2020 Fiscal Year Research-status Report
直流設備用ポリマーの撥水性及び電気的特性の劣化回復機構の解明と劣化診断技術の開発
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19K04331
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
迫田 達也 宮崎大学, 工学部, 教授 (90310028)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シリコーンゴム / 撥水性 / 部分放電 / 漏れ電流 / 撥水性回復時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
劣化度の異なるシリコーンゴム(SiR)表面上に距離30 mmで対向電極を配し,導電率16 mS/cmの塩霧中でDC電圧を3時間印加する塩霧試験,その後,撥水性や電気的特性の回復のための72時間(無課電)を空けるといった試験を連続で20回繰返した。フーリエ変換赤外分光法で表面の化学的結合状態を測定した結果,連続塩霧試験によってメチル基と同基におけるC-H結合が減少することを確認した。加えて,塩霧試験中に試料表面の水滴間の部分放電はSiRの充填剤である三水和アルミナ(ATH) 中に存在するO-H基も減少させることを確認した。 さらに,連続塩霧試験後の表面は,10 um以上の孔が存在する粗い表面となっており,メチル基やメチル基におけるC-H結合は減少しているものの水滴の接触角は90度以上あり,高い撥水性回復特性も確認された。なお,数um程度の表面の物理的な形状変化が撥水性の高低を大きく左右することが確認され,DC課電下では水滴間の微少放電の発生頻度が高く,撥水性の高低を大きく左右する物理的な形状変化が短時間で形成しやすいことを明らかにした。 また,試料の劣化度によって撥水性回復時間に顕著な差があることを明らかにした。一方で,電気的特性については,試料表面の水滴間の放電開始時間で判定できるものの,漏れ電流最大値では試料間の大きな違いを確認できなかった。劣化が進行した試料表面はメチル基と同基におけるC-H結合の切断箇所があるため,未劣化の試料表面程には撥水性が高くなく,水滴間の部分放電現象が早く発生しやすい。また,撥水性が一旦低下しても,SiRの低分子成分が表面に滲み出すことで試料表面の撥水性は回復するが,結合が切断された箇所が存在する表面では撥水性回復に時間を要することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画において,2020年度は,” 交流とは異なる撥水性の低下特性がポリマー表面の化学的要因に拠るものか,フーリエ変換赤外分光法で表面の化学的結合状態を測定する。また,ポリマー表面の水滴間の微小放電のエッチングによる表面形状の変化によるものか,電子顕微鏡と表面粗さ計を用いて観察する。あるいは放電によって生成された生成物が支配しているか,エネルギー分散型X線分析(EDX)により明らかにする。”としていた。 2020年度の研究は,全て計画どおりに行うことができ, 1) メチル基やメチル基におけるC-H結合が減少しているものの水滴の接触角は90度以上で高い撥水性回復特性が維持されやすいこと,2)数um程度の表面の物理的な形状変化が撥水性の高低を大きく左右することが確認され,DC課電下では水滴間の微少放電の発生頻度が高く,撥水性の高低を大きく左右する物理的な形状変化を短時間で形成しやすいこと, 3) メチル基やメチル基におけるC-H結合が切断された箇所が多く存在する表面では撥水性回復に時間を要する, ことを明らかにしている。 以上のことから,当初の計画どおりに研究は進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度及び2020年度の研究成果を基に,ポリマー材料の劣化の程度を速やかに取得できる手法を提案・開発する。具体的には,絶縁劣化の程度を評価できる,漏れ電流が観測され始める時間等の漏れ電流発生パターンあるいは撥水性の回復特性を明らかにし,オンサイトで短時間にポリマー機器の絶縁劣化診断が可能な新規の技術を提案・開発する。
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