2019 Fiscal Year Research-status Report
電気回路を併用した直列型二重動吸振器による受動的制振装置の開発
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19K04276
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
浅見 敏彦 兵庫県立大学, 工学研究科, 特任教授 (70128784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 啓介 関西大学, システム理工学部, 准教授 (80456798)
川口 夏樹 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (90824392)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 動吸振器 / 二重質量 / 受動制振 / 代数的厳密解 / 電気回路併用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究申請時からの大きな変更は,当該研究テーマに最も近い研究をされている関西大学の山田准教授に共同研究者として参入して頂いたことである。そのため,助成金申請時の最も大きな支出項目であった FFTアナライザーについては購入する必要がなくなり,実験装置の製作と実験は,設備の整っている関西大学の山田研究室で実施することが可能になった。2019年度は,本研究代表者は週1回のペースで山田研究室を訪問し,研究打ち合わせを行うと共に,学生を使って実験装置の製作と実験を指導した。本研究代表者は,現在,兵庫県立大学の特任教授であり,もう一人の共同研究者である川口助教と一緒に当該大学で動吸振器最適化に向けての理論的研究を行っている。 初年度(2019年度)は,高分子材料と補助質量を用いて単一質量動吸振器を製作し,これを板ばねで支持された主振動系に取付けて動吸振器の制振性能を確かめる実験を行った。実験によって得られた主振動系の周波数応答と自由振動応答を,理論解析から予測された結果と比較し,両者がよく一致していることを確認した。 本研究に関しては,本研究代表者が中心となって2019年に1報,2020年に4報の論文を発表し,それ以外に投稿中の論文が3報ある。その中で,新しくヒステリシス減衰型動吸振器の最適設計法に関する論文を発表した。実は,実験で用いた動吸振器に使われている高分子材料は粘性型ではなくヒステリシス減衰型のエネルギー散逸特性を有しており,動吸振器の従来の最適設計条件とは少し異なる最適値を有していることをこの論文で報告している。 現在は新型コロナウィルスの影響で,実験の方はストップしているが,理論解析に関しては引き続き研究を行っているところである。次の研究目標は,ヒステリシス減衰型の二重動吸振器の最適設計条件を求めることである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで行われてきた動吸振器の最適化の研究において,その減衰特性は主振動系も含めて粘性減衰型として扱われてきた。それは,粘性型減衰は数学的に最も取り扱いが容易な特性を持っているからである。ところが,実用に供されている動吸振器の多くは,ばねが防振ゴムのような高分子材料で作られており,その減衰特性は,減衰力が物体の速度に比例して変化する粘性型ではなく,物体の変位に比例して変化するヒステリシス減衰型でモデル化できる。本研究においても1次動吸振器はこの高分子材料をばねに貼り付けて減衰を生み出す構造となっている。このヒステリシス減衰型動吸振器の最適化に関する研究はほとんど行われていなかったので,本研究の初年度にその最適化に関する研究論文を発表できたことは大きな成果であると自負している。 実験においては,共同研究者として参加して頂いている山田先生の実験室にて,単一質量型動吸振器の実験装置を製作し,実験も行った。この実験装置の動吸振器のばねには高分子材料が貼り付けられており,上記のヒステリシス減衰型の動吸振器である。上記の論文に記されている二つの設計規範,すなわち,H∞最適化規範,および安定度最大化規範に基づいて動吸振器の二つの設計パラメータを最適化し,所望の性能が発揮されていることを確認した。ここで,H∞最適化規範とは,正弦波励振を受ける振動系の共振振幅を最小化させることが目標であり,安定度最大化規範とは,自由振動応答を最短時間で減衰させることが目標である。 以上の研究成果より,初年度に目標としていた成果はほぼ達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は機械式の直列型二重動吸振器の実験装置を製作し,本研究代表者がすでに発表している論文に記載されている二重動吸振器の最適設計条件が有用であることを確かめたい。この二重動吸振器は,単一質量動吸振器よりも高性能になっている筈であり,そのことについても確認をしたい。さらに,2年目の後半には,2次動吸振器を電気回路式動吸振器に置換し,同等の制振性能が得られるかどうかを調べてみたい。 この電気回路を併用した動吸振器は,機械式の動吸振器と完全に等価ではなく,質量・ばね・ダンパの各要素の配置に違いが生じることが分かっている。このことから,電気回路式動吸振器の最適設計条件に関する新規の研究を始めなければならないと考えている。 最終年度の3年目は,この電気回路式動吸振器を実用化するに向けての様々な取り組みを行う年にしたい。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では,初年度にFFTアナライザーを購入する予定であった。それは,本研究代表者がこれまでに使っていたFFTアナライザーが故障していたことから,新規に購入する計画を立てていたことによる。ところが,科研費の受給が決定後に,本研究に新たに関西大学の山田准教授に加わって頂けることになった。そのため,実験はすべて関西大学で実施できることになり,山田研究室にはFFTアナライザーが備えられていることから新規購入は必要でなくなった。その分の購入経費を,実験装置制作費として次年度以降に計上できるようになった。
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Research Products
(13 results)