2020 Fiscal Year Research-status Report
ディスクブレーキの面外鳴きと面内鳴きの簡易な解析モデルおよび鳴き試験機と抑制法
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19K04259
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
大浦 靖典 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (60512770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 昂 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (60759273)
栗田 裕 大阪産業大学, 工学部, 教授 (70275171)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 面内鳴き / ディスクブレーキ / 固有振動 / 自励振動 / 鳴き対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で用いている鳴き試験機では,実機のブレーキディスクに近い形状のディスクを用いて,面内鳴きを安定して発生させることができている.同時に面外鳴きも発生している.すなわち,実機に比べて鳴きが発生しやすい試験機である.有限要素法により,ディスク全体の固有振動を解析した結果,面外方向と面内方向に同時に振動するメカニズムが確認できた.このメカニズムの考察結果より,ディスクの一部に減衰材を取り付けるなどしても,面内鳴きの抑制には至らないことが予測できた. 面外鳴きの対策は過去の研究で提案できているため,面内鳴きの対策を示すことが必要であり,本申請の目的である.実際のディスクとは異なった形状とすることで,面外方向の振動振幅と面内方向の振動振幅の比率を段階的に変更した複数の研究用ディスクを作成した.これらのディスクの鳴きやすさは,理論で予測された傾向と一致した.過去の研究より明らかとなった面内鳴き発生の主因となる固有振動モードが形成されるには,ディスクの形状が大きく影響していることを示した.実用されている自動車用ディスクブレーキのディスク形状は,面内鳴きが発生しやすい形状である. 上記の面内鳴き対策(固有振動モードの管理)で理論的に面内鳴きの発生が抑制できる形状とした研究用ディスクでは,実際に面内鳴きが発生しにくい実験結果が得られているが,有効性を説得力をもって示すには至っていない.すなわち,面内鳴きは発生しないが面外鳴きが発生し続けている状況であり,鳴きが発生しないディスクとはいえない.ディスクではなく,ブレーキパッド・キャリパ側に面外鳴き対策を施すことで,面外鳴きと面内鳴きの両方が発生しない状況とすれば,鳴き対策の有効性が実証できる(わかりやすくなる)と考えている.客観的な説得力のあるデータの取得は今後の課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的に面内鳴きの発生を低減できるディスクを試作し,実際に鳴きが発生しにくい実験結果を得た.すなわち,研究の目標は達成できつつある.しかしながら,現状では実験者の主観によるところが大きく,客観的な実証データの取得には至っていない.また,作成した研究用ディスクは,固有振動に着目した鳴き対策の検討という研究的な観点では十分に役立つものの,実用化できる形状とはいえない. 研究用ディスクにより面内鳴き対策の方針は得られた.一方,実験データの取得には,鳴きの安定性や鳴き振動の測定精度の向上などの課題がある.さらに,今後は実用性のある鳴き対策に展開する必要がある. 上記の結果より,期待されていた研究の成果は得られているものの,客観性や実用性に課題があるため,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,面内鳴きの発生を抑制できるディスクの試作を目的としていた.当初の予定では,実機に近い形状のディスクに部材(減衰材や梁)を追加することで固有振動モードを管理し,鳴きやすさを操作できるようにする予定であった.すなわち,良く面内鳴きが発生するディスクに,着脱可能な部材を追加すると鳴きが収まることを示すことで,実用性のある具体的な鳴き対策の提案を目標としていた. しかしながら,研究の結果,鳴きの主因となる固有振動モードは,ディスクが全体的に大きく振動しており,部材の追加程度では管理が困難であることが明らかとなった.このため,ディスクの形状自体を大きく変更することで面内鳴きを抑制することとなった.結果として,対策の方針が正しいことを示す実験結果は得られたが,実用性に乏しくなった. 今後は,実験の測定精度を高めることで面内鳴き対策の有効性を客観的に示すとともに,実用性を確保した形状かつ鳴きの発生しないディスクを提案することを目的として研究を推進していく.
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Causes of Carryover |
コロナ関連の対策のため,必要最低限の実験とする必要があったため,実験の回数が計画当初よりも少なくなっている.このため,試験機の補修が不要となった.関連して,鳴き振動の振幅が当初の想定より小さく,その測定精度については課題があるが,この実験結果に基づいた装置の改修が実施できていない.このため,物品費を大きく残すこととなった.さらに,所属機関の設備(実習工場)で研究用ディスクを作成することができたため,費用を削減することができた. 次年度使用額を用いて,新たに変位を測定するセンサーなどを購入するとともに,客観的かつ信頼性のあるデータを取得できるように試験機を改修することを計画している.また,本研究の知見(鳴き発生メカニズム)を用いた鳴き対策の有用性を証明することに特化した試験機も作成予定である.
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Research Products
(1 results)