2020 Fiscal Year Research-status Report
機能表面による気泡の捕獲・輸送・生成技術の構築と混相熱流動機構の究明
Project/Area Number |
19K04217
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
北川 石英 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (80379065)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 対流熱伝達 / 混相流 / 機能表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
気泡は機械・船舶・医療など幅広い分野で利用されており,多くの場合,壁面近傍の気泡挙動が気泡を利用した機器性能に直接的影響を与える.このため,壁面近傍の気泡挙動の制御は,気泡利用効果の飛躍的な向上に直結する.本研究では,表面性状が部分的に異なる「機能表面」を利用した気泡の捕獲・輸送・生成技術を構築,及び利用時における混相熱流動機構の究明を目的とし,研究①「自然対流気液二相流」,研究②「水平チャネル内気液二相流」を対象とした実験を行った.研究①:局所的に表面の濡れ性が異なる鉛直加熱平板に沿う自然対流気液二相流の熱流動特性を解明するため,機能表面の撥水部の長さ L が L = 0, 2, 8 mm の条件のもと,温度計測,速度計測および二次元数値解析を行った.その結果,L = 8 mm の場合の液体上昇速度と壁垂直方向の液体変動速度の RMS は L = 0 mm のそれらに比して高くなるため,気泡群による移流効果および混合・かくはん効果が増大した.特に,L = 0 mm の場合に比して,L = 8 mm の場合の液体の混合・かくはん効果の熱伝達への寄与割合は高くなった.これは,撥水部への気泡の付着による伝熱面近傍での気泡存在頻度の増加と撥水部での気泡の合体による気泡径の増大に起因する.研究②:レイノルズ数 Re が 2000 ≦ Re ≦ 7000,撥水面配置角度φが 15≦φ≦60°の条件のもと,部分的に異なる濡れ性を有する機能表面を利用した場合の気泡輸送率を計測した.その結果,超撥水面を有する機能表面を利用した場合では,φ = 15, 30°,2000 ≦ Re ≦ 7000 の条件において,全ての移流気泡の輸送に成功した.また,撥水面に付着する単一気泡の前進および後退接触角を計測することにより,乱流場における壁面付着単一気泡に対する抗力係数を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究①「自然対流気液二相流」:機能表面の撥水部の長さ L が L = 0, 2, 8 mm の条件のもと,温度計測,速度計測,およびデータ同化を利用した二次元数値解析を実施し,伝熱促進に対する寄与度を明らかにすることができた.研究②「水平チャネル内気液二相流」:レイノルズ数が 2000~7000 の6条件,撥水面の配置角度が 15, 30, 45, 60°の4条件に対して,高速度カメラを利用した気泡輸送率の計測を行い,移流気泡の捕獲・輸送効果を確認することができた.研究③「マイクロチャネル内固気液三相流」:ディーン渦を利用したマイクロ粒子の捕獲手法を新たに考案したが,製作及び実験の実施には至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究①「自然対流気液二相流」:伝熱板に沿う自然対流気液二相流の速度・温度計測,およびデータ同化を利用した二次元数値シミュレーションを行う.具体的には,光複合計測技術・マイクロ熱電対を組み合わせた,液体速度・気泡位置・気泡速度・気泡径と伝熱面表面温度の同時計測,そして,速度計測データを組み込んだ数値シミュレーションを行う.研究②「水平チャネル内気液二相流」:広範囲のレイノルズ数に対して,機能表面を利用した気泡捕獲実験を行う.具体的には,レイノルズ数が 2000~10000の9条件に対して,高速度カメラを利用した気泡分布測定を行い,気泡輸送が可能な条件を明らかにする.研究③「マイクロチャネル内固液二相流」:ディーン渦の発生が可能なマイクロチャネルを製作し,顕微鏡を利用した粒子捕獲率の計測を行う.具体的には,流路の拡大・縮小率,粒子サイズ・濃度に対して,粒子捕獲率を評価する.
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Causes of Carryover |
理由:①データ同化シミュレーションのための高精度速度結果を取得するため,実験を繰り返し実施した結果,初年度に作製した伝熱板が極度に劣化した.これに伴い,次年度は新たな伝熱板を作製するため,その費用として追加の使用額が生じた.②ディーン渦を利用したマイクロ粒子の捕獲手法を新たに考案し,粒子群の効果的な捕獲と長期間の保存が可能なマイクロチャネルを設計した.表面濡れ性を変化させるための表面修飾を視野に入れ,設計案をもとに様々なタイプのマイクロチャネルを新たに製作するため,その費用として次年度追加の使用額が生じた. 使用計画:前年度の未使用金を,伝熱板の作製に必要な「熱電対」・「ステンレス箔」・「アクリル板料」」などの購入,そして,マイクロチャネルの作製に必要な「シリコンポッティング材」・「シリコンウェハー」などの購入に使用する.
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Research Products
(4 results)