2019 Fiscal Year Research-status Report
格子欠陥による熱特性局所揺らぎの評価・制御手法の開発
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19K04240
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
武富 紳也 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (20608096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宍戸 信之 北九州市環境エレクトロニクス研究所, パワーエレクトロニクス信頼性研究室, 主任研究員 (00570235)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 格子欠陥 / 熱特性 / 電気特性 / 等価回路網 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,フォノン解析などを用いて熱伝導メカニズムの微視的検討が行われているが,金属などでは自由電子の寄与が支配的なため純粋に理論的な評価は行われていない.また,微細化が進む半導体配線では,格子欠陥に起因した電気/熱抵抗が顕在化することが問題となっているが系統的な研究はなされていない.Wiedemann-Franz則にも示されるとおり,電気特性と熱特性には自由電子の寄与という共通項があるため強い相関がある.本研究では格子欠陥近傍の局所的な熱/電気特性の変動を予測可能な評価システムを開発する.また,本手法を用いて銅配線中の格子欠陥ごとの電気特性を評価することで,熱特性に優れた格子欠陥デザインを探索する.自由電子の影響を考慮に入れた簡易評価方法として,原子間に仮想的な電気抵抗を考慮した抵抗回路網を仮定した.本回路網からKirchhoffの法則を用いて合成抵抗を算出したところ,簡易2次元モデルにおいて{100}面では<100>方向と<110>方向では合成抵抗に約1.4倍の差が生じることが示唆された.銅単結晶材を用いて微小抵抗測定システムを用いた評価を実施したが,環境ノイズによって有意な差を見出すことはできなかった.環境ノイズの原因について,電源の安定性,電磁波,接触抵抗,4端針プローブの形状など,個別の因子について評価を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
等価回路網を用いた電気/熱特性の簡易評価手法の基礎を構築することができた.無ひずみの状態でも,電流印加方向によって有意な差を生じることが示唆されたことから,本解析手法および本研究テーマの遂行によって当初の目的に準ずる工学的に有益な知見の獲得が期待される.また,実験も初年度にしては有益な結果が見いだせており,具体的な改良案についても条件の洗い出しが進んでおり,おおむね順調に研究計画が遂行できていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
等価回路網を用いた電気/熱特性の評価手法を深化させる.具体的なプログラミングを進め,3次元モデルに対応させていく.3次元の結晶構造における合成抵抗を評価することで,電気抵抗の低い経路と高い経路の選定を進める.解析結果と比較するための無ひずみ銅単結晶材の電気抵抗測定の高精度化を進め,原子間の仮想抵抗の具体的数値化を進めていく.これらの知見をもとに,格子欠陥ごとの熱/電気特性を評価し,配線構造に応用を進める.
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Causes of Carryover |
納品業者の不手際があり,微小抵抗測定システムの導入時期が後ろにずれ込んでしまったため,実験の着手が遅れてしまったことや,研究分担者の異動,新型コロナの影響もあり,打ち合わせ回数が十分とれなかったため次年度使用額が生じた.次年度は,研究を推進させ,研究成果の対外発表や消耗品の購入に経費を活用する.
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