2019 Fiscal Year Research-status Report
相転移を応用した高温超伝導送電ケーブルの局所温度異常検出に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19K04340
|
Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
高畑 一也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (10216773)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 過熱液体 / 突沸現象 / サブクール窒素 / 過熱限界温度 / クエンチ検出 / 超伝導機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
細管に液体を封入し外部から加熱すると,液体が沸点に達しても沸騰せず液相を保ち,準安定な過熱状態になることが知られている。さらに温度を上げるとある決まった温度(過熱限界温度)で急激な沸騰(突沸)を起こす。液体窒素の場合は約110Kである。この細管内の突沸現象を応用することにより、超伝導機器における局所温度上昇を細管端部に取り付けた圧力計1個で検出できると考えた。本研究では,サブクール窒素を封入した長さ約16 mの細管(外径1.59 mm,内径0.99 mm)に対し,端部のいずれかを局所的に加熱する実験を行い,細管内で発生する突沸現象を端部の圧力計で検出できることを実証した。つまり,ヒーター直下の配管の温度が約110度に達したときに,必ず圧力計の指示がステップ状に増加し,突沸が起こったことを確実に検出できた。また,ヒーター直下の細管には,銅またはステンレス鋼製の配管を用いたが,いずれの材質でも突沸現象を検出できた。さらに,加熱パワーを変えた実験も行い,温度増加率依存性も調べた。低温度増加率では,液体窒素の過熱限界温度である110 Kで突沸が起こったが,高温度増加率ではゆるやかに突沸温度が減少した。これは液体に径方向温度分布ができることが影響していると考えられる。 今回は16 m長の配管で実験したが,圧力が音速で伝播することを考慮すると,キロメートルオーダーの細管でも局所温度上昇を検出できると考えられる。また,液体の種類と圧力によって過熱限界温度が変化するため,検出する設定温度の自由度もある。この手法が超伝導・低温機器のクエンチや温度異常検出に応用できる可能性は高い。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究開始時は,サブクール液体が沸点に達した時点の通常の沸騰による圧力変化を圧力計で検出することを想定していた。ところが,実際に細管で実験を開始すると,通常の沸騰は起こらず準安定な過熱液体状態になることが分かった。そして過熱限界温度になると爆発的な突沸現象を起こし,急激な圧力上昇をもたらすことも分かった。文献調査から過熱限界温度が液体の種類によって既知であること,突沸が大きな圧力変動をもたらすことから,当初提案した検出法より信頼性があり,実用化に適していることが明らかになった。原理実証が研究1年目において完了したことから,当初の計画以上に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
配管長さをより長くした場合でもこの検出法が実用化できるかを調べるため,配管長さを変えた実証実験を実施する。実験手法はこれまでと変わらず,より長い配管を準備するだけでよいため,実施には問題はない。ただし,外部の擾乱(例えば振動)により,早期に突沸が起こる可能性があるため,除振などの工夫が必要となる可能性がある。 温度増加率を大きくすると,突沸温度がゆるやかに減少した。これは,液体内部の温度分布が関係していると考えられるが,文献調査では同様の実験結果は見つけられなかった。基礎的な実験と解析を並行して行い,この現象を理解する。
|
Causes of Carryover |
令和元年度は、計画的に研究を進め、必要な物品を購入したが、少額の残金が生じた。この残金は、令和2年度の研究に有効に使っていく計画である。
|