2020 Fiscal Year Research-status Report
High-Precision Torque Estimation of AC Machines without Torque Detector
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19K04342
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Research Institution | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター) |
Principal Investigator |
山本 修 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 教授 (00648925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平原 英明 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 准教授 (50649209)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 誘導電動機 / トルク / 漂遊負荷損 / 磁束 / 電流 / インバータ / 可変速運転 / 固定子抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度変化に起因した固定子抵抗変動がトルク推定精度にどのような影響を及ぼすかを実機実験に基づいて検証した。その結果、高速運転時よりも低速運転時に固定子抵抗変動の影響が大きいことを確認した。供試機に関しては、定格周波数時においては固定子抵抗が10%変動すると、トルク推定値は約1%の誤差を生じた。運転周波数が1/2、さらに1/4になると各々5%、2.5%の固定子抵抗変動が約1%のトルク推定誤差を生じさせることが分かった。よって、被試験誘導電動機が稼働中であっても可能であればそれを一旦停止して巻線抵抗を図ることがトルク推定精度を確保するためには望ましい。しかし、稼働中の電動機を停止することが許されないケースでは、別途の手段で稼働中の電動機の固定子抵抗を正しく推定することがトルク推定精度の確保には(特に低速運転時には)重要であることを定量的に確認した。 稼働中の電動機の固定子抵抗を推定する一つの手段として、固定子巻線自己インダクタンス情報を利用する方法を検討した。固定子巻線自己インダクタンスは、トルク推定法を実施する際に鉄損抵抗測定のために必要になる無負荷試験によって同時に得られるパラメータである。固定子巻線自己インダクタンスはトルク推定の演算過程において同時にリアルタイム推定できるものであり、かつ固定子抵抗変動に依存して推定誤差を生じる傾向がある。このためあらかじめ正しいインダクタンスを無負荷試験で計測しておき、推定インダクタンスが真値に収束するように固定子抵抗を調整することによって、固定子抵抗のオンライン推定する手法を示した。 漂遊負荷損を考慮するための計算式を改良した。漂遊負荷損がトルクの2乗に比例して増加する多くの誘導電動機で見られる特性を反映できる計算式を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
総合的にはおおむね順調に進展していると考えている。 可変速運転(特に低速運転)時に高精度でトルクを推定するアルゴリズムについて、当初計画以上の進展があった。当初計画では、漂遊負荷損の影響を考慮する計算式については便宜上滑りの影響を無視していた。商用周波数駆動ではこれは十分に成立する仮定であったが、可変速運転(特に低速運転)時においては誤差を生じさせる要因になっていることが判明した。この問題に対して、速度センサを追加することなく銘板値を利用して滑りの影響を考慮する新たな漂遊負荷損の計算式を導出できた。これによって、可変速運転時(特に低速運転時)のトルク推定精度の改善に寄与できると考えられる。さらに、リニアアンプを使用した理想的な電圧波形に対する基礎検討に加えて、10kHzの実用的なキャリ周波数で駆動される実際の三相インバータを用いたトルク推定実験を行って、実用機器へも提案するトルク推定法を適用できることを明らかかにした。 一方、固定子抵抗のオンライン推定は、当初計画よりもやや遅れている。検討してきたトルク推定法は低速運転時に対しては精度が高いが、商用周波数域の高速運転時には精度が低い。すなわち、稼働中の電動機を一旦停止させることなく高精度にトルクを推定することに対しては、固定子抵抗のリアルタイム推定が必須であるが、高速運転時と低速運転時に共通に適用できる手段を新たに考える方が好ましいと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
提案するトルク推定法を簡易に実施できる手法を検討する。提案法は電動機個別の漂遊負荷損の影響を考慮できる特徴を持つが、25~125%負荷での実負荷運転を事前に行って漂遊負荷損の百分率値に関するパラメータ事前に得ておく必要がある。このプロセスは特に中低速時においては手間がかかる。そこで一般的な漂遊負荷損の仮定値を導入する他、機械損測定を不要としながらも機械損の影響は等価的に考慮することができる提案法の簡易版を開発する。 ベクトル制御される電動機に対して提案するトルク推定法を適用できるように昇華する。磁束レベルと駆動周波数の両方が変化する状況下においてどのようにすれば鉄損や漂遊負荷損を正確に考慮できるのかを検討する。 固定子抵抗のオンライン推定については、本研究が工場内試験を目的とすることを考慮して、工場内にしばしば具備されている温度センサを活用し、モータの表面温度の変化から間接的に固定子抵抗変動の影響を考慮する方法を検討する。 従来よりも低いサンプリング間隔で電圧・電流データを計測しても、トルク推定精度劣化が少ない手段の検討が必要である。10kHzなどの実用的なキャリア周波数の場合、所望のトルク推定精度を得るためには1μs程度の間隔で電圧・電流データを計測する必要が生じている。100μs程度のサンプリング間隔でトルク推定精度を下げることなくトルク推定を行えるようになれば、提案法の実用性が高まると考えられる。 提案法は三相巻線を有して回転磁界を利用する原理を持つ交流電動機に対して共通のアルゴリズムでトルクを推定可能であると考えている。上記の成果を総合して、リニアモータ、同期電動機などの誘導電動機以外の電動機に対する妥当性を検証する。
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Causes of Carryover |
国際会議がオンライン開催となったため、出張旅費が予定よりも少額となった。その一方で、既設のトルクメータやオシロスコープに故障が生じている。よって、これらの差額は実験に必要となる計測機材の修理や購入に充てる予定である。
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