2020 Fiscal Year Research-status Report
符号化開口超音波探触子を用いた軟質チューブ内の高精度ドップラ流量計測に関する研究
Project/Area Number |
19K04409
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
村田 頼信 和歌山大学, システム工学部, 教授 (50283958)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超音波 / 流速計測 / パルスドップラ / 符号化開口 / 高分子圧電材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
鋼管に比べ軟質なプラスチック製チューブは超音波の減衰も大きく,管壁外部から内部の流体を計測する場合,少しでも探触子の感度向上が望まれる.そこで本年度は,昨年度の研究で得られた知見を元に,探触子の製作行程の見直しと組み立て精度の改善を行い,探触子の性能向上について検討を行った.本研究で考案する計測手法の特徴は,M系列の極性に応じた順序で圧電膜を積層することで符号化開口を実現し,パルス駆動により直交性の高い変調波を送信することである.このとき,各層における信号線の取り付け部分も振動し,直交性が低下することがわかった.そこで,この取り付け部分と対向する面にエッチング処理を施し,この部分が振動しない構造に改良した.その結果,余分な振動が抑えられることで送受信信号の直交性が向上し,探触子の角度選択性能も改善することが実験により実証された. 一方で,これと平行して,符号化開口による管内を流れる気泡分布の可視化について検討を行った.手法として,管壁に沿って巻きつける事が可能な高分子圧電膜を利用し,M 系列によって符号化された符号化開口アレイ探触子を作製した.ここでは,一枚の圧電膜に分極方向分布を描く方法を提案し,電極を物理的に分けずとも符号化開口が実現出来ることを実証した.同時に,まずこの探触子を適用した瞬時撮像シミュレーションを行い,提案手法の有効性とより鮮明な画像の取得方法について検証を行った.その結果,事前計測(つまり,撮像における画像伝達関数を取得する時)と同じ大きさかつ単体の撮像物体に関しては撮像が可能であるが,対象物の大きさの変化や複数物体の撮像に対してはノイズが大きく,物体の判別が困難になることが確認された.これを改善するため,取得信号に対し3値化処理を行った後に画像の再構成を行ったところ,ノイズが低減され,対象の大きさの変化による像の消失にも改善が見られることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで,管壁外からの流量計速を実現するために,高分子圧電材膜を積層し,これを曲面形状とする積層型符号化開口探触子の製作について検討を行い,最大で7bi長の符号化積層探触子を開発した.そしてこの探触子について,実験により空間選択性を確認した.さらに,符号化積層探触子の製作行程の見直しと組み立て精度の改善を行い,送受信信号の直交性と探触子の空間選択性能の向上を達成した.一方で,符号化開口アレイ探触子による管内流体中の気泡分布の可視化についても検討を行い,シミュレーションにより,この探触子によってワンショット(一回の送受信)で管内の波動情報を瞬時に取得できることを確認した.また,管内の流体と一緒に流れる気泡の分布についても可視化可能であることを示した.撮像に用いる符号化アレイ探触子は,一枚の圧電膜に分極方向分布を描く方法を提案し,電極を物理的に分けずともアレイ探触子が実現可能であることを実証した.また,取得信号に対し3値化処理を適用することで,撮像においてノイズが低減され撮像精度も向上することがわかった. 以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で得られた知見を元に,流速測定の測定エリアを広げるために探触子の指向角度を制御する技術を検討すると共に,更なる探触子の高性能化をはかる.その後,プラスチック製チューブの管壁を介してパルスドップラ法により点物体の位置と速度が同時に計測可能なことを実証したいと考える.また,これらの研究と平行して,符号化アレイ探触子による気泡分布の可視化についても引き続き研究を進め,最適な探触子の開発および撮像システムの構築をおこなう.ここでは,シミュレーションによる探触子の最適化,それに単一の探触子で管内の流体中の対象物をワンショット(一回の送受信)で撮像可能なことを実験により実証したいと考える.
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Research Products
(2 results)