2019 Fiscal Year Research-status Report
Optical coherent detection based on phase retrieval
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19K04384
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
吉田 悠来 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室, 主任研究員 (50573036)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光コヒーレント伝送方式 / 位相回復 / 光検出器アレー / 光空間多重伝送 |
Outline of Annual Research Achievements |
位相回復問題は、X線回折イメージングなど広範な分野で知られているが、光コヒーレント伝送方式への応用においては、特に高速の時系列に対する位相回復が求められる。この場合、観測モデルは線形畳み込みシステムとなり、既存の位相回復アルゴリズムの多くが不安定になってしまう。そこで、変調信号の振幅・位相が一般に離散的な値をとることに着目し、信号の離散性を正則化項として取り入れた頑強かつ低要求演算量の位相回復アルゴリズムDiscreteness-aware Reweighted Amplitude Flow (DRAF)を新たに提案した。さらに、位相回復に基づき、強度情報から通信路応答を推定する手法についても提案した。 これらアルゴリズムと当研究室で別途開発した広帯域高集積光検出器アレー(PDA)を用いることで、10Gbaud 光QPSK信号、16QAM信号、及びOFDM信号の位相回復型コヒーレント受信の実証実験に成功した。提案手法では、従来コヒーレント受信に必要とされた局発光あるいは参照光、また光ハイブリッド回路なしに、150um角のPDAのみで多様な光位相変調信号の受信が可能である。また、実証実験においては、偏波分離回路なしに、光偏波多重QPSK信号の受信に成功しており、この結果は、ランダムで空間的に冗長な観測に基づく提案方式が、空間多重方式に依らない、ユニバーサルな光空間多重伝送向けコヒーレント受信機として応用可能であることを示唆している。 以上、初年度においては、本研究課題のコアとなる、PDAの空間的冗長性を用いた局発光なしのコヒーレント受信という基本コンセプトの原理検証までを完了した。また、実証実験結果をフィードバックした数値解析を行い、位相回復受信に必要なPDA素子数や光散乱体に求められる要件など、次年度以降の最適化に向けた知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に示した通り、2019年度においては、既存の位相回復アルゴリズムを光コヒーレント受信応用の観点で比較検討し、検討結果をもとに、新たに頑強かつ高速な位相回復アルゴリズムDRAFを提案した。また、実装に際して必要となる、強度情報のみを用いた通信路推定、タイミング同期、DCバイアス補正などの信号処理についても、現実的なアルゴリズムを導出した。これらを用いることで、PDAのみを用いた光位相変調信号のコヒーレント受信の原理検証実験に成功し、本研究課題の基本コンセプトの実証を完了した。一方、提案手法でランダム観測に用いる光スクランブラについては、当初計画の通り、本年度はマルチモードファイバを用いたスクランブラについて検討を進め、オフセットスプライシングによるモード間分散の強調とその位相回復受信特性への影響を実験データをもとに評価し、スクランブラでの遅延広がりが十分であれば、従来のコヒーレント受信機と同等の、1空間チャネルあたり4PD程度で光QPSK信号の位相回復受信が可能であることを示した。 以上により、研究開発はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度においては、当初計画の通り、位相回復に基づく信号検出や通信路推定アルゴリズムの特性改善に取り組む。一方、光スクランブラについては、空間光変調器、ディヒューザー、光共振器などを用いた再現性のあるスクランブラを実装し、スクランブラの応答と位相回復受信性能の定量的評価を行い、最適なスクランブラ設計につなげる。 なお、本年度は、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、実験実施や機材の調達に困難が生じる恐れがある。遅滞ない研究推進のため、上記テーマについては適宜、数値・理論解析による実施を検討する。
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Causes of Carryover |
PDアレー用精密ステージ(集光モジュールやモード合分波器など複数機材で構成される)が想定よりも多少安価であったため。次年度使用額については、翌年度分と合わせて光空間変調の購入に充て、効率的に使用する。
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Research Products
(9 results)