2020 Fiscal Year Research-status Report
等温場蒸気吸着体の細孔内拡散抵抗測定と細孔特性を考慮した抵抗値理論予測手法の確立
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19K04239
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
濱本 芳徳 九州大学, 工学研究院, 准教授 (20334469)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 蒸気吸着 / 等温 / 物質移動抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究2年目には、細孔特性の違いが吸着速度および脱着速度(以下、反応速度)に及ぼす影響を検討した。異なる細孔分布や細孔径をもつ吸着材として、これまのでシリカゲルA形に加えて細孔容積が異なるB形、さらに細孔径分布が異なるゼオライト13Xと3Aを対象に、(1)試料作製ならびに反応速度の測定装置の改良を行った。また、(2)反応速度の測定を行い、細孔内の物質移動抵抗を比較した。 (1)では、各種吸着材をQCMセンサの電極面に塗布して一体化させた試料を作製して、試料表面の吸着材粒子の塗布状態をSEMで観察した。ほぼ同じ粒子径(1μmオーダー)の吸着材を均一に塗布する方法が確立できた。これにより(2)で得られる反応速度は、この粒子直径における代表値である。 (2)では、初年度と同様に、蒸気吸着量の測定に水晶振動子マイクロバランス(QCM)法を採用して、等温場での反応速度を測定した。測定では吸着材温度を27℃に保ち、蒸気圧を0 kPaと2.57 kPaの間をステップ状に交互に変化させた。このときのQCM周波数変化を測定し、吸着材の質量変化量とした。そして、蒸気吸着量変化の時定数τ(移動抵抗)を求めた結果、吸着時の時定数に及ぼす試料の違いの影響は小さいことが明らかになった。しかし、脱着時のゼオライトの時定数はシリカゲルのそれよりも大きく、反応速度に影響が見られた。そこで両試料の時定数の逆数とKnudsen拡散領域の細孔内有効拡散係数の推算値を比較した。蒸気が移動しやすい試料ほど、脱着時の移動抵抗は小さくなることが確認できた。次にシリカゲルB形はA形よりも蒸気が通りやすいと予想したが、脱着時の差異は誤差程度であることも分かった。最後に細孔内の圧力流れの抵抗と反応速度との関係を評価するために、細孔内浸透率を推算して時定数の逆数と比較した。拡散係数の場合と同様の傾向が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で令和2年度には、(2)吸着速度と脱着速度の測定および各拡散抵抗に分離するための解析ならびに(3)細孔特性の影響の定量化と理論モデルの構築の一部を目標としていた。その結果、測定パラメータとして吸着材の種類を変えて測定して物質移動抵抗を求め、拡散抵抗に及ぼす細孔直径と細孔分布の影響ならびに細孔特性パラメータ(細孔率と屈曲係数を関数とする細孔内有効拡散係数)との関係を考察することができ、その目標はクリアできたので順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
吸着速度と脱着速度の測定および細孔内の各移動抵抗に分離するための解析を行う。特に解析では、細孔内の局所平衡吸着量と、細孔内の物質移動抵抗を考慮した熱物質移動の方程式を連立し、細孔内の気相密度と吸着量の分布を解いて吸着(脱着)速度を求める。そして、測定値と比較して各移動抵抗を分離・同定する。 次に、細孔特性の影響の定量化と理論モデルの構築を行う。上記の検討で得られた移動抵抗に及ぼす細孔直径、構造、濡れ性の影響を、いくつかの吸着材で考察・定量化し、細孔特性パラメータとの関係を整理する。そして、理論モデルによる抵抗値を予測し、測定値との比較を行う。そして、結果をまとめる。 ・移動抵抗に及ぼす蒸気圧力の影響を検討するとともに速度の実測データを収集する。また、細孔構造が単純な吸着材を対象に速度の実測データを収集する。さらに蒸気の種類を変えて吸着材表面の親和性の影響を検討する。 ・細孔内圧力流れによる移動量を見積もり、表面拡散による移動量を求める。 ・表面拡散の移動モデル化を進める。
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Research Products
(3 results)