2020 Fiscal Year Research-status Report
Optical coherent detection based on phase retrieval
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19K04384
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
吉田 悠来 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室, 主任研究員 (50573036)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光コヒーレント伝送方式 / 位相回復 / 光検出器アレー / 光空間多重伝送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、近・中距離大容量光ファイバ伝送向けの小型低廉な光コヒーレント受信方式として、光検出器(PD)アレーと位相回復信号処理を用いて、局発光源や光ハイブリッド等の高精度な光デバイスを必要とせずに、計算的に同期検波を実現する位相回復型光コヒーレントレシーバ技術を提案し、その要素技術の確立に取り組んでいる。初年度においては、光変調信号の離散性を用いた位相回復アルゴリズムを新たに提案し、高速2次元PDアレーとマルチモードファイバ(MMF)型散乱体を用いた実証実験系で、40Gbps 光偏波多重QPSK信号や10Gbaud OFDM信号などの位相回復受信に成功した。 2年目においては、位相回復受信に必要なPD数などや位相回復のための前処理である光ランダム写像を実現する光散乱体の要件について実験的検討を推し進めた。MMFモードカプラを用いた散乱体と小サイズの位相回復問題において特に頑強な交互方向乗数法(ADMM)を用いた位相回復アルゴリズムの採用により、40Gbps 偏波多重QPSK信号を8PDで、すなわち空間チャネルあたり4PDで受信可能であることを実験的に明らかにした。これは既存のコヒーレント受信機と同程度であり、また、前年度の理論検討結果ともおおむね一致している。さらに、光共振器やオフセット励起回路を用いた新たな光散乱体について実証実験のための実験系構築を行った。 一方、位相回復型受信方式向けに提案した、位相回復に基づく通信路推定技術の応用として、単一モニタPDのみで光IQ変調器の特性評価行う手法についても新たに提案し、原理検証実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実験の概要に示した通り、PD数など位相回復コヒーレント受信の要件について検討を進め、光散乱体と位相回復アルゴリズムの工夫によって昨年度の理論検討結果と概ね一致する結果を実験的に確認した。また、次年度以降の検討に用いる、新たな光散乱体の実証実験系を構築した。さらに、提案技術のスピンアウトとして、光変調器評価技術についても提案した。 以上により、研究開発は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
位相回復型コヒーレント受信の利点の一つはその空間的な柔軟性である。位相回復受信は、局発光との干渉光学系を必要としないため、入力光への制約が少なく、従来のイントラダイン型コヒーレント受信機の適用が難しかったシステムにおいてもコヒーレント伝送を可能とする。そこで最終年度においては、光無線MIMO伝送を中心として、多様なユースケースに向けた位相回復型コヒーレント受信機の検討を進め、特に位相回復に基づく干渉除去を用いた空間多重光無線伝送の特性評価を行う。
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Causes of Carryover |
光学系治具試作(共振器型光スクランブラ、ビームスプリッタユニット)が想定よりも若干安価であったため。次年度使用額については、翌年度分と合わせて高周波部品の購入に充て、効率的に使用する。
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