体と蒸気が安定して流入・流出することを, 粒子特性の大きく異なる多孔質粒子を用いて, 加熱量を変化させた実験から明らかにしてきた。次のステップとして, 2020年度は, 触媒を多孔質粒子に担持し, 実際に反応を生じる系において実験を行い, 二次元分布が反応に及ぼす影響について検討を行う。原料処理速度と反応収率について実験によりその特性を明らかにし, それらの反応域と蒸発域の分布状態,温度分布との相関について検討する。また研究代表者がこれまで行ってきた一次元流れの気液二相流数値解析モデルを二次元に発展させ理論解析を行って反応収率を律速する要因とパラメータを明らかにする。2021年度は, 反応管直径の増加とともに, 液相域, 蒸発域, 乾燥域が二次元的に分布することにより蒸発量や反応収率が減ってしまう事象を抑制し, 加熱量に応じた蒸発量の増加とプロセス制御性と効率向上を図るため, 3領域それぞれに適した異なる特性の多孔質粒子を配置した複合粒子充填層を用い, 特に管直径に対する効果を実験及び理論解析により確かめる(大直径(層厚大)においても二次元分布を生じない条件を明らかにする)。 以上を通して, 原料処理量の増大に対応して充填層が層厚になった場合においても, 加熱量に応じた蒸気量を生成しつつ, 水素をより効率よく得るためのスケールアップの考え方, パラメータ, 手法を明らかにし, 設計のための指針を構築する。
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