2020 Fiscal Year Research-status Report
低速プレイグニッションの化学反応過程を明らかにする
Project/Area Number |
19K04214
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
酒井 康行 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (70511088)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 低速プレイグニッション / カルシウムスルホネート / 反応機構 / 量子化学計算 / 反応速度定数 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子化学計算,化学反応速度論計算,0次元燃焼計算を駆使して,ガソリンエンジンの熱効率向上を阻む低速プレイグニッション発生のメカニズムについて考察する.具体的には,潤滑油添加剤であるカルシウムスルホネートの熱分解生成物を同定し,熱分解生成物の気相燃焼反応機構,ガソリンと熱分解生成物の混合気体のエンジン環境下における自着火メカニズムを明らかにする.本課題で得られた学術的知見は,燃焼反応機構という形でモデル化を行い,CAEを活用した高効率エンジン開発への貢献などに期待される.2020年度はエンジン筒内を模擬した温度・圧力下における0次元の燃焼計算を行い,活性種や発熱が自着火に与える影響を考察した.初期温度360 K,初期圧力1.9 atm,圧縮比10,回転数1000 rpm,当量比1の条件下での燃焼場を想定し,クランクアングルが-135~90度の間のイソオクタンの自着火過程の計算を行った.クランクアングルが-10度に達する前に着火してしまうと,プレイグニッションの条件に満たすと仮定した.温度衝撃が約200 K以上の時にクランクアングルが-10度前に着火になるため,200 K以上の温度衝撃を与えると,プレイグニッションに至る熱源になると考えた.また,クランクアングルが-70度の時,104,208,416,832,1664,3328 ppmのOHラジカル濃度を混合した.添加したOHラジカルの濃度が約2000 ppm以上になると,クランクアングルが-10度前に着火するため,2000 ppm以上のOHラジカル濃度衝撃を与えると,プレイグニッションに引き起こす可能性があると考えられる.しかし,2000 ppm以上のOHラジカル濃度は相当大きな量であるため,この局所的な活性種の高濃度が筒内の燃焼に影響を与えるか否かはさらなる考察が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は,量子化学計算,化学反応速度論計算,0次元燃焼計算を駆使して,ガソリンエンジンの熱効率向上を阻む低速プレイグニッション発生のメカニズムについて考察する.具体的には,以下に記す5つの問いに対して分子レベルから回答することが目的である. Q1.カルシウムスルホネートの熱分解生成物の内訳、Q2.熱分解生成物の気相中での燃焼反応機構、Q3.熱分解生成物はガソリンの着火を誘発するのか、Q4.高過給,低回転,高負荷条件でLSPIが発生する理由、Q5.ガソリンの種類はLSPIの発生に関係するのか 2020年度はQ3を達成目標とした.研究実績に記したように,0次元の定容燃焼計算により活性種や部分的な発熱がガソリンサロゲート燃料の着火を誘発するのか考察を実施した.したがって,おおむね順調と評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はQ4とQ5について考察する.具体的な計画は以下の通りである. Q4.高過給,低回転,高負荷条件でLSPIが発生する理由(2021年度上半期):燃焼反応モデルを利用して,エンジン筒内を模擬した0次元のエンジン筒内における燃焼計算を実施する.吸気ガスの初期温度および圧力,当量比,エンジン回転数,圧縮比,熱分解生成物の混合タイミングと量を変化させたガソリンの燃焼計算を行い,熱分解生成物混入による自着火タイミングの変化について考察する.LSPIの発生メカニズムの解明を目的とするため,断熱条件下における圧縮,膨張行程に単純化する.ただし,油滴の蒸発潜熱による局所的な温度降下は考慮する. Q5.ガソリンの種類はLSPIの発生に関係するのか(2021年度下半期):低温酸化による発熱の有無に着目して,ガソリンの種類がLSPI発生に与える影響を考察する.ガソリンの種類は,初期組成の与え方を変えることにより,低温酸化発熱量を調整する.燃焼計算の手法や考察方法はQ4と同様の手法をとる.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により旅費を使用しなかったこと、消耗品費の使用が少なかったために次年度使用額が生じた。この額と翌年度分を合わせて、今年度の課題となったエンジン筒内のシミュレーションに必要なソフトウェアを購入して、当初計画の0次元計算だけでなく3次元計算に着手することにより、アウトプットの質を向上させる。
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