2022 Fiscal Year Research-status Report
樹木導管を模擬するメゾスケール複雑境界内の二相流数値計算手法の開発
Project/Area Number |
19K04241
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山口 朝彦 長崎大学, 工学研究科, 教授 (00284711)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 格子ボルツマン法 / 単一気泡 / 高密度比 / フェイズフィールド法 / 接触角 / 濡れ性 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の水分輸送モデルとして広く受け入れられている Cohesion-Tension Theory (水の凝集力・張力説、以下 CTT ) は、水で満たされた1本の細管の下端に根圧としての浸透圧、上端に葉からの蒸散による張力が作用し、水の凝集力を介した張力の伝達により水分が根から葉まで運ばれるというものであるが、未だ解明されていない部分が残っている。本研究では、二相系格子ボルツマンBGKモデルによるフェイズフィールド法を発展させた数値シミュレーションにより、CTT の検証と、理論の工学デバイスへの応用を目指している。 これまでに、稲室らが2004年に発表した二相系格子ボルツマン法により、対象となる水のような気液の密度差の大きい二相流を扱うことのできるプログラムを作成し、複雑な境界条件への対応できるよう外挿法による境界計算を導入した。また、気液境界の粘性係数の計算方法をHeらの方法に変更して、気液の接続を滑らかにした。さらに、昨年度までに、固体表面上の濡れ性を考慮するために、Yanらの方法を追加し、数値シミュレーションで垂直平板上の単一気泡の挙動を計算することができるようになっている。 今年度は、複雑な境界条件に対応するために、重力方向に対して傾斜のついた平面上にある気泡挙動の数値シミュレーションを行い、接触角が小さい場合、気泡は斜面から離脱するように上昇し、接触角が大きい場合は、気泡が斜面に沿って上昇する結果を得て、実際の物理現象に対して矛盾のないことを示すことができた。 一方で、現在の3D15VとSRTのモデルでは、計算ステップが進むにつれ、平衡分布関数の値が不安定になる現象を回避することが困難で、3D27VモデルやMRTの導入や稲室らが提案してるLKSへの変更など、プログラムの改善が必要であることがわかってきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では、本年度までに複雑な形状をした植物導管を模擬した細管内の気泡挙動の解析を行い、学術誌に発表予定であったが、以下のような理由により、研究計画よりも進捗がやや遅れている。 2019年度の終わり頃から2022年度の終わりまでの3年間は、COVID-19の感染拡大により、大学での研究リソースが制限され、また、オンライン授業の導入に伴い授業準備にエフォートを大幅に避く必要が生じ、本研究に当てるはずのエフォートを十分に確保することができなかった。また、国内学会および国際学会の中止が相次ぎ、申請時の研究期間内での発表の場が失なわれ、同分野の研究者との意見交換が十分にできなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題であった濡れ性の考慮ができるようになったので、植物導管を模擬した複雑境界への対応に移行する。また、今年度までに、3D15V+SRTモデルの限界も見えてきたため、3D27V+MRTモデルや、稲室らが提案するLKSの導入を具体的に進める計画である。 この3年間はCOVID-19の感染拡大の影響で国内学会や国際会議への参加が制限されていたが、今年度からはほぼ平常時に戻るため、積極的に公の場で発表する機会を確保し、他の研究者との議論を進めた上で学術誌への投稿を実現させる予定である。また、同じ理由で、この3年間は学会発表のための予算の執行が十分にできなかったため、可能であれば、研究期間の延長を行なった上で、発表の機会を増やす計画である。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大により、参加予定だった国内学会および国際学会に参加できなくなり、主に学会参加費の支出が予定よりも少なかった。また、同じ理由で、教育および研究室の運営および研究遂行に計画以上のエフォートを要し、本課題で計画していた通りのエフォートを避くことができなかったため。 研究成果の公表のために、これから投稿が可能な国内学会および可能であれば国際会議に積極的に参加する計画である。また、論文執筆を進め学術誌への投稿にも支出を計画している。さらに、2019年度末から2022年度末の国際会議への参加ができなかった状況を考慮し、当初の計画に沿った内容での予算執行を行なうため、また、研究遂行のために研究期間の1年間の延長を検討する。
|
Research Products
(1 results)