2020 Fiscal Year Research-status Report
薄型柔軟素材で被覆された多関節ロボットの力学特性の解明
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19K04317
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
柴田 瑞穂 近畿大学, 工学部, 准教授 (70454519)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多関節ロボット / 薄型柔軟素材 / 摺動特性 / パッキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,薄型柔軟素材で被覆された多関節ロボットの力学モデルを構築し,その力学特性を明らかにすることを目的としている.人の作業に倣い,シリアルリンクロボットにもゴムや樹脂フィルムなどの薄型柔軟素材を被覆することで,食品等の湿潤な物体のハンドリングが可能になると考えられるものの,その力学構造は未知の部分が多い.本研究では,真空包装技術を利用することで,シリアルリンクロボットを樹脂フィルムで被覆する.令和2年度では,実験を通してモデルの妥当性を評価する.樹脂フィルムとリンクとの摺動特性を変化させるために,樹脂フィルム袋内に絶縁流体を封入する.絶縁流体としてフロリナートを利用した.その結果,絶縁流体の量に関して,リンクと樹脂フィルムの摩擦特性が大きく変化する閾値があることが実験的に明らかになった.閾値以上の封入液量ではリンクと樹脂フィルムの摩擦係数が低くなり,低トルクモータでも樹脂フィルムで被覆されたシリアルリンクが回転運動できることが明らかになった.この樹脂フィルムとリンクの間に滑りを許さない場合には,樹脂の伸び剛性が主となり低トルクモータでは動作できないものの,滑りを許すことで樹脂の曲げ剛性が主となり低トルクモータでも動作可能という実験結果は,昨年度のモデルを通して明らかになっている.すなわち,このモデルの切り替えが絶縁流体の液量を調整することで実現可能であることが実験的に確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度では,当初の予定として,被覆素材と物体の摺動特性の評価するために,接触モデルを構築する予定であった.しかしながら,前年度に構築したモデルの妥当性の評価に力点を置いた.平成31年度/令和1年度では,主に,ロボットと被覆した素材との摺動特性の評価するために,力学モデルを構築した.薄型柔軟素材を材料力学的観点から薄型の平板としてモデル化し,リンクの回転運動に必要なトルクを解析した.その結果,被覆した樹脂フィルムとリンクの間に滑りがない場合,リンクを回転させるために必要なトルクは,樹脂フィルムを伸ばすために必要なトルクが主となることが分かった.また,被覆した樹脂フィルムとリンクの間に滑りがある場合,リンクを回転させるために必要なトルクは,摩擦係数に依存することが分かった.このように,リンクと樹脂フィルムに滑りが生じるかどうかでリンクの運動が大きく変わる可能性があり,このモデルの切り替えがどのように起こるかを検討することがこのリンク構造の力学特性を明らかにするうえで,重要であるとの認識に立った.その結果,絶縁流体の量に関して,リンクと樹脂フィルムの摩擦特性が大きく変化する閾値があることが実験的に明らかになった.この結果は,薄型柔軟素材で被覆されたシリアルリンクロボットの設計論の構築につながる知見であり,このように,計画から変更はあったものの,予定していたシリアルリンクロボットと被覆した素材との摺動特性の評価に進展があったことから,本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は,令和2年度に得られた実験結果を踏まえ,リンクとフィルム間の滑りの有無に影響を与える主因を明らかにする.特に,厚さや面積を変更したシリアルリンクを作成し,封入液量と摩擦特性の変化を実験的に評価する.粉体工学では,ある容器内に封入した粉体の物理特性は容器の体積と封入する粉体の体積比によって固体的/流体的に相転移することが知られており,本機構の摩擦特性の変化も封入する絶縁流体とシリアルリンクの体積比,もしくは面積比で変化することが予想される.この関係性を,実験的に明らかにすることを行う.したがって,主としてこれらの実験に関する機器や消耗品を購入する.また,昨年度得られた成果に基づき,研究協力者として大学院生2名を追加し,研究の遂行および公知を図る.特に,得られた成果を広く社会に発信するために,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会,日本ロボット学会学術講演会,IEEE International Conference on Robotics and Automation等,国内外の然るべき学術講演会にて発表し,研究を公知するととともに,広く情報を収集する.また,得られた成果は,日本ロボット学会誌,Advanced Robotics等,然るべき学術論文誌に投稿し,公知を図る.
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により,講演会が開かれたものの,オンライン開催であり,旅費が生じず,予定とは差額が生じた.令和3年度は,これまでに得られた結果に基づき,厚さ・面積を変更したシリアルリンクを製作し,その摺動特性評価にかかわる機器および消耗品を購入する必要がある.特に,適切な力を加え,計測する必要があると考えられる.
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