2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on user position detection method using unmanned aerial vehicles under practical communication environment
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19K04380
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石川 博康 日本大学, 工学部, 教授 (20536495)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 無人航空機 / ドップラーシフト / ユーザ位置検出 / 位置検出精度 / 周波数オフセット / 三次元測位 / 最小二乗法 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度に構築した都市環境エリア3Dモデルと山岳エリア3Dモデルにおいて、UAV-ユーザ端末間に存在する建物や障害物、周辺の山の斜面等で生じる反射や回折、遮蔽により生じる受信信号強度の減衰量やドップラーシフトのオフセット量をレイトレーシング法に基づき詳細に評価・解析した。その結果を取り纏め、電子情報通信学会和文論文誌に投稿し、採択・掲載に至った。なお、UAVの飛行位置制御誤差に関する検討については、MATLABのフライトシミュレーション用のライブラリの適用が既に開発を完了している独自開発プログラムへの適用が困難であることから、飛行制御誤差の影響を別途机上検討に基づき解析し、これまでに開発を完了したシミュレーションプログラムへの数値的な反映を行った。 また、シミュレーションプログラムについては、三次元の位置検出が可能なモデルへの拡張、並びに、実用面の観点からUAVと地上端末の周波数クロック差に基づくドップラーシフト観測値に含まれる周波数オフセット量を最小二乗法に基づき推定する手法の開発を共に完了し、シミュレーション評価を行った結果、三次元測位については高度方向の誤差が極端に大きくなり、統合的な精度に影響を与えることが明らかとなった。一方、周波数オフセットを同時に推定・補償する手法については、比較的高精度に動作可能であることを確認したものの、絶対的な精度としては不十分であることが明らかとなった。 そのため、ディジタル信号処理用ボードを用いたドップラーシフト量検出手法の実装検討については優先度を下げ、引き続き三次元測位、並びに周波数オフセット補償技術の性能改善を目的とする研究開発を実施した。具体的には3機の周回飛行を行うUAVを用いた位置検出手法において、ドップラーシフトの観測回数を2回に増やして最小二乗法を拡張することにより、大幅な精度改善が実現可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、3年間の研究期間内において、以下の項目の研究開発を行うことを予定していた。 ①UAV-ユーザ端末間の電波伝搬モデルの構築: UAV-ユーザ端末間の電波伝搬モデルをシミュレーションプラットフォーム上に構築する。②航空機のフライトシミュレーションツールを用い、飛行位置制御誤差を物理的に導出する。③評価対象エリア内の任意の位置にユーザを配置した場合について、任意の時刻における位置検出精度を導出するシミュレーションソフトウェアを開発する。④低CN環境下やマルチパス環境下において、ドップラーシフト量を精度良く抽出するため、CW発振器とディジタル信号処理用受信機及びスペクトルアナライザなどの各種測定器を用いた特性評価を室内実験により行う。⑤各種劣化要因の対策・軽減技術や位置検出精度改善手法、UAV配置法、測位演算アルゴリズムを提案し、簡易かつ省電力なユーザ位置検出システムの実用化モデルを確立し、必要となるス ペックや要求条件を明らかにする。 3年間の研究期間で、①の研究開発ツールを調達して都市環境エリアと山岳エリアを模擬した3Dモデルの作成を完了し、1機のUAVの円旋回モデル及び8の字飛行モデルを対象としたマルチパス環境におけるドップラーシフト分布の詳細評価を完了し、③の汎用評価用シミュレーションソフトウェアと組み合わせて最小2乗法に基づく位置検出精度の特性評価を実施した。②については③のMATLAB上に構築したシミュレーションプログラムへの適用可能性について検討したが実装が困難であることから、机上検討により想定し得る誤差量の見積もりを行った。④については優先度を下げて方式検討に留めた。⑤については当初想定していなかった3次元測位手法と周波数オフセット補償手法を新たに提案し、さらに複数回観測手法を考案・適用して、大幅な測位精度改善が可能であることを明らかとした。
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Strategy for Future Research Activity |
シミュレーションベースの評価については、ドップラーシフトを複数回観測して最小二乗法に基づき位置検出を行うことにより、測位精度を大幅に向上可能であることが明らかとなった。特に高度方向の精度に課題のあった三次元測位手法においても、高精度の位置検出が可能であること、更に実用時に問題となる発振器の安定度に起因する周波数オフセットについても、精度良く推定・補償可能であることを明らかにした。 今後はこれまでに優先度を下げていたディジタル信号処理用ボード上にPLL回路をベースとするドップラーシフト量検出手法の実装など、ドップラーシフト検出装置のハードウェア開発や、複数ユーザに対して同時に位置検出が可能な手法の考案・検討などが課題になることから、今後も継続した研究開発を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定では、電子情報通信学会衛星通信研究会に投稿した論文を現地発表する予定であったが、当該年度7月開催の研究会(北海道旭川市)、8月開催の研究会(北海道函館市)、9月開催のソサイエティ大会(熊本大学)、10月開催のJC-SAT(韓国釜山)、2月開催の研究会(沖縄県那覇市)、3月総合大会(新潟大学)といった全ての研究会・大会が遠隔によるオンライン開催に変更され、旅費として計上していた予算を使用する機会がなかったことに起因する。特に、2022年2月25日、26日に沖縄県那覇市で開催予定であった衛星通信研究会では、開催日の約3週間前に現地開催が中止したことから、他の使用項目への変更が困難であった。その結果として次年度使用額が生じるに至った。 なお、次年度使用額については、令和4年10月に福岡市博多区において開催予定のJC-SAT2022の出張旅費及び参加費として使用予定である。
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Remarks |
その他、学会発表に関する2件の記事をホームページ上で掲載
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