2019 Fiscal Year Research-status Report
冷温保存における細胞障害に及ぼす能動輸送停止回避の影響と疎水性ガス加圧溶解の効果
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19K04222
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
氏平 政伸 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (70286392)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞の冷温保存 / 能動輸送停止の回避 / 電気インピーダンス計測 / キセノンガス加圧溶解 / 細胞障害低減効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は次の2つである.1)電気インピーダンス計測による細胞試料の冷温保存中の能動輸送停止に伴う電解質バランス喪失の検出方法を確立し,能動輸送停止の境界温度を探し出す.2)冷温保存における細胞の能動輸送停止の有無と,細胞障害との関連性と境界より高い温度における疎水性ガス加圧溶解の有効性を究明する. 方法を次に記す.実験にラット心臓横紋筋細胞を用いた.電気インピーダンス測定に電極付きチャンバ(購入品)を,疎水性のXeガス加圧溶解実験用に培養皿を用い,底面に細胞を24h単層培養し試料とした.また,保存液として培養液を用い,保存後の細胞生存評価にはテトラゾリウム塩を用いた.1)電気インピーダンス計測による能動輸送停止の検出: まず,電極付チャンバ試料の電気インピーダンスの計測システム構築を行った.測定条件が特殊なため,LCRメータ(当初の申請設備)の購入使用は止め,専用回路の外注試作(研究協力者の根武谷吾氏の協力)に変更した.次に,庫内で細胞試料の4,6℃保存中の電気インピーダンス(10,100kHz;電流0.01mA)の時間依存性を調べ,各保存時間の細胞生存を評価した.2)Xeガス加圧溶解の効果: 試料を耐圧容器に入れ4~8℃(1℃刻み)で6,12,24h冷温保存した.次に,別の試料にXeガスを0.5MPaで加圧溶解し,4,6℃で24h冷温保存し保存後の細胞生存を評価した. 本年度の成果は次の通り.電気インピーダンス測定と細胞生存率評価の結果から,ラット心臓横紋筋細胞の冷温保存における能動輸送は6℃付近で停止が回避されることが示唆され,能動輸送が停止すると思われる温度では時間に依存して電気インピーダンスが急激に低下する傾向となった.また,能動輸送が停止しないと思われる温度では細胞生存率が比較的高くなり,しかも,Xeガス加圧溶解による細胞障害低減効果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画と照らし合わせて以下の3点が挙げられる. 1.電気インピーダンス計測により細胞の能動輸送停止の有無が検出できつつあること(大体出来たと考えられること). 2.能動輸送が停止しない温度が大まかに明らかになりつつあること(6℃付近に有ると推定される). 3.まだ推測の域は出ないが,能動輸送が停止する温度よりも停止しない温度の方が冷温保存時間に対する細胞生存率が高い傾向となり,しかも,その温度における疎水性ガスのXeガスの加圧溶解の細胞障害低減効果が明らかとなったこと.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の方策として以下の2点が挙げられる. 1.電気インピーダンス測定に関しては,能動輸送の有無を明確に示したわけでは無いので,もう少し詳しく調べる必要がある.そのための最大のポイントは能動輸送の有無を検出するための適切な電極配置と考えている.それについては試行錯誤中であり,次年度も色々試してみて最適な配置を決定する. 2.能動輸送が停止しない温度については,本年度は様子を大まかに調べるため1℃刻みの測定であった.次年度は0.5℃刻みで測定し,細胞生存率の時間依存性について詳細を明らかにする.
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Causes of Carryover |
消耗品購入における品目に比較的金額の大きい試薬等が多かったことから,結果として金額に端数が生じたため.次年度使用額は次年度の試薬等の購入に利用する予定.
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