2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒトの視交叉を利用した視覚刺激型ブレイン・コンピュータ・インタフェースの構築
Project/Area Number |
19K04298
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
荒木 望 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (10453151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 真太朗 鳥取大学, 工学研究科, 講師 (10781700)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブレイン・コンピュータ・インタフェース / 視覚誘発電位 / 視交叉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,一定周期で点滅する視覚刺激により生じる脳波を用いて,注視するだけでメニュー選択などを行う視覚刺激型ブレイン・コンピュータ・インタフェース(視覚刺激型 BCI)の高度化を目的として研究を行っている.特に本研究課題では,ヒトの視神経に関する特徴である視交叉(視神経交叉)と,VR ヘッドセットを用いた左右眼独立刺激を用いた新しい視覚刺激型 BCI について検討を行っている. 令和2年度はコロナ禍の影響もあり,脳波計測実験についてはほとんど行うことが出来ない状況であったため,関連研究に関する調査や昨年度までに取得したデータの見直し・解析を主に行った.その結果,本研究での課題である「視交叉の特性を意識した右視野・左視野に対する視覚刺激と SSVEP の発現部位・発現特性の調査」について,昨年度までの研究で行った実験結果で得られていた視交叉の特性とは逆側の脳波が活性化する現象については,視線追跡装置を用いた実験でも発現することを確認するとともに,文献調査により paradoxical lateralization と呼ばれる既知の事象であることを確認した.また,前述の調査を踏まえたもう一つの課題である「新規視覚刺激型 BCI の提案」については,この paradoxical lateralization を前提としてデータの解析を再度行ったところ,従来手法よりも単純な方法で視交叉を利用した注視点に対する刺激位置の分類が可能であることを示唆する結果が得られた. さらに,本研究の分担者の研究において,BCI を実際に使用する際に利用可能な簡易脳波計測器用のドライ電極を光造形型 3D プリンタを用いて作成する技術も開発でき,測定環境の充実も図ることが出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目的とする「ヒトの視交叉を利用した視覚刺激型ブレイン・コンピュータ・インタフェースの構築」を達成する上で,本研究課題申請時に行う予定としていた項目は,(1) 視交叉の特性を意識した右視野・左視野に対する視覚刺激と SSVEP の発現部位・発現特性の調査,(2) 発現部位・発現特性の調査結果を踏まえた新規視覚刺激型 BCI の提案,(3) VR ヘッドセットを利用した,さらなる識別パターン数増加へのチャレンジ,の3点である.
このうち,(1) の「視交叉の特性を意識した右視野・左視野に対する視覚刺激と SSVEP の発現部位・発現特性の調査」については,脳波計測実験についてはほとんど行うことが出来ない状況であったため,関連研究に関する調査や昨年度までに取得したデータの見直し・解析を主に行った.その結果,昨年度までの研究で行った実験結果で得られていた視交叉の特性とは逆側の脳波が活性化する現象については,視線追跡装置を用いた実験でも発現することを確認するとともに,paradoxical lateralization と呼ばれる既知の事象であることを確認した. そこで,この事象を前提としてデータの解析を再度行ったところ,後頭部の視覚野周辺の脳波における刺激周波数の強度分布を評価することで注視点に対する刺激位置の分類を行える可能性を示唆する結果を得た.これは (2) の「新規視覚刺激型 BCI の提案」に該当するものであり,従来の視覚刺激型 BCI が一般に正準相関分析と呼ばれる手法で得られる特徴量を利用しているのに対して,周波数解析を行うだけの単純な手法で視交叉を利用したインタフェースを構築できる可能性がある. また,(3) の「VR ヘッドセットを利用した,さらなる識別パターン数増加へのチャレンジ」については,現在透過型ヘッドセットを準備して実験系の構築検討を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況でも述べたように,本研究課題で行う3点の項目のうち,(1) の「視交叉の特性を意識した右視野・左視野に対する視覚刺激と SSVEP の発現部位・発現特性の調査」については,視線追跡装置を含めた実験系で得られた実験結果の解析と文献調査から右視野・左視野に対する視覚刺激を行うことで刺激と同側の脳波が励起することを確認した.また,強度差は刺激位置が注視点から4度程度離れると確認できなくなることを示唆する結果も得られている. この結果を踏まえて,(2) の「SSVEP 発現部位・発現特性の調査結果を踏まえた新規視覚刺激型 BCI の提案」については,後頭部の視覚野周辺の脳波における刺激周波数の強度分布を評価することで注視点に対する刺激位置の分類が行える可能性を示唆する結果を得ている. これらの結果については今後,感染症の状況を確認しながらという形ではあるが,可能であれば複数人で確認実験を行い,本研究課題の成果として論文投稿を予定している.
また,(3) の「VR ヘッドセットを利用した,さらなる識別パターン数増加へのチャレンジ」については,現在透過型ヘッドセットを準備して実験系の構築を行っている段階である.これについては感染症の状況によっては停滞する可能性があるので,まずは本透過型ヘッドセットを用いて上記の本研究における提案手法のデモンストレーション用システムを構築したうえで,可能であれば左右眼独立刺激などのシステム構築・刺激時特性調査に進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
令和2年度ではコロナ禍の影響もあり,予定していた脳波計測などの実験がほぼ実施できなかったこと,また,これに伴い学会などの研究成果発表を行えなかったことにより未使用額が生じている. これについては次年度に実験ならびに成果報告・論文投稿などを行うことで使用するものとする.
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Research Products
(2 results)