2019 Fiscal Year Research-status Report
効果的な細胞移植を実現するための細胞シート高速積層法の開発
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19K04281
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坂口 勝久 早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (70468867)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 再生医療 / 組織工学 / 細胞シート / 3次元組織 / 移植治療 / 細胞治療 / ヒトiPS細胞 / 心筋組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞シート(シート状の細胞塊)を高速に多層化することで立体的組織を構築し、大量の細胞・組織を生体に移植する方法を開発する。現在、細胞シートは角膜、心臓、食道等の損傷に対する細胞治療として臨床応用まで到達している。しかしながら、移植には酸素・栄養の供給が拡散で補える組織の量・厚みに限界があり適応疾患には限定的である。そこで、移植組織を高速に作成し再構築組織内の血管網が数時間でホスト側の血管と結合させることで効果的な細胞移植治療を目指す。具体的には立体組織(10~20層)に積層構築する際に、各細胞シート間へ血管新生を促す素材(フィブリンゲルやサイトカイン含有ゲル)を挟み込み、ホスト側と血管網との結合を促進させて細胞移植効率を大幅に向上させる手法を確立する。 本年度は、フィブリン接着剤を用いて、ヒト心筋細胞シートおよび、ヒト肝細胞シートの高速積層化が可能かどうかの検討を行なった。ヒトiPS細胞由来の心筋細胞とヒト皮膚線維芽細胞とヒト臍帯静脈内皮細胞を共培養することで、血管毛付きの細胞シートを作成できる。この細胞シートを本研究で開発したフィブリン接着剤を用いた積層法で15層の組織を構築することを可能とした。1層の積層に約5分で可能とし、15層の立体組織を構築するのに約2時間で作成した。さらに、ヒト肝細胞HepG2の細胞シートを作成し、同様に15層の立体組織の構築にも成功した。通常肝細胞の重層化には極性があるため時間を要して困難であったが、本研究の開発した積層方法で可能となった。次に、この手法で構築した組織の細胞生存率を確認した。その結果、構築した組織内の細胞の生存率は90%以上あり、積層方法による損傷はほとんど無いということが確認できた。今後は、この構築した組織をヌードラットに移植しその生着効率を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した新規積層法による多層化の実現は、計画とおり成功しており、概ね計画通りの実験進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今度の研究の方針として、作製した積層化細胞シート組織の機能評価を行う。積層化した心筋細胞シートを光干渉断層画像から拍動が伝達しているかを観察する。また、電極を使って、心筋電位の伝わり方を測定する。 また、作製した組織が移植可能かを検討する。上記で見出した最適な積層法で作製した3次元心筋組織を免疫機能低下させたヌードラットの背部に移植することで生着効率を評価する。従来の積層法との比較を行い、本研究で開発した積層法による細胞移植効率の優位性を見出す。
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Causes of Carryover |
当初計画していた細胞培養消耗品使用量が少なくなったため少し残額が生じた。今後、細胞培養を増やし消耗品使用に充てる。
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