2019 Fiscal Year Research-status Report
ロボットハンドによる遠隔作業の高効率化のための手背代用型触覚提示デバイス
Project/Area Number |
19K04309
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 徳孝 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60574374)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 災害対応ロボット / 触覚提示デバイス / 代用提示 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、情報収集だけでなく、作業もできる災害対応ロボットが求められている。本研究は作業を行うレスキューロボットのための遠隔操作システムに関して研究を行うものである。研究の目的はロボットハンドを有する災害対応ロボットのために、ハンドの触覚を操作者の手背に代用提示するデバイスを試作し、その有効性について検証を行うことである。 2019年度は、手背で代用提示を行うための条件を洗い出すことにあった。具体的には、試作するデバイスの要求仕様である、吸引圧力、刺激面積、吸引部設置間隔の組み合わせを被験者実験によって決定することであった。研究実績は、以下のとおりである。 まず、要求仕様を洗い出すための簡易デバイスを作成し、被験者の手背に実際に様々な条件で力を付与した。力を付与する際には、実際に付与した場所と被験者が付与されたと感じた場所を記録し、正答率を算出した。試行した条件のうち、正答率が最も高い組み合わせを試作するデバイスの要求仕様として採用した。その後、採用した要求仕様に基づき、試作するデバイスの概念設計を行った。 なお、当初の計画では、正答率は、吸引圧力、刺激面積、吸引部設置間隔のそれぞれに対して独立であり、吸引圧力、刺激面積、吸引部設置間隔を様々に変更すれば、正答率が極大値を持つと仮定していた。しかし、実際に実験を実施したところ、吸引部設置間隔が正答率に対して支配的であり、吸引圧力と刺激面積は正答率に大きな影響を及ぼさないことが分かった。このような実験に基づく新たな知見が得られたとともに、2019年度の目的を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載した通り、2019年度は、手背で代用提示を行うための条件を洗い出すことにあった。洗い出す条件は、吸引圧力、刺激面積、吸引部設置間隔という試作デバイスの要求仕様である。 被験者実験を実施し、最も効果的な組み合わせを発見し、2019年度中に行う大きなサブゴールは達成できた。その後、採用した要求仕様に基づき、試作するデバイスの概念設計を行った。 しかし、実験において当初の想定を異なる現象が生じたことから、この部分に関する考察に当初の予定より多くの時間をかけた。これにより、当初の計画では2019年度中に詳細設計を終了し、2020年度に行う予定のデバイス試作のための物品を購入する予定であったが、概念設計を行うにとどまった。そのため2019年度は予定していた補助金の使用を取り止め、2020年度に繰り越すこととした。なお、本報告書を作成している2020年4月末日現在、詳細設計も完了しており、物品の発注を速やかに行う予定であり、当初の計画より遅れた分はすでに取り返すことができている。 したがって、詳細設計と物品発注を実施することができなかったが、2019年度中に行うべき大きな目標は達積出来ており、遅れた分も取り返しが可能なほど軽微であったことから、「おおむね順調に進展している」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」にて説明した通り、研究は概ね順調に進展している。また、2019年度中には当初の想定と異なる現象が生じたことから、試作デバイスの詳細設計と物品発注を実施することができなかった。一方で、研究全体の計画において重要な「手背での代用を可能とするための条件出し」は完了している。 したがって、2020年度は、2019年度中に実施できなかった詳細設計と物品の発注を行う。なお、本報告書を執筆している2020年4月末日には詳細設計が完了し、物品発注をこれから開始する予定であり、すでに遅れを取り返している。 物品納品後、当初の計画に基づき、2020年度中は「触覚提示デバイスの製作と代用可能性の検証」を行う。まずは納品された物品を用いてデバイスの製作を行う。製作後は、ロボットハンドと被験者による、代用可能性の検証実験を行う。具体的には、手掌に触覚センサを取り付けたロボットハンドを用意する。ロボットハンドと被験者の手は広げておく。ロボットハンドの手掌に刺激を与え、被験者の手の同じ場所に刺激を与える。被験者は直接目視せずに刺激を加えられた場所を回答する。統計的な考察のもとで代用が可能であることを示す。 2021年度は当初の計画通り、「製作したデバイスを用いた高効率化の実証試験」を実施する。これは2020年度の研究により代用提示が可能だと証明されたデバイスを用いて、ロボットハンドを用いた遠隔作業を行い、作業の高効率化が達成できていることを明らかにする。従来多く用いられてきたゲームパッドによる操作、触覚提示がない場合の操作、提案手法による操作の比較を行う。タスク達成時間、成功率、主観アンケートを実施し、提案手法による遠隔操作が、統計的に有意に高効率化できることを示す。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」に記載した通り、2019年度中に実施した実験において、当初の想定と異なる現象が生じたことから、この部分に関する考察に当初の計画より、多くの時間をかけた。これにより、当初の計画では2019年度中に詳細設計を終了し、デバイス試作のための物品を購入する予定であったが、概念設計を行うにとどまった。そのため2019年度は予定していた直接経費の使用を取り止めた。 したがって、本年度の次年度使用額については、2020年度早々に詳細設計を実施して使用する計画である。翌年度分については、当初の計画通りに使用する。 (なお、本報告書を作成している2020年4月末日現在、詳細設計は完了しており、物品の発注を今後速やかに行う予定であり、当初の計画より遅れた分はすでに取り返すことができている)
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