2019 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ風向風速センサによるレイノルズせん断応力の高精度計測
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19K04237
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
保浦 知也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00324484)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乱流 / 熱線流速計 / 抵抗線温度計 / レイノルズ応力 / 風向風速計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「マイクロ風向風速センサによるレイノルズせん断応力の高精度計測」を実現することである。乱流中における熱および物質の移動を定量的に予測するためには、速度、温度および濃度変動の同時計測により、レイノルズせん断応力を始めとする相関量を計測する必要がある。レーザを利用する速度計測手法では、流れの中に混入させる粒子が必要なため、常温常圧の気相乱流場において温度変動や濃度変動との同時計測が困難である。これに対し、熱線流速計は特有の欠点があるものの、それを克服し、瞬時速度ベクトルの大きさと角度を高精度に計測できれば、その適用範囲が格段に広がる可能性がある。 本研究は、熱線流速計と抵抗線温度計群を組み合わせたマイクロ風向風速センサを開発し、センサ形状の最適化と動特性の解析および実証実験により、レイノルズせん断応力の高精度計測を実現し、温度と濃度などの物理量との同時計測への展開を試みるものである。 本年度は、抵抗線の本数をこれまでに提案されていた5本から2本に減らして、熱線の熱的後流を2つの抵抗線で検知して得られる温度上昇の差から、速度ベクトルの角度を検出する方法を提案し、平板乱流境界層における乱流諸量の測定精度を検討した。その結果、従来のガウス分布補間による測定結果と同等以上の測定結果が得られることが明らかとなった。今後は、より合理的なセンサ形状を追求し、熱線の熱的後流が測定対象の乱流場においてどのように応答しているのか、また、熱的後流を検知する抵抗線温度センサの応答遅れがいかなる影響を及ぼすのか、等について詳しく検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、センサの配置を最適化することを試みた。まず、上流にある熱線流速計に対して、下流の抵抗線温度計の数を減らすことを検討した。抵抗線温度計はセンサ部の直径が3ミクロン程度であるのに対してセンサを空中に保持する支持部の直径は50ミクロン以上あるため、抵抗線の本数が多くなると流れをせき止めることにより測定対象の流れ場が変異する悪影響が心配されていた。そこで、熱的後流の角度を検知するために使用していた抵抗線の数を従来の5本から2本に減らしても角度検知が可能かを調べた。その結果、2本の抵抗線で検知される温度の差を用いれば、角度が±15°の範囲で線形関係となるため十分な精度で角度検知が可能であることが明らかとなった。さらに、温度差と角度の関係は速度の依存性が低く、これまで問題となっていた影響も小さく抑えられることが明らかとなった。この方法を用いて、平板乱流境界層における乱流諸量の測定精度を調べたところ、従来のガウス分布補間による測定結果と同等以上の測定結果が得られることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、センサを含む全体としてプローブ形状を最適化するために、種々の形状におけるセンサ周りの流れを解析し、形状が計測結果にどのような影響を及ぼすかを系統的に調べる。理論的解析は困難であるため、数値流体力学によりこれを明らかにする必要がある。そこで、熱源周りの熱的後流の数値シミュレーションを実施し、X型熱線流速計の測定原理との違いを明確にする。さらに、測定対象となる乱流の空間スケールに応じた最適なセンサ形状を見つける。なお、センサ直径は数ミクロン程度であるため、センサに対する流れは層流とみなせるが、細線周りの熱伝達現象を正確に捉える必要があることに留意し、計算格子の最適化を検討しながら、定常な層流状態の数値シミュレーションを実施する。 また、熱線の熱的後流が測定対象の乱流場においてどのように応答しているのか、熱的後流を検知する抵抗線温度センサの応答遅れがいかなる影響を及ぼすのか、等について詳しく検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はセンサの配置を最適化することに重点を置いたが、その検討において制作するセンサの数を当初の計画より減らし、動作の制御を工夫することでいくらか少ない使用額で進めることができた。次年度には実際に制作するセンサの数を増やすため、センサ作成に必要となる費用を持ち越して使用する計画である。
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