2019 Fiscal Year Research-status Report
ロープレスエレベータへの応用を目指した高温超伝導リニアモータの実験的特性評価
Project/Area Number |
19K04332
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
平山 斉 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (60560109)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リニアモータ / 電気機器工学 / 高温超伝導 / ロープレスエレベータ / インバータ / DSP |
Outline of Annual Research Achievements |
上下だけでなく左右にも移動できる次世代のロープレスエレベータへの応用に向けて,高い推力密度を持ち低損失で高効率に加え,構造が簡単で低コストな高温超伝導リニアモータの実現を目指している。本研究では,二次側に永久磁石や巻線が不要で一次側に集中巻の簡単な巻線を持つリニアスイッチトリラクタンスモータ(LSRM)を対象に,巻線に高温超伝導線材を用いた実験機を作製し,実証実験,損失等の定量的評価および駆動システム,制御方法の確立を行うことを目的としている。また,これまでに研究開発が行われたロープレスエレベータ用リニアモータと特性を比較し,本研究で開発する高温超伝導LSRMの利点や課題を解明する。令和元年度は,高温超伝導LSRM実験機の設計と作製を目標とした。得られた主な成果は以下のとおりである。 1、高温超伝導LSRM実験機の設計:有限要素法解析を用いて高温超伝導LSRM実験機の設計を行った。実験用としてBi-2223テープ線材(170A級@77K)を使用した一次側鉄心ありおよび空芯の2種類の高温超伝導LSRMに加え,比較のための通常の銅線を使用した常伝導LSRMの合計3種類のLSRMについて解析を実施した。全長約1.3m,推力10N,速度0.3m/sの実験機の設計を完了した。 2、実験機駆動システムの作製:実験機の駆動用に,可動子位置に応じた50A振幅の方形波電流を一次巻線に供給するインバータシステムを設計し,作製した。さらにDSPを用いたモータ制御システムを構築し,実験機の駆動システムを完成させた。 3、電力測定システムの作製:電流,電圧センサおよびパソコンとLabVIEWを用いた電力測定システムを自作し,実験機の電気的特性を測定する準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(遅れている内容)1、高温超伝導LSRM実験機の作製:有限要素法解析を用いて実験機の設計を実施しており,予定していた設計は完了した。しかし,高温超伝導線材(Bi-2223テープ線材)の納入が想定していた以上に時間がかかった。そのため,令和元年度に予定していたBi-2223テープ線材を用いたコイルの作製および臨界電流の測定が遅れ,それに伴い実験機の作製に当初計画よりも遅れが生じている。以上のことが主な理由により,現在までの進捗状況を「やや遅れている」と判断した。 (順調に進展している内容)1、駆動システムの作製:高温超伝導コイルの作製が遅れていることから,令和2年度で実施することを予定していたインバータシステムおよびDSP制御システムからなる駆動システムの作製を前倒しで行い,3種類のLSRM実験機を駆動するための準備が完了している。 2、電力測定システムの作製:駆動システムの作製と同様に,令和2年度で実施することを予定していた,電流,電圧センサおよびパソコンとLabVIEWを用いた電力測定システムの作製を前倒しで行い,実験機の電気的特性を測定する準備を整えた。 以上のように,令和元年度の研究計画のみで見た場合は「やや遅れている」と判断したが,3年間の研究計画全体で考えた場合は「おおむね順調に進展している」ともいえる。
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Strategy for Future Research Activity |
高温超伝導コイルの作製が遅れていることに伴い,実験機の作製が当初計画より遅れているが,実験機を駆動するための装置や測定装置の準備は完了している。そのため,実験機完成後にただちに測定に取り掛かることができ,計画の遅れを取り戻すことは十分に可能である。また,実験機の完成は当初から令和2年度上半期までを予定しており,駆動システムや電力測定システムの作製を前倒しで行った分,実験機の作製に集中して取り組んでいく。なお,計画を変更するような大きな課題も特になく,順調に進んでいる。従って,令和2年度では下記のようにおおむね当初の予定通り研究を進めていく。 1、実験機の作製:実験用としてBi-2223テープ線材を用いた高温超伝導コイルを自作する。また,高温超伝導コイルを除く実験機一式を外注により作製し,令和2年度の上半期までに納入し,実験機を完成させる。 2、静特性の測定:実験機でBi-2223コイルの電流-電圧特性,臨界電流,インダクタンス,静推力等の静特性を測定する。 3、実験機の駆動:作製した駆動システムを用いて3種類の実験機の駆動を行い,動作の原理検証を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 令和2年3月に参加予定であった令和2年電気学会全国大会(東京電機大学)が,新型コロナウイルス感染症の影響で開催中止になったため,その分の旅費が未使用となった。そのため,次年度使用額が生じた。 (使用計画) 令和2年度に開催される学会への旅費に充てる。
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