2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K04246
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
平沢 太郎 中部大学, 工学部, 教授 (30350987)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 火炎合成反応場の制御範囲の拡大 / 加熱温度の上昇 / 加熱時間の増加 / 還元剤濃度の増加 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロバーナにより形成される微小拡散火炎では,通常のバーナで形成される火炎に比べ対流の影響が小さく,分子拡散や熱伝導の効果が大きくなる「低ペクレ数場」を形成する. この特殊な低ペクレ数場において,これまでに酸化チタンなどの酸化金属粒子の還元が可能であることを示すなど,火炎合成の反応場として微小拡散火炎群の優れた特徴を示してきた.本研究の応用面での大きな目的には,火炎合成反応場の制御範囲の拡大がある.特に,従来不可能であった合成を実現するためには,加熱温度の上昇と加熱時間の増加,還元剤や酸化剤の濃度の増加が重要となる.そのためには,微小拡散火炎群の火炎構造の制御は勿論不可欠であるが,加えて燃料種の選択も効果を発揮する.そこで微小拡散火炎群において様々な燃料種の特性を捉えることとした. 微小拡散火炎群による低ペクレ数反応場の形成に際し,様々な燃料を適用して還元反応をより促進する条件を検討した結果,ジメチルエーテル(DME)は,還元反応をより促進できることが明らかとなった.またDMEからは還元反応の促進に加え,添加粒子の加熱温度を顕著に上昇させる効果も得られた.例えば,酸化チタンの還元においては,DMEによって低次酸化チタンへの還元が一層促進されることに加え,粒子が一端融解されることで球状の粒子を得ることにも成功した. 合成粒子の微粒化や,反応場の制御範囲の拡大のための装置面においては,本研究の微小噴流に適した液滴添加機構の実現や,加熱時間の増加や加熱温度の上昇をもたらすバーナの改良を図ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の一つに,合成粒子粒径の微小化や,最高加熱温度や最大加熱時間を増加させることなど,反応場の制御範囲の拡大がある.そのために必要とされる装置の設計・製作は初年度の重要なステップである.これに関して次の2点について進捗が得られた. まず,液滴添加装置である.金属イオン溶液の液滴を気流に添加すること自体は,一般に困難ではないが,本研究においては,密閉配管内で,かつ微小流量の気流に添加するという制約があった.このような制約から,液滴添加機構の設計は困難を伴うものであったが,「本研究の微小噴流に適した液滴の添加機構」を実現させることができた.これにより,微小拡散火炎群によるナノ粒子の火炎合成に不可欠な,微小な酸化剤流の流量と,液滴の数密度の独立した制御ができるようになり,ナノ粒子合成の準備が整った. 次に,最高加熱温度や最大加熱時間のさらなる増加のために,酸化剤用ノズルの設計を見直した新たなバーナを作成した.このバーナでは,粒子を添加した酸化剤流の流速をさらに低下させ滞留時間を増加させることで,加熱時間の増加とそれに伴う最高加熱温度の上昇,さらには収量の増加も見込まれる. 反応場の制御範囲の拡大には,還元や酸化などの反応の促進も含まれ,反応場の温度と還元剤や酸化剤の濃度が重要となる.反応場の温度上昇と還元剤濃度の増加では,火炎構造の制御は勿論であるが,燃料種の影響も少なくない.様々な燃料について検討を行ったところ,DMEを使用することにより還元反応がより促進されることが明らかとなった.例えば,酸化チタンの還元においては,還元がさらに進んだ低次酸化チタンを合成することができた.これに加えて,DMEを用いることで添加粒子をさらに高温に加熱できることが明らかとなった.低次酸化チタンの場合では,この高温化により一旦溶解し,その結果真球状の低次酸化チタン粒子が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
化学工学と燃焼工学の両分野の橋渡しも,本研究の重要な貢献の一つと考えている.「火炎構造の理解とそれに基づく火炎構造の制御」および「火炎に反応物を導入しての新材料合成」の双方について大きな成果を成し遂げるためには,有機金属化学分野の研究者との共同研究を推進するなどの展開も重要であると考える.現在もそのような連携が全くないわけではないが,残念ながら様々な連携を広く進めているという状態には至っていない.粒子合成の様々なニーズが,材料合成の研究者から持ち込まれるような状況を目指したい.そのためには,自ら新材料・粒子合成の成功例を積み上げることや,低ペクレ数場を利用した火炎合成の特性を明らかにし,材料合成の研究者らへ広く情報発信していくことが重要であると考えられる. 低ペクレ数場を利用した火炎合成のプラットフォームとなるように,今後はより積極的に外部に発信し,新材料の合成や粒子合成の課題といったニーズを積極的に取り込んでいきたい. 研究のスピードアップのための工夫も欠かせない.収量を増やすための工夫もその一つである.本研究の場合,粒子合成は一瞬でできるが,分析評価に必要な収量を得るには時間がかかる.そこで,火炎合成装置の長時間連続稼働を無人で実現させるための安全システムを組んでいるところである.また,1つの供給系や捕集系で複数のバーナを並列で使用できるような装置の工夫も今後検討する必要があると考えている.さらに,ナノ粒子のハンドリングの難しさは様々なところで指摘されているとおりであるが,効率よく収量を上げるためにも,気相中のナノ粒子の捕集方法についても改良を図っていきたい.
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Causes of Carryover |
パーティクルジェネレーターの選定見直しにより、当初の予定額より減額できたため。その余剰分をパーティクルトラップの製作費に充てる計画である。
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