2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒトの視交叉を利用した視覚刺激型ブレイン・コンピュータ・インタフェースの構築
Project/Area Number |
19K04298
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
荒木 望 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (10453151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 真太朗 鳥取大学, 工学研究科, 講師 (10781700)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ブレイン・コンピュータ・インタフェース / 視覚誘発電位 / 視交叉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,一定周期で点滅する視覚刺激により生じる脳波を用いて,注視するだけでメニュー選択などを行う視覚刺激型ブレイン・コンピュータ・インタフェース(視覚刺激型 BCI)の高度化を目的として研究を行っている.特に本研究課題では,ヒトの視神経に関する特徴である視交叉(視神経交叉)と,VRヘッドセットを用いた左右眼独立刺激を用いた新しい視覚刺激型 BCI について検討を行っている. 令和3年度は,本研究での課題である「視交叉の特性を意識した右視野・左視野に対する視覚刺激と SSVEP の発現部位・発現特性の調査」についてコロナ禍の影響で実施できていなかった脳波計測実験を行い,昨年度のデータ解析と文献調査に対する確認を行った.その結果,1) 注視点に対して視覚刺激位置を変化させると,視覚野周辺の脳活動は刺激位置と同側が反応するもの,刺激位置と対側が反応するもの,刺激位置に関わらず左右いずれかの片側が反応するものの3パターンに分かれる,2) 3パターンのいずれの場合でも注視点と視覚野の強度分布には関連性があり,注視点から刺激位置が離れるほど全体の SSVEP 反応強度が小さくなり,視野角で±4度程度離れると視覚刺激の影響が見られなくなる.といった特徴を確認した. この結果を踏まえて「新規視覚刺激型 BCI の提案」として,画面の左右にそれぞれ異なる周波数で点滅する2つの刺激パターンを提示した,2周波数利用型の新しい BCI の提案を行った.この BCI ではそれぞれの刺激パターンによる SSVEP 強度分布を特徴量として,水平軸上に配置した 7 つの注視点のどこを注視しているかを分類することが可能となる.この BCI については10名の参加者による実験の結果,平均 90% 程度の正答率で識別可能であることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で目的とする「ヒトの視交叉を利用した視覚刺激型ブレイン・コンピュータ・インタフェースの構築」を達成する上で,本研究課題申請時に行う予定としていた項目は,(1) 視交叉の特性を意識した右視野・左視野に対する視覚刺激と SSVEP の発現部位・発現特性の調査,(2) 発現部位・発現特性の調査結果を踏まえた新規視覚刺激型 BCI の提案,(3) VR ヘッドセットを利用した,さらなる識別パターン数増加へのチャレンジ,の3点である. (1)については,今年度実験を行い,注視点に対して視覚刺激位置を変化させたときの視覚野における SSVEP 強度の分布や,注視点からどの程度刺激位置が離れると影響が現れなくなるか,などを把握できたため,一定程度の成果があったものと考える. また,(2) については (1) の結果を踏まえ,画面の左右にそれぞれ異なる周波数で点滅する2つの刺激パターンを提示した,2周波数利用型の新しい BCI の提案を行い,実験により実用可能性を示す結果が得られたため,これについても一定の成果があったと考える. 一方,(3) については (1) に関連する実験が今年度にずれ込んだことから,システムの準備までは行っていたものの検討を行うには至らなかった. また,本研究で得られた成果については今年度中にまとめることが出来なかったため,論文執筆等の成果報告期間として1年間の期間延長を行うこととした.
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況でも述べたように,成果報告としての論文執筆は遅れを生じている.これについての対応として,研究期間を1年間延長することとした. 研究成果報告については,すでに本研究で得られた成果の一部をとりまとめて国際学会 (SICE Annual Conference 2022) へ投稿を行っている. さらに,その他の成果についても論文として投稿するために準備を進めており,今年度中に論文投稿を実施する予定である.
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Causes of Carryover |
遅れを生じている成果報告(学会発表・論文投稿)等に使用する予定の予算.これらの予算については,本研究の成果を発表するために投稿した SICE Annual Conference 2022 の英文校正・学会参加費,および今後投稿を予定している論文の執筆に関連する費用として使用する.
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Remarks |
2021年度日本人間工学会関西支部大会において発表した本研究の成果について受賞
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Research Products
(2 results)