2020 Fiscal Year Research-status Report
先進ガン治療装置の普及を加速させるための超伝導マグネットの極軽量化に関する研究
Project/Area Number |
19K04364
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
尾花 哲浩 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (60435518)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超伝導コイル / 重粒子線がん治療 / ガントリー |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導技術を活用した重粒子線がん治療用『回転ガントリー』を、国内外の医療施設へ普及させるためには、装置の大幅な軽量化が急務である。そこで、『回転ガントリー』の中核機器である超伝導マグネットの極軽量化を行う。現状の超伝導マグネットには、漏れ磁場遮蔽のために、巨大重量物である鉄ヨークを使用している。その鉄ヨークを一切使用しない“アクティブシールド(能動的磁場遮蔽)型”超伝導マグネットの設計概念を新たに導入することで、マグネット重量の劇的な軽量化を実現する。 アクティブシールド型超伝導マグネットでは、鉄ヨークの代わりに超伝導コイルを用いて、マグネットから周囲に漏れる磁場を遮蔽する。それゆえ、アクティブシールド型超伝導マグネットは、粒子ビーム軌道を曲げるための『偏向磁場用コイル』と『漏れ磁場遮蔽用コイル』の2種類の超伝導コイルから構成される。 2020年度の研究活動によって、重粒子線回転ガントリー用アクティブシールド型超伝導マグネットの電磁力解析を行い、コイル内で生じる単位長さあたりの電磁力を評価することができた。また、マグネットの定格通電の際、水平方向の電磁力に関して、ダイポールコイルはアクティブシールドコイルと同等であることがわかった。一方、垂直方向の電磁力に関しては、ダイポールコイルがアクティブシールドコイルよりも5倍程大きくなり、更に、各コイルで電磁力の方向が異なる結果となった。本研究成果は、2020年度春季低温工学・超電導学会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に取り組む予定にしていた研究課題である『マグネットの電磁力解析』を実施することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
アクティブシールド型超伝導マグネットでは、従来の鉄ヨークを用いた超伝導マグネットとは異なる電磁力分布となる。そのため、これまでに無い新たな電磁力支持構造を開発しなければならない。更に、マグネットの軽量化を実現するために、支持材にも従来の鉄やステンレス等とは異なる新たな材料を選定しなければならない。現在、材料候補として、アルミニウム合金と繊維強化プラスチックを検討している。本研究では、新たな電磁力支持構造・支持材を取り入れたアクティブシールド型超伝導マグネットが構造的に成立する設計手法を構築する。その際、CAE(Computer Aided Engineering)技術を活用することで、マグネット断面をモデル化して、マグネット通電時に生じる電磁力がコイル巻線部とコイル支持構造に与える影響を定量的に評価する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、研究成果発表を予定していた国際学会へ参加することができなくなったため、海外渡航費及び学会参加費を使用することが無くなった。
使用計画:研究成果発表、及び研究協力者との打ち合わせのための旅費等に使用する。
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